第56話 オヤジサマ
「で、これからどうすんだ?」
「仲間を探すの。王に立ち向かうために」
「あの親父様を直接殺りに行くってわけか」
オヤジサマ……敬意があるのかないのかよくわからない呼び方ね。
「話し合いができれば、そうしなくて済むかもね」
「僕は出会った瞬間に、首を刎ね飛ばしてやりたいが」
物騒なことを言うジュレンを、少しだけたしなめつつ、移動を再開する。そして、私は険しい顔でこぼした。
「それにしても、あのゴリラ王。これだけ性格破綻してて、絶対に嫌われてるはずよね」
「それが、とてつもない数の忠臣を抱えてるみたいだぜ」
まったく淀みのない返事。レジャックは意外とこの国の裏情勢に詳しいらしい。
「わけわかんない」
「確かに俺も不思議だ。親父様は、金も権力もない時からそうだったらしいしな」
「催眠術でも使ってるのかしら」
私が冗談めかして言うと、レジャックがニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「面白え、俺もやってみよ」
おもむろにレジャックは首元のネックレスを外すと、私の目の前で振り子のように揺らし始めた。
「ほーら、お前はだんだん裸になりたくなーる、なる」
「はぁ……」
あまりのくだらなさに、ジュレンが頭を抱えて深々と溜息をついた。心なしか気温がスッと下がった気がする。今にも、おかしな新入り氷漬けRTAが始まりそう。
「……」
私は無言のまま、歩きながら上着の第一ボタンに手をかけた。一つ、二つとボタンを外し、肩口から上着を滑り落とす。鎖骨と胸元に、二人の視線が釘付けになった。
「お、おい!?」
「マジかよっ」
肩まで綺麗に出したところで私はピタリと動きを止め、顔を上げてニヤリと笑った。
「なーんてね」
「……」
ああ、二人の時が止まっちゃった。『私がこういうことをするはずがない』という思い込みを、見事に裏切られたという間抜けな表情。
「あはは、そろって目玉まん丸じゃない! お子ちゃまねぇ」
「君ってやつは……」
「オホホホ。私をからかおうなんて、千年早いわよ」
「思ったより、中身は年食ってやがるな」
「誰が年増だ!」
「あいたっ」
ゴツンと、座っているレジャックの頭にゲンコツを喰らわせる。ほんの数ヶ月前まで、コヴィ様にも同じことやられたっけ。なんて思い出しながら。




