第57話 本当の始まり
「レジャック、ところでその魔剣の名前は?」
「ん? 『痛みの魔剣』だが」
「……可愛くないわね」
「可愛い?」
レジャックとジュレンが一瞬顔を見合わせ、揃って奇妙な生き物でも見るかのように私へと視線を向けた。失礼なやつらだな。可愛いは絶対正義なんだぞ。
「決めた。今日からあなたの魔剣の名前は『インディアナ』よ」
ただ人を痛めつけるだけではなく、彼が正義の鞭使いになってくれるようにと願いを込めて、私はそう命名した。
「……インディアナね。悪くない、気に入った」
レジャックは少し驚いた後、面白そうに口の端を上げた。隣でジュレンが「インディアナは可愛いのか……?」なんて真面目な顔で呟いている。これについては、後でみっちり対話が必要ね。
『よく生き残ったな。褒めて遣わそう』
不意に、ドーム内にトラヒム王の低く響く声が降ってきた。
「出たわね……」
「と、いうことは」
レジャックが空中で指を滑らせ、ステータス画面を展開する。すると、淡い光を放つホログラムの端から、小さな妖精がひょっこりと顔を出した。
「はぁい、色男」
「よう、ベル。お、ちょうど残り50人になったじゃねえか」
ふー、これでようやく殺し合いから解放されたのかしら? っていやいや、待って。色男?
どうしてベルとレジャックが、そんなに親しげに馴れ合っているのよ。妬いてるとかそういうんじゃなく、なんかこう、腑に落ちないんだけど。
「妖精ってのは、随分と趣味が良いんだね」
ああ、私以上に納得がいっていない人がいる。そりゃそうよね、あれだけ不遇な扱いを受けてきたんだから。大人らしく微笑んではいるけれど、心の中はきっと絶対零度。
『ここから先は、砂を噛んで生き残れ。しばらく経ったらまた連絡しよう』
「なっ!?」
有無を言わさぬ、一方的な王の宣告。予想通り、どうやら過酷な旅はまだ続くらしい。あのボケナスゴリラ、どこまで私たちをオモチャにすれば気が済むの。
――ゴゴゴゴゴゴゴッ!
「なによっ!?」
突如、足元の地面が激しい震動と共に瓦解を始めた。フワリとした嫌な浮遊感。私たちの体は、重力に引かれて深い暗闇へと真っ逆さまに落ちていく。
残念ながら、最低最悪のデスゲームはまだ終わってなんていない。むしろここからが、本当の始まりなのかもしれない。
これで4章終了。ほぼ折り返し地点です。
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