齟齬 2
「我が隊はトリューベ国の増援を注意することとなりました」
「「「…………」」」
いつものように返事はない。だが「トリューベ国」の名前をあげても騒がないあたり。さすが優秀というか。もしかしたら、こうなると分かっていたのかもしれないな。
クララは一つ咳払いをして、「増援の注意とはいえ、かなり危険です。身を引き締めていきましょう」とやけに目立つ黄色の機体、アードラーの方へ足早に向かう。すると段々とアードラーの隣にフックスが見え、フックスの前にランツェが立っているのが見えた。
「ランツェ伍長! すみません。遅くなりました」
「いえ。それより第四部隊は……」
クララは周囲を見渡す。
周囲には人が縦横無尽に動き回っている。これでは第四部隊がどこにいるのか分からない。
クララの周囲だけが、やけに静かだ。
「…………時間を無駄にするわけにはいきませんから。先に作戦会議をしておきましょうか」
「はっ」
クララはランツェの言葉に返事をしたものの、心の中で首を傾げた。
作戦会議といったって、トリューベ国の増援を注意するだけでは……。――けれど。
ランツェ伍長の方が軍にいる期間も長ければ、階級も高い。
クララは唾を飲みこんで、ランツェの話に耳を傾けた。
「まずクララ兵長率いる第九部隊をトリューベ国側に配置させ、その次に第四部隊。最後に私、という縦型で行こうと思っています」
「第九部隊が、というより。……アードラーが先でいいんでしょうか」
「ええ。万が一増援が来た時に、アードラーなら敵を錯乱できる。その間に、第九部隊と第四部隊を下がらせて体勢を整えられますから」
ああ。やっぱり。エーレント伍長と同じ。ランツェ伍長も凄い人だ。
クララはランツェの言葉に頷いた。その時、アームングが手を挙げる。
「はい、何でしょう」とランツェ。
「提案があります」
「提案?」
ランツェがアームングの話を聞こうとする。だが。
「遅れました」
そう言ってこちらに来たのは第四部隊だ。
第四部隊の兵長、ハイトは遅れたというのにニヤニヤした顔を浮かべている。部下の二人も特に悪びれた表情を浮かべていない。ただ一人、ゾイヒェだけが苦い顔をしている。
「それで、増援の注意でしたっけ。任せて下さいよ」
そう言うと指示を聞くことも無く、近くのヴルムに乗り込んでしまう。
「え、ちょっと……」
あまりの出来事にクララは言葉が出ない。しかもその間に部下二人もヴルムに乗り込んでしまっている。
クララは思わずランツェの顔色を伺ってしまう。ランツェはクララの視線に気がつくと、大きなため息を吐いた。
「ここで別々に行動する方がマズいですから。第九部隊もヴルムに乗り込んでください」
「分かりました」
クララは頷いてから、アームングに視線を向ける。いつも冷静なアームングもさすがに顔色が悪い。
「アームング。先程の提案ですが……」
「いえ。何でもないのです」
「ですが」
何でもない、なんてことはない。その提案が何だったのか聞きだそうとするが。
「本当に大丈夫ですから。……それより、早く機体に乗り込みましょう」
そう言ってアームングはヴルムに乗り込んでいってしまう。メッサーとフランチィスカもそれぞれのヴルムに乗り込んでいた。
……せっかく第九部隊としてまとまってきていたのに。なんだか一気に崩れてしまったような。嫌な感じだ。
そう思いながら、クララはアードラーを見上げた。機体はクララの気持ちと裏腹に、照明の光が反射して光り輝いている。
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