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第39話 「悪夢」の魔王の悪夢のような過去

題名通りです。

ここに来て主人公・ドレムの過去を明かしたいと思っております。

まあ何度か書いてますけど、ティタノゾーアに助けられた経緯を含めて。

 遡ること17年前。


今のドレムの拠点であるマーレインから遥か南にあるオーレリア最大の貧民街・「サン・ロガーシュ」。


ドレムとムーユはここで生まれ育った。


しかし2人は_____「()()」だった。


魔界では特異な目で見られ、2人は忌避され続け、飢餓寸前に陥るほど、過酷な生活をしていたのである。


そんなある日のことだった。


ムーユが「お腹が空いた」と訴えてきて、ドレムがちょっと待ってろと言って、食材を調達しに出かけた帰り道だった。


ヘビや淡水のカニ、キノコを採ってきた時、事件が起きた。


なんとムーユが、ちょうどドレムの目の前で魔族にリンチされていたのだ。


「なっ………!! 何してんだ、オイ!!!」


ドレムは慌てて食材を入れたカゴを投げ捨ててムーユを暴行している魔族をタックルで突き飛ばした。


「オイ!! 大丈夫か、ムーユ!!」


青痣だらけになり、顔も腫れ上がっているムーユを見て、流石に取り乱さざるを得ないドレム、そしてリンチした魔族達を睨み付けた。


「ったく、人間のクソガキが………ちょろまかと今まで逃げてたみてえだが………今日で終わりだ。ここは魔族だけが許容されてるんだ、人間がいていい場所じゃねえんだよ………」


「お前ら………!! ぜってー許さねえからな………!!」


ドレムは睨みながらもボロボロになったムーユを庇う。


しかし魔族達は容赦なくドレムをリンチし、意識が朦朧とする程に重傷を負わせたのであった。




 30分経ち、完全に虫の息になった2人。


しかしそんな状況下でもドレムの目だけは死んでいなかった。


「まだ死なねーのかよ、クソガキども………まあいい、殺してやる。」


魔族が尖った足を振り下ろそうとしたその瞬間だった。


「何をしておる?」という野太い声と共に、ザシュザシュザシュ!! という何かが斬れる音と共にドレムとムーユに血が滴り落ちた。


正真正銘、大魔王・ティタノゾーアだった。


「成る程、人間のガキが2人、か………」


ティタノゾーアが興味ありげに呟く。


そして気を失っている2人を抱え、城へと持ち帰っていったのであった。




 目を覚ますと、目の前にティタノゾーアが。


「………ここは?」


「おうおう、やっと気付いたか。まったく、人間というのは無駄に生きたがりで困る困る! ハッハッハッ!!!」


「………オイ、オッさん………妹は何処だ?」


ドレムは自分の事よりムーユの方が心配で、同室にいない事を気にしてキョロキョロと辺りを見渡す。


「彼奴は既に目覚めた。だが打ち身が酷いものでな、侍女の部屋で安静にしておる、安心せい、人間のクソガキ。」


「………そっか………ありがとよ、助けてくれて。」


ドレムはホッとした顔で布団にまたバフッ、と寝転がった。


「しかし人間がこのオーレリアにいるのもまた珍しい事が起きたものだ。元からそこの生まれなのか?」


「生まれは知らねーし………親に捨てられたから親の顔も覚えちゃいねえ、3年前から妹にメシ食わせながら生活してた、そんだけだ、オッさん。」


「フッ………ハハハハハ、なんとも珍妙だなぁ、わざわざ魔界に我が子を棄てるようなバカな人間も居たものよ!!」


ティタノゾーアは高笑いでドレムの出自を面白い、と言わんばかりに言った。


だがドレムは不思議と不快感だけは覚えなかった。


まだ名前も知らない男だったが、とにかくカラッとした、貧民街では味わえない感覚をドレムは味わっていた。


「小僧………名前は何と言う?」


「ドレム。妹の方はムーユ。」


「フッ………いい名前ではないか。余はこの大陸を統べる大魔王・ティタノゾーアだ。ドレム、余から提案があるのだが………聞く耳はあるか?」


「………なんだよ?」


「ドレムもムーユも、上に行ける才覚があるように思うのだが………そのためには魔族にならねばならない。しかし余としても前例がないからな、人間が魔族になった上で、成り上がっていくのは、な。どうだ? 魔族となり、まずは余の駒使いとして働いてみるか? 無論、衣食住は保証する。何せ人間だと浮いてしまうからな、どうだ? 乗ってみるか?」


