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齟齬 1

 辺りにカンカンカンと警報音が響き渡る。


「!!!」


 クララは一瞬にして背筋を正した。


「ゾイヒェ! 私は先に行きます!」


 ゾイヒェを振り返ることなく、クララはアラートハンガーへ走る。


 役職が就いたものは新兵より先に持ち場に居なければならない。それは指示を的確に新兵に伝えるためである。


 クララは鍛錬場を抜けて、狭い通路を必死に走る。それは周囲も同じで、前後も自然と必死に走る兵で埋めつくされている。

 やがてアラートハンガーへ雪崩れ込むように着いた。


「クララ!」


 アラートハンガーへ雪崩れ込むと、すぐさま声がかかった。


「シュティル大佐!」


 クララは小走りでシュティルの元へ向かい、ビシッと敬礼をした。


「第九部隊はトリューベ国の警戒を頼む」

「っ!」


 西の山…………。フックス…………。燃え盛る機体…………。

 エーレント伍長――――。


 「トリューベ国」。その言葉を聞いて、一瞬でクララの頭は真っ白になった。

 シュティルはその様子を見て、「落ち着け」とクララの肩に手をのせる。


「っ」


 ほんの少しだが、意識がはっきりした。


「まずは深呼吸だ、いいな」


 シュティルの言葉にクララはコクコクと頷く。それから言われたとおりに、深呼吸をした。

 少しずつ、少しずつ。落ち着いてくる。


 しっかりしなくちゃ。今の私は兵長。第九部隊の部下を指揮し、そして守る立場にあるんだから。


「すみません。大丈夫です」

「なら良し。それでは、今の戦況を伝える」

「はっ」


 シュティルは私の返事に満足そうに頷いてから、口を開く。


「今回、トリューベ国のヴルムが襲ってきている」

「!!!」


 クララは思わず周囲を警戒する。だが、兵たちはロイヒテやクンペルから指示を聞いているようで、こちらに見向きもしていない。

 思わずホッと息を吐く。と同時に、何故大佐であるシュティルがクララに話しかけてきたのか理由が分かった。


 私ならトリューベ国を警戒すべきと分かっているし、西の山での戦闘経験もある。


 クララは声を落とし、「襲ってきているということは……」と尋ねる。


「ああ。もう隠す気はないらしい」

「……」

「だが。おかげでこちらはてんやわんやだ」


 シュティルは深くため息を吐く。その顔には、疲れの色がありありと浮かんでいた。


 クララは他の兵達が近くにいないのを再度確認してから、声をひそめて「ですが。なぜ、急に表舞台に」と尋ねる。


「このままアルム国に任せておけば良かったのでは」

「おそらく。フルーク国を落とすまで、後一歩だと思っているからだろう」

「!?」

「講義で教わったと思うが、トリューベ国側にある三つの山からは鉄鉱石がとれる。トリューベ国がどことも戦争をせず、鉄鉱石をため込んでいたのだとしたら……」

「…………つまりはトリューベ国にとって、フルーク国はあと一歩で攻め落とせる状況だと」

「――――」


 シュティルは何も答えない。が、表情がどんどんと険しくなっていく。

 シュティルの表情の険しさに、クララはだんだんと体が強張っていく。そしてその体の強張りを、クララは王妃候補の経験で感じ取っていた。


 いけない、このままでは。


 クララはブンブンと大きく首を横に振った。


「クララ?」とシュティルが怪訝な顔をする。


「シュティル大佐。第九部隊はどう立ち回ればいいでしょう」

「!」


 シュティルは一瞬目を見開いたが、すぐに表情を元に戻す。一つ咳払いをしてから、クララと向き合った。


「第九部隊は第四部隊と合流。ランツェ伍長とともに、トリューベ国の増援を注意してくれ」

「そっ、それでいいのですか!?」


 第九部隊だけでなく、第四部隊も。しかもアードラーとフックス、通常のヴルムと違う型がただの「増援の注意」のために使われるのである。


 シュティルはクララの問いかけに頷く。


「おそらく、今はまだ戦力を削りにきているだけ……だそうだ。この次が要になってくる。それに……。次の時は……クララとランツェに先陣を頼む可能性がある」

「……」

「そうなったら、第九部隊は早めの解散になる」


 第九部隊の部下は元々優秀だ。他部隊より早めに昇進が決まるだろうと思っていたけれど。こんなに早いとは。


 クララは目を閉じて深く息を吐いた。


「クララ」


 シュティルから呼ばれ、クララはゆっくりと瞼を開いた。


「おそらくだが。最後の機会だ」

「分かっております」

「頼むぞ」

「はっ」


 両足をしっかりと揃え、敬礼をした。


 その瞬間、タイミング良く「クララ兵長」と声がかかった。見ると、メッサーを含め第九部隊の三人が揃っている。


 おそらくは私と合流する前に、三人で集合をかけたのだろう。


 さすが、とクララは満足げに頷いた。それからクララはシュティルを振り返る。シュティルはクララと目が合うと、大きく頷いた。

 クララもシュティルに頷くと、「それでは配置を伝えます」と三人の元へ向かった。


ここまで読んでくださってありがとうございます。



実際に今フルーク国はどうなのかというと。ぶっちゃけ、かなり追い込まれている状態です。

復興が間に合わないうちに次々と攻め入れられていて、スパイも見つかっていない。


この先、どうなっていくのか。ぜひ、お楽しみに。

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