就活と温泉
春の作付けが一段落したぐらいに聖王国の就職面接が行われる
聖王国の若者は読み書き計算社交作法 おまけに五日に一度旅団の訓練にも参加するので戦う力もある だから聖王国出身の若者は引く手あまただった
なので就職面接は人材を求める商家や貴族が行うのでは無く 聖王国の若者が商家や貴族を面談する形でなされる
「我が商会に入れば七日に金貨一枚 休みも七日に一度」
「私達の屋敷に来て頂ければ月に金貨四枚 休みは交代制 更なる教養や礼儀作法が学べます」
等と必死にアピールする者達を見て聖王国の若者の方から面接する相手を見定め詳細を詰めていき就職を決める
「我の加護があるから 不埒な真似をするでないぞ 破れば天罰が下るだろう」
マリアートの言葉である
その他にも手に技術を欲する者は聖王国を出て 自身で支持する師匠を求めて大陸を巡る
多くの若者達が旅立っていった後 年老いた人狼がシリウス旅団本部を訊ねてきた
「あの フェンリル様とお会いしたいと人狼の故老を名乗る方がいらっしゃてますが」シリウス 父ちゃん 母ちゃんのいる部屋に受付の子がドアをノックして入ってきた
三人で顔を見合わせ 父ちゃんが「多分 俺の事だろう」と言い
シリウスと父ちゃんの二人で階下へ降りて行くと
「おお フェンリル様!! 先日は大変失礼いたしました」故老が頭を下げて父ちゃんに言うと
「ああ 気にするな で 今日はどうしたんだ」
父ちゃんが聞くと
「フェンリル様のお傍で暮らしたいのと 新しい土地で開墾をしたいと思いまして住民一同で移住を決めたしだいです もちろんクロノス王の許可もいただいてます」
「む そうなのか?」
「はい 土地も温泉が出そうな場所に目ぼしをつけております」
詳しく聞くとメリル農園から少し離れた山裾の土地だった
そこで砂糖の原料のてんさいと餡の材料の小豆を育て 養鶏もするとの事 砂糖は希少で高価な為 クロノス王からは期待しているとの言葉を貰ったそうだ
闘技会前にはクロノス王に話しを通していたので 大工のエド達によってもうすぐ家というか集合住宅は完成するらしい
メリルとアリアに「隣に越して来ました」と挨拶に行ったら玄関前に並ぶ多くの人狼を見て二人は驚いていたが 故老と話しをして彼らが生産するのが砂糖 小豆 鶏卵と聞いて農園の品との商談を進めた お近づきにと渡された砂糖を温めたミルクに入れて飲むと至福の時間だった
メリルとアリアも籠一杯の果物を渡したがつり合いが取れているのか少し不安だった
暫くして 温泉が完成したので招待したいと故老の手紙を持ってヤルがやって来た
招待されたのはクロノス王 マリアート シリウス ノエル 父ちゃんだったが何となく母ちゃんも一緒に来た
温泉施設に行くと「これは温泉饅頭というものです こちらは温泉卵です」と言われ
出されたのを「これは美味いな!!」クロノス王が温泉饅頭を食べて笑いながら言う
「この卵もなかなかに良いな」母ちゃんは椀に入ったのを一口で食べて 次の椀を手に取っていた
「マリアート様もいらっしゃれば良かったのに」シリウスが言うと
「温泉には興味が無いと言ってたからねー 故老 饅頭と卵を幾つか包んでくれないか?」クロノス王が言うと
「かしこまりました」故老が答え
「さて では温泉にご案内させていただきます」ヤルが一行を温泉に連れていく
まだ男湯 女湯の区切りが無いため広々とした湯舟に全員で入る
「ふー こりゃ良いなー」シリウスが言うと
「全くだね 素晴らしいよ」クロノス王も言い
「肌が生き返るようだ」母ちゃんの言葉に頷くノエル
「流石に 今日は国王もいるし母ちゃんもいるし発情期の女達も来ないだろう」
父ちゃんも手足を伸ばして楽しんでいた時 脱衣室から女性の話声が聞こえてきた
ギョッとして父ちゃんが脱衣室の方を見ると五人ぐらいの影が湯けむりの向こうに見えた
他の四人も脱衣室の方を見てると
「なんか 凄い匂いだねー」言いながら現れたのはハイジだった 後ろに他のメンバーもいた
掛け湯をして温泉に入って来るチェインズの面々
「どうして ここに?」クロノス王が聞くと
「依頼終わって本部に行ったら 皆ここに来てるって聞いて 故老のお爺さんに聞いたら使っていいって言われたから」
「お前達もいい年頃なんだから」顔をしかめてシリウスが言うと
「(クロノス)王様に(シリウス)兄さんに父ちゃん 何を恥ずかしがるの?」
ハイジは屈託なく言い放つ 逆に男性陣のラテとトワは反対側にチョコンと浸かっていた




