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四月、日曜朝の何気ない風景



 俺と桜花(おうか)の住む2DKの部屋に、今朝も四月の目映(まばゆ)いばかりの陽光が混ざり込んでくる。今週末からは五月の連休が始まる四月最後の日曜日。俺が作った朝食、といってもトーストと目玉焼きとサラダだけというごくシンプルなものだが、それを二人で食べ終わると、早速互いに各々の部屋の掃除を始める。


 今日は霜宮(しもみや)がこの部屋にやってくるという。『明日は午前九時くらいにはそちらへ伺うわ』など飄々と言っていたから、あいつの性格からして時間きっちりに現れるだろう。微妙に朝早く、残り十五分。あるいは『早く着きすぎてしまったわね』とか言いながら、既にうちの近くの公園でのらりくらりやってるかもしれない。日曜の朝に一人公園で(たたず)まう女子高生。その光景を想像するとややシュールにも思えるが。

 桜花と二人で暮らしてるというのもあるが、女子高生が忌避感を抱きそうなものは基本俺の部屋には存在しない。あったとして、ラノベの表紙くらいだろうか。それでもゆうてラノベの表紙だ。なんなら桜花がたまに俺の部屋に勝手に訪れ、俺の本棚を勝手に(あさ)り、俺のラノベを勝手に読み始めるという実績を持ってたりする。桜花も割とそういうのに興味を抱くのは、意外にも思えたけどな。


 よしっ、掃除終わり。というより床に散らばってたものは、昨晩桜花が勝手に読み散らかしていったラノベくらいしかなかった。それを本棚に戻し、掃除機をさっとかけ終わるまで、五分もかからない。

 つか桜花。俺の部屋だからと言って堂々と読み散らかすのはやめてくれ。

「タイシくん。掃除機使い終わりましたか?」

「ああ。持ってっていいぞ」

 掃除機の音が止んだのを聞きつけたのか、ちょうど桜花が入ってきた。桜花の部屋はその性格が故、俺の部屋より多少散らかっている。主に服とか布団、稀に下着とかである。なぜ俺がそんなこと知ってるかって、たまに桜花が俺の服の裾を掴んできて連行されるからだ。『今日の服、どっちがいいですかね?』って、駅前へ買い物行くときなどに聞かれたりする。正直なところ、その部屋の有り様や質問については、健康的すぎるのでなるべく控えてほしいと思っている。俺が溶けて滅びそうだ。


「じゃあ、カメくん邪魔なので預かっておいてください」

「お、おう……」

 カメくんというのは言うまでもない。先日霜宮から押し付けられた監視用ロボット、もとい、とーってもかわいいカメレオンのぬいぐるみのこと。桜花は自分の部屋に飾るなり、勢いのまま『カメくん』と命名しやがった。カメレオンだけに。

 なおこいつ、実は歩くことも可能だ。昨日も俺と桜花で歩く速度を計測してみたが、分速五メートルといったところ。平均的な亀の歩行速度と大して変わらないっぽい。しかも一分も歩けばバッテリー切れを起こすらしく、完全に停止する。その度に桜花は『カメくん疲れて寝ちゃった』と寂しそうにぽつりと溢すが、俺としてはそんな監視ロボット永遠に眠っててほしいと願っている。


 充電すればもちろん復活してしまう。今も桜花から俺の両手の上に渡され、『何か用あるか?』とふてくされた顔で俺を見つめてきていた。とても俺に懐いているとは思えない。桜花の前と明らかに表情が違うのはどうしてだろうか。


 そうこうしてるうちに、隣の部屋から掃除機の音が止む。すると間もなく玄関のチャイムの音が鳴った。

 霜宮が到着したのだろう。桜花は高らかな声で、無機質な音に返事をした。


登場人物

嵯峨野泰史: 俺。元文芸部員

霜宮朱実: 心臓に氷を宿す元物理化学部員

嵯峨野桜花: 泰史の義妹。生徒会庶務


読んでくださり、ありがとうございます。

第一章もいよいよ終盤へ入っていきます。

評価、感想をいただけると励みになります。


カクヨムでも連載しています

https://kakuyomu.jp/works/822139841863405829


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