第46話 残り55人
すべてを切り裂く死神のような黒コートの少女から、どうにか逃げ延びた翌々日。あれから私たちは、あてもなく暗い森の中を徘徊し続けていた。
「ひっ……!」
「大丈夫か?」
「……ごめん、なんでもない。ただの虫よ」
カサリという極小の葉音にすら、ビクッと肩を震わせてしまう。ヤンを失ったショックと、いつどこから襲われるかわからない恐怖。張り詰めた糸のような緊張感のせいで、私の神経は完全に擦り切れていた。
「また少し休むか? 顔色が悪い」
「ダメ。立ち止まっている暇なんてないわ。本当にすべて終わってしまう前に、前進しなきゃ」
ジュレンの気遣いを、首を振って拒む。ただ逃げ隠れしているだけではジリ貧よ。安全を確保するためには、私たちが強くなるか、あるいは信頼できる仲間を探すしかない。
息が詰まりそうな沈黙を誤魔化すように、私は空中にステータスウィンドウを呼び出した。
「はぁい、酷い顔ねぇ。ま、挫けちゃだめよ」
【残り人数】 55/100人
【撃破人数】 2人
【武器倍率ボーナス】 1.5
【ステータス】
名前:アイサ・タナースーズ
魔剣:スリーピング・ビューティ
能力:麻酔効果
形態:第二
アビリティ:アップル・コントロール
「残り55人……そんなに減ったのか」
思わず強く唇を噛んだ。まだ一ヶ月も経過していないだろうに、半分近くの命が消えたのだ。気だるげに空中で足をブラブラさせている妖精とは対照的に、私は苦虫を噛み潰したようなを表情を浮かべる。
「ヤンを眠らせた分は、カウントされていないみたいね」
あの時、ヤンに致命傷を与えたのは「彼女」だ。どうやら、このゲームは漁夫の利を許さない仕組みらしい。わずかな希望も打ち砕かれたようで、気晴らしにもならなかった。
「けれど半数まであと少しだ。いっそこのまま、息を潜めているという手もあるが……」
「いえ……絶対に力をつけておいた方がいいわ」
「そうだな。僕もそう思う」
ここまで手の込んだ施設や仕組みを用意して、ただ半数に減らすだけで終わりなんて考えにくい。最悪の事態を想定しなければ。あの狂った王が相手なら、なおさらね。
「ん? なに……?」
落胆する私たちの耳に、ふと、風に乗って不気味な呻き声が微かに届く。




