第22話 生存戦略
「治った……感染が、引いていく」
自分の腕を見つめるジュレン。彼の白い肌を侵食していた禍々しい赤黒い痣が、スウッと引いていくところだった。
「ヴィアダルが仮死状態になったから、効力が切れたんだ。よかった」
私は心底ホッとして、その場にへたり込んだ。張り詰めていた緊張の糸が切れ、ドッと疲労が押し寄せてくる。前世も含めて、過去最高にハードな一日だったかもしれないわね。
「ところで、ジュレンくん」
「うん?」
「あなた、自分の魔剣が目覚めてること……最初から知ってたわね?」
私が細い目で尋ねると、ジュレンは少しバツが悪そうな顔をして頷いた。
「ああ。土壇場まで能力が目覚めていないフリをしたほうが、いざという時に敵を騙せると考えたからね」
それはそう。生存戦略としては極めて正しい判断。
「それに……君のことも、まだ完全には信じきれていなかった」
それもそう。出会って数時間で、しかもこんな狂った殺し合いの舞台で、他人の口車を完全に信用できるお人好しなんて早死にするだけ。結局のところ、彼の判断はすべて理にかなっていたので、私は怒りの大部分を水に流すことにした。
「それで。その男は、殺さないのかい?」
ジュレンの冷たい視線が、地面で大きないびきをかいて眠るヴィアダルへと向けられた。
「ええ、まあ」
「なら、僕が止めを刺そう」
彼が無表情のまま白銀の刃を構えようとした瞬間、私は慌てて立ち上がり、両手を広げてヴィアダルの前に立ち塞がった。
「なっ、ちょっとやめてよ! もう無力化して眠らせたんだから、いいじゃない!」
「いつ目を覚まして、襲ってくるか分からないだろう?」
「起きないわよ。絶対に」
私の頭の奥底に、あの巨大な葉っぱ……『麻剣』の精密な使い方と、流し込んだ麻酔の持続時間が、まるで天からの啓示のようにハッキリと降りてきているのだ。これが、私の血に眠る能力なのだと、細胞が理解していた。
「例えそうだとしても、この男は生かしておくべきなのか? 僕たちを殺そうとしていたんだぞ」
彼の言うことは正しい。でも……私は思わず唇を噛み、少しだけ涙目になりながら反論した。




