闘技場と入団試験
視察を終えたマルラス国王の一団が帰る事になった 団員に国王達の護衛とエメットの領まで付添い ダンジョンの様子を見てくるように頼んだ
別れ際 「エメット 私からのプレゼントよ」メリルがエメットに袋に入れた物を渡す 「まあ ありがとう 何かしら? 開けても良い?」エメットが言うとメリルが頷く
「まあ これは!!」白い首巻を袋から取り出しエメットが言うと
「母ちゃんの毛で編んだ首巻よ 下手でごめんなさい」メリルが恥ずかしそうに俯く
「そんな事ないわ とても素晴らしいわ フェンリルの首巻なんて凄いわ 大切にするね」
「出発しまーす」王の護衛が声を上げると ゆっくりと馬車は動きだした
メリルが大きく手を振り エメットも馬車の窓から身を乗り出して手を振ってる
それから一月後ぐらいに闘技場が完成した 団員や訓練生が常時 併せて国民が五日に一度程訓練をするので街中の施設では手狭になった為 クロノスが外壁の前に建てたもので闘技の舞台は50×50でその周りを観客席が取り囲んでいる
春には旅団の昇格試験と入団試験も行う予定なので闘技場自体を4区画に割り 其々に結界を張り他の区画に干渉しないようにされている
以前は一年を通して入団試験を行っていたが 審査をする団員が留守などで効率が悪かった為 今では春のみに開催となった
それと同時にシリウス旅団に挑戦する者への対応として 春の闘技会を開催する事にした
闘技会は見慣れない技や闘い方を吸収する事も出来るので団員達も国民も興味津々だった
シリウス旅団には訓練生と正団員の二種類がいる
訓練生が正団員に昇格するには訓練生同士でトーナメント戦をして上位8人と審査した団員の推薦された勝ち上がれなかった数人がシリウスとノエルの面接を受け昇格が決まる
昇格試験の後に入団試験が行われる 今年も多くの入団希望者が訪れた
特にマルラス王国からの希望者が目立った
希望者は訓練生と五回摸擬戦をして三勝すれば訓練生になれる
区画の一つで鍔競り合いをしてた入団希望者が訓練生に顔を近づけて
「おい 俺はマルラス王国の貴族の三男だ 負ければ金貨100枚くれてやる どうだ?」 息を切らしながら言う
「分かった」そう言うと訓練生は後ろに飛び剣を空に突き上げ
「失格!!」大声で審査員を見ながら叫ぶ
「そこまで!!」審査員が声を上げ摸擬戦を止める 喚く貴族は団員達に外へと連れ出されていく
その他 細々としたトラブルはあったが 入団試験は終了した
昇格試験と入団試験が終わった後 間を空けて闘技会が行われる
各地の腕自慢や領軍の兵士が集まり もちろん団員も参加して大々的に開催される
優勝者はクロノス王と摸擬戦が出来るという事で参加者は真剣である
シリウスとノエルは参加しない 実力差がありすぎるからだ
トーナメントを勝ち抜いたのはシリウス旅団の分隊長ギースを破った武者修行中の剣士ガイノスだった ギースに手を貸し立つのを助ける時に二人で何か話していた
ギースが舞台から去るとガイノスがクロノス王の座る席に向かって
「運良く勝ち上がってクロノス王への挑戦権を得たが こんな強い団員のトップと
是非立ち会ってみたい 決してクロノス王を侮ってる訳ではございません もし私が勝ったらシリウス旅団のトップにして頂きたい 何卒ご許可をお願いします」言うと クロノスはシリウスを見て頷く
「承知した!!」シリウスは席を立ち上がり舞台に降りて行く
シリウスが来るまでガイノスは違和感を覚えていた 今まであらゆる大会で領軍や傭兵団のトップに勝負を挑んできたが それを宣言する度に会場からは罵声や怒号が響いていたのに 静かだった 誰も野次を飛ばさない ここのトップは余程人望が無いのか? そんな事を考えているとシリウスが目の前に立ち
「よろしくお願いいたします」静かに言って剣を構えた
「お願いします」ガイノスも言って構えた瞬間 全てを悟った
そうか 観衆はこの男が負ける事は無いと知っていたから静かだったのか
上下左右から剣を繰り出すがガイノスの剣は掠りもしない 得意の三連突きも風に吹かれる花のように左右に躱され 一旦距離を取った刹那 そよ風がガイノスの頬を触ったと思ったら首の後ろにシリウスが剣を当てていた
「ま 参りました!!」膝を付き荒い呼吸の中で絞り出すように言うガイノス
その瞬間 地鳴りのような歓声が闘技場を包む
「さすがジーク殿が足元に及ばないと言うお方だ」立ながら言うガイノス
「ありがとう でもね僕もクロノス王の足元にも届いてないんだ」
シリウスが笑いながら言うと ガイノスは目を丸くしてクロノスを見ていた
観戦していたアリアが頬を赤くしながらメリルに
「お姉様 私絶対にシリウス旅団の正団員になりますわ!!」言うと
「そうね 特別団員から正団員になりたいわね 私も頑張るわ!!」
アリアの頬を触りながらメリルも言う