ティタノゾーアはニィ、と笑いドレムを魔族に身を落とすように勧誘する。


ドレムはあんな目に遭うのは御免だと言わんばかりになる、と即答した。


ティタノゾーアは気に入った、とばかりに傷が癒え次第儀式に取り掛かり、ドレムとムーユは晴れてシャドーサタンに転身したのであった。





 過去の一部分を見終えたドレムはこう呟いた。


「………そうだ、そうだったな………あの人に、ティタノゾーア様に生きる道を与えられたんだったな、あの時………それを俺は………恩を仇で返そうとしているんだよな………」


これを聴いていたのか、シスノガータから声が聴こえてくる。


「そうだ、お前がしようとしている事はまさにそれだ。お前は頭がいい、だからこそ見えてしまったものがあったのだろう? だが一方でそれが本当に正しいのか………まだそう()()()()()()のもまた事実だろう?」


「………そうだな、だが次に導き出す想いが………俺の試練で出すべき答えなんじゃないか?」


シスノガータは記憶の幻影を見せ、ドレムに意志を再確認させる事にしたのであった。





 それは数ヶ月前のこと、ドレムが魔王に認定され、アータイルを支配していた時だった。


人間界の支配に乗り出したティタノゾーアに派遣される格好になったドレムだったが、暇を持て余すために住民に過去の記憶から来る悪夢を見せて過ごしていた。


しかもタイミングが悪く、ドレムは諸国を回ってティタノゾーアの評価を悪い意味で聞いていた最中での派遣だったため、「このまま就いてもいいのだろうか」という思いが思案していたのだった。


そんな時に根城にしていた洞窟に、エレーナ一行が来たのであった。





 搦手で苦戦を強いらせるものの、エレーナとの一騎打ちで遂に力尽きた。


「あークソッッッ………ここまでかよ………」


消えかける身体に自らの死を悟ったドレム、潔く敗北を認めた。


そして宝箱はこの奥にある、と告げ、エレーナとドレムが面と向かって対峙された。


「ったく………まだやりてえ事、あったのによ………アッチに妹を………残してるのに、よぉ………」


「………やりたい事?」


「魔界を内側から………変えたかったんだ………笑えるだろ? こんなヤツが、そんな事思ってたのか、って………まったく、死に恥を晒すよ………」


「………笑わないわよ、そんなの………アンタが見たのは敗北という悪夢かもしれない、だけどそれを死に恥だなんて思わない。だって強かったから………今更文句なんて言わない。胸、張りなよ。アンタは立派に生きた、って。」


「まったく………嬉しい事、言うじゃねえかよ勇者サンよぉ………初めて見た、人間の真っ直ぐな目………初めて人に惚れた結果がこれってダセーと思ってたが………撤回すんぜ………」


ドレムは困った顔をしながらバタ、と崩れ落ちた。


エレーナはドレムの肉体が崩れるところをただ眺めることしか出来なかったのである。





 過去を見終わったドレムは、どうやらその表情に迷いが消えていたようだった。


(………そうだ、内側から魔界を変えたかっただけだったんだ………けれどその中でエレーナと会って………魔王達に信用されて、部下達からも気楽に接する事が出来て………漸く、腹決まったぜ!! 完全に!!)


「フン………迷いは晴れたか? ドレムよ………」


問いかけにニヤ、と笑うドレムはこう答えた。


「自分の過去、思い出してよかった………お陰で進めそうな道、進めそうだぜ!! 必ずティタノゾーアを討つ!!」


「なら良い。扉を開けて先に進め。女勇者が待っておるぞ。」


吹っ切れたドレムに安堵の顔を浮かべ、愛弟子の成長を目の当たりにしながら次へ向かっていったのであった。





「よく試練を突破した。そして最後の試練は…………」


2人が固唾を飲む。


何が一体あるのか____それを答えたのは喋っていたシスノガータだ。


「この私と戦って勝つ事だ。」

次回、試練編最終版・シスノガータ戦開幕。

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