第46話 要件定義の完了
ヒロがまたも介入する。
「マーテルさん。
マーテルさんの魔道具の供給力はシュテールで最も高いですし、あなたの知識も必要です。
なるだけあなたの意向に添えるようにはしたいと思います。
ですが、我々の顧客たるグレンダール総指揮官が費用について良しと言わない限りは、実行できません。
この案件の取引が全くなくなるのは、マーテルさんとしても得策ではないでしょう?
王国との大きなパイプもできることになりますし」
マーテルがふてくされた様子で答える。
「まぁ、魅力的な案件であることは確かです」
「少なくとも兵器に使う雷撃発生の魔道具は必要になりますし、王国との大きなコネもできます。
まずは、魔道具を使った場合の費用がいくらぐらいか、算出していただけませんか?
折り合えば、魔道具の採用を優先します。そのほうが仕組みとして安定するというのは、事実ですから」
マーテルが答える。
「手を引くとさっきは言いましたが、確かに案件がなくなるのは嫌ですからね…」
「ランペルツォンさん、ジュドーさん。
すべてを魔道具で賄う、というのは人手を使うよりも危険も減ります。
理想と言えば理想です。
だから、マーテルさんの言うことも間違ってはいない。
ただ、ランペルツォンさんのおっしゃるとおり費用との折り合いが必要なので、その範疇でできるだけ魔道具を採用していくというのが良いと私は思います」
ジュドーは息をふーっと大きく吐きつつ、言った。
「ヒロがそう言うなら、分かった」
ランペルツォンは、了解した、とだけ言った。
その後、さらに細かく要件を書き、文書にした。
議題3の”倒し方案を実現するための要件の文書化”である。
例えば、射出する矛はどの程度の強度で打ち出されるべきか、ゾームとの距離をどう想定するか。
次のフェーズである”フェーズ②兵器の設計”にて必要なインプットだ。
一部人手が入っているので、”兵器”だけではなくなったので、”フェーズ②討伐の仕組みの設計”としたほうがよさそうである。
なんだか奇妙な日本語で、”討伐システムの設計”とするのが正直しっくりくるのだが、この世界では”システム”という単語は一般的ではない。
便利な単語だったんだなぁ、とヒロはしみじみ思った。
こうして、調査フェーズの大部分は終了した。
後は、次のフェーズのスケジュール、費用を明確にして、調査フェーズの結果とともにプロジェクトオーナーであるグレンダール総指揮官へ報告し、次フェーズ実行の承認がもらえれば次に移ることができる。
メンバーはそれぞれ帰って行った。すでにギルドの営業時間は過ぎている。




