第27話 私の三大栄養素
「気は済んだ? じゃ、私はこれでぇ」
「ま、待ってよ! ベル、あなたは一体何者なの?」
「何って、お手伝い妖精よぉ」
「本当に妖精っていう種族がこの世界にいるの?」
「かもねぇ」
返事が雑……と文句垂れながらも、内心では結構テンションが上がっていた。だって、妖精とスイーツとファッションは、私の三大栄養素なのだから。
「ねえ、この戦いを止める方法ってあるの?」
「知らないわぁ。無駄話に付き合わせるなら、私もう出てこないわよぉ」
「あ、ごめん」
ポンッ、という弾けるような軽い音とともに、ベルの姿はどこかへと消えてしまった。
「……可愛いなぁ。ずっと傍にいてほしい」
「1つだけ、教えてあげるわぁ」
「うえっ!?」
いなくなったはずのベルが、いきなり私の鼻先に顔を出した。少し胸を張って、自慢げな表情。
「ここから途中で抜けようなんて甘いこと、絶対に考えないことぉ。あの男は、本気でイカれてるから」
あの男……トラヒム王のことよね。それはもう、身をもって嫌というほど知っている。
「そして魔剣の、あなた自身の可能性を信じることぉ」
あれ? 1つだけと言いながら、ちゃっかり2つ教えてくれているじゃないの。
「私の、可能性?」
「信じるっていうのはね、ボケっと白馬の王子様を待てってことじゃないわよぉ。どこかに道はあるはずと、足掻き続けろって意味」
愛らしい声で、辛い現実を突きつけてくる。けれど、私を真っ直ぐに見据えるその小さな眼差しには、力強さと熱を感じる。単なる表面上の慰めなんかより、よっぽど深く心に響く。
「じゃあねぇ」
「あ、もうちょっとだけ」
「ダメ。もうこれ以上はサービスしない。私にだって、怖いものはあるんだからぁ」
そしてベルは小さな煙を残し、今度こそ完全に去った。怖いものっていうのはやっぱり、父のことだろうか。
「いっそ永遠にステータス画面を開きっぱなしにしておこうかな」
「怒られるだけだと思うよ」
確かに、そうね。せっかくの癒やし枠に嫌われたらおしまいだわ。
「随分と懐かれているようだね。僕にはあんなに話してくれなかった」
不思議そうに目を丸くするジュレン。あれでも会話の量が多い方だったらしい。
「褒めてあげればよかったのに。可愛いねって」
「言ったけれど、あそこまで機嫌は良くならなかったよ」
この顔面偏差値で繰り出される口説き文句が、通用しないこともあるのね。自分の方が懐かれているという事実に、少しだけ優越感を覚える。けれど、不可解なこともあって、能天気に浮かれることはできないわね。
「君には、特別な何かがあるのかもしれないね」




