第25話 まだまだ始まったばかり
「誰かに見つかって、襲われたのか?」
ジュレンと私は即座に武器を構え、周囲を警戒しながら調べる。けれど……争った形跡や、血痕が何もない。
「自力で逃げたわけではないわね。麻酔は絶対に解いていないし、ここから歩き去ったような足跡が全くないわ」
「引きずった形跡もない。体だけが、まるで最初から存在しなかったかのように綺麗になくなっている……誰かに回収された?」
仮にそうだとしたら、一体なんの目的で? ただ殺すだけなら、その場で息の根を止めるはずだ。わざわざ重い体を、持ち去る理由がない。
「まさか……人の肉体を利用する能力を持った、魔剣使いが他にいるとか?」
私の不吉な推測に、ジュレンの顔も険しくなる。
「次からは、倒した相手はもっと見つからない場所に隠そう。甘かった」
「そうね。後悔先に立たずだわ……」
かりそめの平穏は、終わりを告げた。得体の知れない悪意に見られているような、薄気味悪さが、再び私たちを包み込む。
「ねえ、そもそも魔剣って何なの? どうして、私たちにこんな力が眠っているの?」
「僕も詳しいことはわからない。けれど……あの狂った男が、一代でここまで成り上がった最大の理由なんだろう」
ジュレンは静かに目を閉じ、呟いた。
「そして、大陸中に散らばっていた僕たちを、ここに集めた意味かもね」
「この力は、みんなを救う希望……のはずよね?」
「そう願うよ」
不穏な空気が残るその場から離れ、私たちは別の巨木の下にささやかな寝床を作った。見張りを交代しながら、浅い眠りにつく。
長い長い一日が終わった。でも……過酷な戦いは、まだまだ始まったばかりだ。
ここまでで今の章は終わりです。
全体としては、大体8〜9章くらいで完結する予定です。1ヶ月ごとに1章追加できるかなと思います。
もしよろしければ、ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります。




