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第26話 ステータスぅオープン

 薄暗い森の奥深く。いつ誰が襲ってくるかもわからないし、不気味な死体泥棒の一件だってある。私たちは、周囲の目を盗むようにして、実戦形式の剣の稽古を続けていた。


「筋がいい。きっと君は強くなるよ」

「お世辞でもありがたく受け取っておくわ。今、どうしてもその強さが必要だから」


 自嘲気味に笑って額の汗を拭いながら、私は自分の魔剣……巨大な葉っぱの刃を大きく振り下ろした。刀身自体は植物なわけで、紙みたいに軽い。なのに、命のやり取りなんていう重すぎる現実のせいなのか、振るう腕にはひどく鈍い重みがのしかかってくる。


 こんな理不尽なデスゲームに放り込まれるのなら、もっと体を鍛えておいたのに。今さら後悔したところで遅いんだけどさ。


「ところであなた、どうしてそんなに剣術に秀でているの?」

「母さんが貴族の娘で、稽古をつけてくれたんだよ。面倒を見てくれる兵士も、何人かいた」

「ん? 貴族なのに身売りしたの?」

「そうさ。領地の人々を養うために」


 あ……聞いちゃいけないことを聞いてしまった。この暗い空気と自分の失言をなかったことにするために、別の話題に切り替える。


「とにかく! 仲間を探しましょう。私たちみたいに、屈せず王に立ち向かう人間を集めるの」

「簡単ではないだろうね。敵を倒すほど強くなる仕組みのせいで、みんな疑心暗鬼を生じてるだろう」


 うっ、痛いところ突かれた……悪趣味でずる賢い策略を練るわね、あのゴリラ。どうしてくれんのよ。この湿った空気。


「そういえば……君、魔剣が目覚めたのなら、自身のステータスが分かるんじゃないか?」

「へ? ステータス?」


 思わずピタッと手が止まる。ステータスって、あのステータス?


「うん。ついさっきまで、僕も忘れたけど」

「いくら魔剣が存在する世界とはいえ、ちょっと浮きすぎじゃないの?」

「そうでもないわよぉ」


 突如頭上から、ひどく甘ったるい声が降ってきた。


「なっ!?」

「はぁい、男好きちゃん。私はみんなのお手伝い妖精、ベルよぉ」


 ヒラヒラと舞い降りてきたのは、手のひらサイズの女の子。小さな体にぴったり密着した緑色のレオタード姿。髪は私より輝くブロンドで、もはや黄色と言っても差し支えない。背中では青白く発光する幻想的な羽が、せわしなく羽ばたいている。


「ちょっと、誰が男好き……」


 むきになって言い返そうと口を開いたものの、詰まってしまった。だって、ジュレンの顔立ちの良さに内心ドギマギしたり、さっき倒したヴィアダルの寝顔を意外と可愛いかもなんて観察しちゃったり。100%否定しきれない自分がいる。


「それじゃ、ステータスぅオープン」


 自称、妖精のベルが空中でパチン! と小さな指を鳴らした。

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