おみくじの解釈の仕方
母とファミレスで昼食を摂った後、俺は再び海岸に戻り、桜花や霜宮たちと待ち合わせることにした。運転中の母には『ところでどっちと連絡取るの?』と楽しそうに声をかけられたが、俺は迷わず霜宮の連絡先をタップする。少しつまらなそうな横目でその様子を伺ってくる母をとりあえず無視して、霜宮に電話をかけた。どうやら二人はまだ先程の海岸付近にいるとのことらしい。
桜花に電話をかけられなかったのは、自然の判断からだった。
車は行きの時とは反対側の車線に停車する。降車時に母へ軽く手を上げ感謝を伝えると、『頑張んなよー』というどこか無責任な声が返ってきた。苦笑いを絶対に隠しつつ、ただ母の口からは出てこない言葉もそれなりに理解しているつもりではあった。いや無責任で無茶振りなのには変わりないと思うがな。
交差点で信号が青になるのを待つ。
桜花になんと声をかけるべきか。頭からそれがずっと離れない。
朝にも似たようなことがあった。結局俺は次の言葉が出ず、逆に桜花から話しかけられてしまった。あの時桜花は、あるいは俺の考えてることを察してしまったのかもしれない。さすがにそれは考えすぎか。ただ、あいつの入試で学年トップを容易に取ってしまう事実を踏まえると、どこかに油断を許してはいけない何かを感じることがある。
今俺が話しかけようとする桜花とは一体何者なのか? 恍惚に現れた疑問に俺ははっとなる。どうしてそんなことを考える必要があったのか、それすら要領を得ていないのだ。
「タイシくーん」
横断歩道の向こう側で、四月後半でもまだ咲き続けている桜の花弁がそこにあった。どうやら霜宮が機転を利かせて国道の歩道まで迎えに来てくれたらしい。てゆか周り人多いしちょっとそれ恥ずかしいんだが。
「ごめんな。ここまで来てもらって」
「いいわよ。私達もちょうど島から戻ってきたばかりだから」
「ああ。島まで行ってたのか」
この海岸のすぐ近くにはそれなりの観光名所となっている島があった。島とは橋で繋がっていて、歩いて渡っても五分程度で着いてしまう。橋の向こう側には神社があり、そこまで続く細い参道には売店や食堂がずらりと並んでいる。恐らく二人は食堂で、島の名物である海鮮料理を堪能していたのかもしれない。この季節なら生しらす丼が圧倒的に美味しいはずだ。
「ねぇ聞いて聞いて。わたしと霜宮さんでおみくじを引いたんだけど、二人とも大凶だったの。すごいでしょ!!」
「ん……ダイキョ??」
あまりにも楽しそうに話す桜花に俺は自分の耳を疑っていた。だが桜花の横で溜息をつく霜宮を見て、聞き間違えではないことを悟る。てゆか大凶ってそんな頻繁に出るものか!?
「これって絶対わたしたち、神様に見守られてるってことだよね?」
「は…………?」
どうしたらそういう解釈になるんだ? わけがわからん。
「だって神様はこうやってわたしと霜宮さんにメッセージを届けてくれる。これってすごくありがたいことじゃん!」
「あ、まぁ……そういうこともあるかもしれないな」
俺は思わず霜宮の顔を伺ったが、やはりというべきか霜宮の方はげっそりした顔を浮かべていた。うん、こっちが本来大凶を引いた人の顔であるべきであって、桜花の解釈は正直判断に迷う。
が、判断に迷いようがなかった一つの事実は、そんなメッセージを一つ与えられない俺はどうしようないほど情けない人間に思えたということだった。
登場人物
嵯峨野泰史: 俺。元文芸部員
霜宮朱実: 心臓に氷を宿す元物理化学部員
嵯峨野桜花: 泰史の義妹。生徒会庶務
嵯峨野千鶴: 泰史の母。お仕事忙しい!
読んでくださり、ありがとうございます。
ところで大凶って引いたことあります?
私はある。確か中学校の修学旅行で!!(え。トラウマ?)
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