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第23話 遅れてきた反抗期

「……戦わずに済む、平和な世界に生まれていれば。ヴィアダルだって、誰も傷つけずに済んだかもしれないじゃない」

「仮の話はよせ。世の中君が思うほど甘くないし、こいつは危険すぎる」

「逃げてるだけよ。そうやって他人に悪ってラベルを貼り付けて、切り捨てるのが一番楽だから」


 前世の私は、全て「世の中そういうものだ」「仕方がない」と諦めて、大人ぶって生きてきた。でも、もうやめたのだ。


「……どうだろうね。それに、君一人がそんな綺麗事を掲げても意味があるのか?」

「意味があるかどうかは、私が決めるの。誰かじゃないわ」


 転生した人生ですら、誰かの価値観に従ってたまるもんか。不器用でも、私らしく歩いてみせるわよ。


「……大したもんだ。さっきまで、ただの怯える女の子だったのに」


 真っ直ぐに睨み返すと、ジュレンはふっと目を伏せ、やがて氷の剣をスッと消した。


「なら、僕も手伝おう」

「へ?」

「一人よりも、二人だ。君はこの戦いの希望なのかもしれない」


 ポカンとした私を残し、彼は眠りこけるヴィアダルを抱え上げ、近くの大きな木の根元に空いた穴へと隠し始めた。


「希望か……まあ、悪くはないわね」


 もう仕方がない。おだてられれば悪徳令嬢だって、木にだって登ってやろうじゃない。


「こうなりゃ、とことん暴れてやるんだから! 遅れてきた反抗期とは私のことよ」

「まるで大人みたいな言い方だね。君はまだ僕と同じ子供だろ」


 強がる私を見て、ジュレンはふっと柔らかく笑った。


 ーーん? 出会った時は自分のことを私って呼んでたのに、いつの間にか僕に変わってない?


 ふと、違和感に気付く。心の氷が、少し溶けたのかしら。

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