齟齬 5
クララは重いため息をついてから、全体通信で話しかける。
「えー。いろいろとありましたが。私達、第九班は冷静に、任務にあたりましょう」
「「「は……」」」
全員声に覇気がない。
まあ、それもそうだろう。最初の任務で他の隊が暴走するなんて。普通はあり得ないことだ。
どうやって任務に向き合ってもらうべきか……。
さすがのクララも困り果てる。
「あの。クララ兵長」
ふいにアームングの声がヘッドフォンから聞こえた。
「なんだか光っているような」
「光ってる?」
「はい。目の前の山が」
「っ!」
クララはハッとして目の前を見る。確かに。わずかに光っているようにも見えた。
「……」
クララは目を細めて前の画面をジッと見つめた。
確かに一点の光がある。チカチカと光っては消える様は星のようだ。だが、今は昼間。星が出るはずもない。
やがて。一点の光は瞬く間に増え、横に広がっていく。
「!!!」
まさかっ――――。
「全員! 銃! 構え!」
「っ」
返事がない。
「銃ッ!!!」
強く、声を上げる。
「「「……はっ」」」
やっと返事が返ってきた。
横に広がった光は凄い速さでこちらに近づいてくる。徐々に光の全体像が見えてくる。
ドラゴンの形をしている銀の金属物体が空を飛んでいる。
あの特徴的な機体は――――空中用戦闘機械兵器、ヴルム。
トリューベ国が攻めてきたんだ――――。
そう理解した瞬間、クララはすぐにランツェへ通信をつなぐ。ザザザ……とノイズが走る中、クララは「ランツェ伍長!!!」と呼びかける。
「ランツェ伍長、ランツェ伍長!!!」
「クララ兵長ですか」
「トリューベ国が攻めてきました!!!」
語気強く言うものの、ヘッドフォンから返事が来ない。それどころかノイズが酷くなっていく。
「ランツェ伍長!? ランツェ伍長!!!!!」
「――――――」
何も聞こえない。
ヘッドフォンから聞こえるのはジジジ、という機械音だけだ。
そうこうしているうちにも、トリューベ国のヴルムは接近している。
どうしてこんなことに……。そもそもシュティル大佐の話ではトリューベ国の増援はほぼ無く、今はまだ戦力を削りにきているだけ。……次が要だったはずだ。
なのに、情報が漏れている……?
――――スパイ。
ふとクララの頭に考えないようにしていた単語が思い浮かぶ。次いで連なるように、第九部隊の部下三人を思い浮かべた。と同時に頭を振る。
違う。絶対に。
クララは「ふっ」と短く息を吐き、覚悟を決めた。
やるしかない。
「第九部隊。今より臨時戦闘に入ります」
「「「!」」」
ヘッドフォン越しに三人の緊迫した空気が伝わる。
本当なら部下を退けさせるべきだけど……。
クララは相手のヴルムの動きを見る。
トリューベ国の機体との距離は、銃弾を撃てば、ギリギリ当たるか当たらないかの距離まで迫っていた。それに相手の数がザッと十あるのに対し、こちらは四だ。
……三人全員を無事に逃がせることは出来ない。なら、勝つしか生き抜ける方法は無いのだ。
「私が先行して突撃します。皆さんは距離を保ちつつ、敵を撃ち落とすことに集中してください」
ここまで読んでくださってありがとうございました。
いよいよ戦闘シーンです。クララ含めた第九部隊がどう活躍するのか。現段階で私も執筆途中なので、非常に楽しみです。




