11.魔将
「頭を吹き飛ばしたはずだ……。何故……生きている?」
「教えてやってもいいが、こっちの質問にも答えてもらおう」
「貴様……不死身なのか?」
「いいや。俺の急所は頭じゃない。ここだ」
ザングは右拳で自分の胸を叩いた。
「心臓。それが俺たち獣の……俺の弱点だ」
「獣だと?」
「おい、俺は答えたんだ。次はお前が答える番だ。お前は何者だ? ここで何をしている? この場所は何だ?」
「……」
「質問が多かったか? まあ気にするな。焦らなくていいから、一つずつ答えろ」
「認めよう。貴様は他のネズミとは少し違うようだな」
「ああ?」
「我の名はフォルティス。魔王様が配下、五天魔将の一柱だ」
「魔王様? 五天魔将? それは何だ?」
その問いに返ってくる言葉はない。
その代わりと言わんばかりに、黒い魔弾が放たれた。
しかもそれは単発ではなく、五つの連弾だった。
「おいおい」
ザングは動じなかった。
ザングが床を蹴り上げた瞬間、その姿が消える。
次にザングが現れたのは、フォルティスの目の前。
「悪いな。力づくでいくぞ」
ザングが黒爪を振った。
しかしそれは、再び障壁に弾かれる。
はずだった。
風を切るような高音が響き渡り、障壁が砕け散った。
そして、散り散りとなった障壁の破片が空気に溶けるように消えていく。
その光景に目を見張るフォルティス。
「馬鹿な! 我の障壁が―――」
「ちょっと本気でやればこんなものだ。少し、歯を食いしばれ」
ザングは右拳を握りしめた。
そして、固まるフォルティスの腹へと突き入れる。
空気が破裂した。
爆発音が轟き、巨大な力がフォルティスを襲う。
「―――がッ!」
フォルティスは床を何度も弾みながら、猛スピードで吹き飛んでいく。
「ザング、やりすぎ。殺したら意味ない」
ノイにそう指摘されるが、ザングは余裕の笑みを浮かべる。
「大丈夫だ。あれぐらいでは死なないだろう」
その言葉通り、フォルティスはまだ生きていた。
しかし、どう見ても重傷だった。
「……がッ……はッ……くッ」
フォルティスは蹲った状態で呻きを上げる。
苦し気な表情からも大きなダメージを負っていることが分かる。
そのフォルティスへとザングは近付いてく。
「少しは話し合う気になったか?」
「……きッ……さッ……」
「分かった。少し時間をやろう。息を整えろ」
「ネ……ネズミの分際で! 舐めるなよ!」
その瞬間、フォルティスは黒炎に包まれた。
「お、おい!」
これにはザングも驚いた。
フォルティスの取った行動が理解でなかった。
「自殺……か?」
と考えた時だった。
ザングはその考えをすぐさま否定した。
黒炎の勢いが激しさを増し、限界点に到達。
それは、溜め込んだ力の解放。
巨大な爆発が発生した。
途轍もない衝撃が発生し、黒炎が四方へと吹き荒ぶ。
その熱波と衝撃波は、周囲の生物を容易に死滅させるだろう。
それでもノイは無事だった。
「ありがとう。ザング」
ノイはザングに抱えられていた。
ザングはノイを抱えたまま、熱と衝撃の範囲外へと跳んだのだ。
「ああ。怪我はないな?」
「うん」
ノイは遠くに目を向けた。
相変わらず白い空間が広がっている。
大きな爆発が起きたというのに、何も変化がない。
それは巨大な白い柱も同様だった。
白い柱には爆発の影響を受けている様子はない。
「あのツノの人……死んじゃったんだよね? どうしよっか?」
「ちッ。なにも死ぬことはないだろうに……」
ザングは頭を掻いて述べる。
「やはり……村に戻るしかないか」
「それがいいかもね。この情報はすごく価値がある。持ち帰ってメリラさんに話すべき」
「だな」
「お待ちください」
突然聞こえてきた女の声。
その声の方に、ザングとノイは振り向いた。
そこに、若い女がいた。
長い薄紫の髪が特徴の美しい女だ。
「驚いた。この俺が背後を取られるとは……」
目を見張るザングに、女はわずかに頭を下げた。
「驚かせてしまって申し訳ありません」
「あ、ああ……。それで、お前は何者だ? 俺の敵でないことを願うが」
「まさか、ワタクシに貴方様と敵対する意思はありません。ワタクシにとって貴方様は、恩人なのですから」




