義妹と野獣
そもそも桜花の場合、仮に『幼すぎる女子高生』というランキングがあったら、恐らく最上位に来るような気がする。つかそんな需要本当にあるのかと疑いたくなるほどの、ごく稀な穿った視点であることに間違えはないけどな。あれかな。『お兄ちゃん大好きっ☆』みたいな妹系ラノベ(※そんなジャンルが実在するかはさておき)ばかり読んでる男子諸君にとっては、理想の彼女になりうる存在ではあるのかもしれない。とりあえず俺自身ことは一旦左側に置いておこう。
日が燦々と照らす教室から陰湿でじめっとした空気漂う廊下へ移動すると、北なんとか君が何とも言えぬ顔で俺をちら見してくる。別に俺を敵視してる様子もないようだが、俺としては多少なりとも複雑な気分だ。なぜかというと……。
「嵯峨野って、桜花さんのなんなんだ?」
実際、なんなんだろうな? 俺にもまだよくわかってない。
とはいえこんなぶっきら棒な言われ口調、そのまま放置というのも悪い気がした。これまで話したことがないクラスメイトから突然呼びつけられて、まるで尋問のような問いかけをしてくる辺り、それなりに失礼だとは思ったが、ただ普段の俺がクラスメイトのほぼ誰とも話さないというのも確かに悪いのだ。距離感がわかりにくいと言われてしまえば完全にそれまでだし。
「俺の、妹だ。義理のだけど」
結局、それ以上でもそれ以下でもない答えを返すことにした。
「それって、義妹ってことか? 親の再婚がどうとか……」
「親は離婚も再婚もしてないぞ。桜花が俺の親の養子。だから義妹なんだ」
北何とか君は右手の人差し指と親指を顎に当て、何かを考え始めた。『そういうこともあるのか……?』とどことなく賢そうな頭でごにょごにょ整理し始めている。こいつ、大柄な体型で柔道部みたいなちょっと強面な印象があったが、根は脳筋などではなく、案外純情系なやつなのかもしれない。いや別に柔道部全員が脳筋みたいな話をしてるわけじゃないよ。あくまでイメージの問題! ってそれでも十分失礼か。
「でも義妹って、それは血の繋がってないって意味で合ってるよな?」
「ああ。それ以外に何がある?」
ちょっと訂正。やっぱし脳筋なのか??
「つまり、嵯峨野は桜花さんのことが好きになったりすることもあるのか?」
「………………はい?」
俺の語尾が無意識に上がった。一瞬時間が止まったかのようで、何言ってるかすっと入ってこなかったんだ。脳筋? 実はそれ、俺の方だったりして。
「だってそういうの、一応問題ないわけだろ?」
「いやいや待て待て。そういうのじゃないと思うぞ?」
「そういうのじゃない? つまり、桜花さんのことは女子として興味なしってことか?」
「だからそうでもなくて……いや、そういうことになるのか」
「そっか。だったらオレが桜花さんに好意を抱いても問題ないわけだな?」
「そういう話でもなくね?」
「??」
自分でも話してて、何がそういうことで何がそういうことでないのかさっぱりわからなくなってきた。
つまり整理してみるとこうだ。そもそもの話、義妹だったら必ず恋愛感情を抱かなくてはいけないのか? そんなの答えはノーだ。そもそも義妹は絶対に可愛いという前提が間違っている。仮に野獣のような義妹がいたとしよう。でも義妹だからという理由で『美男と野獣』みたいな恋に落ちるかと言われると、その必然は存在しないと言い切れる。つまり、義妹イコール恋愛対象という方程式は到底成り立たないのだ。
あ、まぁ桜花は可愛いよ。ちょっとあいつ何考えてるかよくわからないけど。
登場人物
嵯峨野泰史: 俺。元文芸部員
霜宮朱実: 心臓に氷を宿す元物理化学部員
嵯峨野桜花: 泰史の義妹。生徒会庶務
北何とか君: 名前、なんだっけ?
読んでくださり、ありがとうございます。
・・・世間のラノベに義妹が多いのはなぜだろう???
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