第76話 ピンチ
ヒロは逃げつつ、メグの様子をうかがう。
メグは、エルザスに対して強力な魔法を放とうとしている。
だが、強力な魔法は詠唱に時間がかかるものだ。
ヒロは詠唱省略できるが、メグは、というより普通の魔導士はそんなことできない。
エルザスが魔法詠唱の隙を許すはずもなく、メグに大きな拳で殴りかかる。
スピードも、ゾームに比べて格段に速い。
「くっ!」
メグは魔法詠唱をやめ、詠唱に時間がかからない魔法”フライ”を唱えて上空へ逃げた。
だが、エルザスは動きを変え、大きく蜘蛛の口を上空に向けた。
「蜘蛛相手に、空へ逃げるなんてとっちゃいけない選択肢だせぇ?」
エルザスのその言葉と同時に、蜘蛛の口から糸が吐き出された。
メグは、はっとした顔をした。
逃げる距離が足りず、糸に脚がからめとられた。
ジャイアントスパイダーと戦う時、空に逃げることは愚策。
魔法が届く距離なら、たいてい蜘蛛の糸も届く。
だから、ゾームに対してもフライで逃げるのは良い選択肢ではない。
湿地帯で初めてゾームと対峙した時、サレナからヒロは、そう教わった。
メグもきっと、そんなことは知っているはずなのだ。
だが、エルザスを目の前にして冷静さを失っているがゆえ、いつもならしないミスをしてしまったのだろう。
エルザスが糸を手繰り寄せる。
「ファイアボール!」
メグは足に絡まる糸に火の魔法をかけた。
幸運にも糸にはバリアはかかっていないようで、糸は燃えて消えた。
だが、エルザスは距離が近くなったメグに対して次々に糸を吐く。
メグは足、ふともも、手、徐々に糸にからめとられていった。
ゾームから逃げつつ、ヒロは認識した。
これは、ピンチだ。
ジュドーも余裕がなさそうで、メグを助けることはできない。
ヒロなら大魔法でメグを助けることはできるだろう。エルザスを倒すことだってできるかもしれない。
だが、そうすれば魔力はなくなり、今ヒロを襲うゾームに対抗できない。
魔力が無くなったヒロなど、ゾームからすれば虫けら同然だ。
ヒロだって死にたくない。
それに、プロジェクトが終わっていないのに、プロジェクトマネージャーが死んでいなくなってしまうなんて、ヒロのプライドが許さなかった。
だが、このままではメグが殺される。
「どうすれば…」
プロジェクトのことは詳しいが、こんな戦いのことなんて分からない。
ヒロは、ファシュファルに腹を立てた。
「おい!ファシュファル!話が違うぞ!
こんなの、プロジェクトマネジメントじゃない!
でてこい!殴らせろ!」
ファシュファルに怒りをぶつけた。




