第52話 こうかはばつぐんだ!
「はっ、面白え」
痺れる体で、人差し指をクイクイッと曲げて挑発してくる男。
「あらそう。思ったよりはいい子なのね」
あえて、ここから追加の麻酔効果をオフにする。
「ぐっ!」
私のほぼ一方的な暴力が始まった。相手の武器は、間合いがあってこそ真価を発揮する長距離用のもの。遠くにあれば脅威でも、懐に入り込んでしまえばただの重い紐に過ぎない。
「女相手なら丸腰で十分だ」
それを察して自ら武器を捨て去り、両腕を構える。じきに立てなくなるのは分かっているだろうに、どこまでも屈しない。大した反骨精神ね。いや、ここからでも逆転できると本気で信じているのかもしれない。
「のたうち回れ!」
「!?」
とんでもないセンスと経験値だ。一瞬の振り遅れを見抜かれ、深く懐へ潜り込まれた。まずい、拳を叩き込まれる。
「んなっ!?」
と焦ったのも束の間、相手の腕に薄い氷が纏い付く。ただでさえ眠気に襲われてるんだ。バランスを崩して、今にもすっ転びそう。
「お前も僕らを舐めすぎだ」
「てめえ、体を冷やして耐えてやがったな!」
アイススプレーの要領と同じで、ジュレンは私同様に痛みを和らげて機会を狙っていたんだ。よく見れば、全身を薄い氷で覆っている。その上、男が図らずも至近距離まで近づいて、冷気がより強力かつ正確に作用した。ナイスアシスト!
「人の痛みを、その身で学びなさい」
地を蹴り、つま先に渾身の力を込める。私の足は鋭い弧を描き、天へと上り詰めるかのように跳ね上がる。
「ぐおおおおっ!?」
つまりはまあ……アレよ、金的。
「あ……が……」
ああ、白目をむいて倒れたわ。この得体の知れない男も、やはり人の子。急所への一撃、効果は抜群だ。
「相当怒っていたんだね……」
先ほどまで敵意を剥き出しにしていたジュレンですら、男に哀れみの表情を向けている。どうやら、とっても可哀想なことをしてしまったらしい。ごめんあそばせ〜




