第42話 VSシスノガータ③
決着。
ドレムはゆっくりと立ち上がり、エレーナの背中に手を置いた。
「な、何よ急に!!」
「いいから黙ってろ………状態異常魔法『傷同調』………」
ドレムの神経に痛みがズズズズズ………と侵食してくる。
この技は被験体がダメージを受けた分を自らが肩代わりする、という魔法だった。
自分には何もメリットが無いように思えたが………ドレムはダメージを吸い終えたあと、ニヤッと笑っている。
「………それがアンタの作戦?」
「おうよ………」
「………よく分かんないけど、身体軽くなった気がするわ………」
「いいから行け、俺も加勢する。」
ドレムはダメージを取り込みすぎたのか、いつもより覇気のない声を出している。
エレーナは気にする事なく、「調和の聖火」の中へと突っ込んでいった。
斬り込んでいく2人だったが、なかなかにシスノガータの立ち回りが堅く、突破が困難だった。
(クッ………!! 2人でもこんなキツいの!? 私がダメージを受ける一方じゃない、これの何が一か八かなの!?)
しかし何故か、エレーナはダメージを感じなかった。
ダメージが一周回ってハイになったのか、とも思ったがドレムの姿をチラッと見て、そういうわけではないと思い直して捨て身で突っ込むが、この量を相手だと気が遠くなる作業だ。
もう少し、もう少し………そこまでエレーナが来た時にドレムが一気に斬りかかった。
いつの間にそんなところにいたのか、と言わんばかりのスピードだ。
がしかし、効いている様子が全くなかった。
「………!? まさか………!! 覆ってやがるのか!? 『調和』で全身を………!!」
「よく気付いたな、その通りだ。やはりお前を見込んでいた兄は間違っていなかったな。」
「そりゃどーも………!! エレーナ!! 弱点は見えるか!?」
ドレムの掛け声にエレーナはすぐさま左手を翳すが、靄にかかったような形になっていて、反応は無し。
首を横に振るジェスチャーでドレムに伝えた。
「成る程………じゃあ、隙間を作ってやればいいんだな!?」
そう言ってドレムが短剣に闇魔法を纏わせて構える。
「悪夢神剣………『障壁破壊』!!」
下からトリプルアクセルを跳んで回転斬りを放ち、「調和の鎧」をかっ裂いた。
「小癪な………!! 『皇の焔』!!」
想定外だったのか、冷静なシスノガータらしくない焔攻撃を突如吐き出し、ドレムの身体が炎に包まれる。
しかしドレムが決死の覚悟でこうエレーナに伝えるように吠えた。
「エレーナ!! もう一度翳せ!!」
「了解!!」
エレーナは一瞬の隙を突き、もう一度勇者の紋章を翳す。
すると、シスノガータの丹田付近に青白い光が灯った。
弱点だ。
「ドレム!! お腹の下あたりが弱点!!」
「アバウトだな………!! まあいい、十分だ!!」
すると、炎に包まれていたはずのドレムの姿が跡形もなく消えた。
シスノガータとエレーナは、完全に想定外の出来事に目を丸くしていた。
そしてシスノガータの腹には………トン、という寒気がする感覚をもたらす手が。
なんと、先ほどまで炎に包まれていた筈のドレムがそこにいた。
「なっ………!? いつの間に!?!?」
既に満身創痍だったドレムだが、シスノガータは完全に動揺していた。
ドレムは肩で息をしながらも、ニヤッと笑っていた。
「いつからだと………思うよ、シスノガータ様………」
「………貴様のことだ、最初からこの私を嵌めるつもりだったのだろう?」
「そうだ………最初から戦っていたのは、俺の作った幻だ………シスノガータ様の癖を知っている俺じゃなければ、勝ち目はなかったし………エレーナにそれを伝える役割をアレは担っていた、俺じゃなかったら、考え付かねえだろ………? 自分を犠牲にしてまで、勝つための算段を考えるのは………」
エレーナは衝撃の事実を知り、その場から動けなかった。
(まさか最初に無謀に斬り込んだのも………「狂化」をかけた時に驚いた顔をしてたのも………!! まさか初めからコレだけを狙って………!?)
しかしエレーナの思いとは裏腹に、ドレムは力をゆっくりと、自分の右手に集約させた。
「これは俺が受けたダメージを相手に同じように返す大技だ………幻のダメージも俺のものだし、さっきエレーナにかけたヤツも全てこの為さ………!! 『傷同調・流動』!!!!!」
まばゆい光が放たれたと共に、シスノガータがダメージで大絶叫を挙げた。
最大の特徴である、「何が起こるか自身でも分からないダメージ」を、ブーメランが返ってきたかの如く自らに降りかかったのだ。
「『自分でも何が起こるか分からない』、それがアンタの………『調和』の弱点だ………やれ!! エレーナ!!!」
シスノガータが膝を突いた直後、エレーナがすぐさま駆け出した。
「アルタルキア剣術!! 『雷神大剣戟』!!!!」
ズバァン!! という切れ味と共に、シスノガータの身体から血が噴き出した。
「見事な………コンビネーションだ………合格だ………」
エレーナは剣を鞘に納めた。
そして、ジッと向き合い、ハイタッチを無言でドレムと交わした。
しかし2人とも、既にボロボロだ。
だが粋なことに、シスノガータは自身に回復魔法をかけ、エレーナとドレムにも同様に回復魔法をかけた。
「さて………全ての試練が終わったわけだが、約束通り報酬をやろう。グリワモールプラチナ、だ。だがその前に勇者・エレーナよ………剣を貸してくれぬか。人間では、この鉱石はそのままだと猛毒で死に至るからな。」
「?? いい、けど………」
エレーナは言われるがまま、剣をシスノガータに手渡す。
シスノガータは「承った」とだけ言い、スタスタと北西方面へと歩いていく。
エレーナとドレムはそれに着いて行った。
「な、何をするのよ??」
「………まあ、見てなさい。『覚醒の儀』だ。」
シスノガータは岩の隙間に開いた窪みに、剣、グリワモールプラチナ、そしてドレムが徴収した「半分ずつの魔王の魂」の入った箱をそれぞれ嵌めた。
すると。
轟音と共に虹色の光を帯びて、剣が宙を舞った。
数秒後、ヒュルルルル、カサン!! と石を切る音を立てて、剣が着地した。
持ち手が虹色に輝き、刀身が怪しく、しかし美しく輝いていた。
「これが………!! 第二段階の勇者の剣!!」
「左様。それがあれば、兄・ティタノゾーアも完全に滅ぼせよう………2人とも、気をつけろ。危機はもう時期にやってくる。」
「フン………任せときな!! 絶対にオーレリアの平和を守ってやるよ!!」
ドレムは自身ありげにそう告げた。
「………兄はサゴン霊山にいる。もう目覚めているだろうが………力は戻りきっていないはずだ、だが心してかかれ。いいな?」
「当然!!」
2人はシスノガータに別れを告げ、下山して行ったのであった。
そして目的地であるサゴン霊山に向かう前に、森で野宿をして明日に備える事にした。
エレーナは、ドレムにシスノガータからはぐらかされていた事を問い詰めた。
「ねえ、ドレム………アンタの苦い思い出、ってなんなの?」
「そうか、まだお前には話してなかったな………そうだな、この際だから、話しておくか………」
ドレムは木の幹に背中を預け、話し始めた。
自らの生い立ちと共に、エレーナに向けて過去をポツリと。
次回は新章・決戦編です。
ティタノゾーアとの激闘を書きたいと思いますが、まずはエレーナがドレムの事を知るのと同時に告白、決戦直前まで書きます。




