第38話 疼く古傷
今回はエレーナの回。
また悪夢を呼び覚ます展開になりますが、エレーナがメンタル的に成長する回でもありますので、濃く書きたいと思っております。
試練の扉を開けたエレーナ、するとそこに広がっていたのは_____
赤紫の肌をした大男と、エレーナにとっては懐かしい後ろ姿があった。
(!? ど、どういうこと………!? な、なんで………皆んながいるの………!?!?)
「過去を見せる」、という事は事前に言われていたものの、黒く靄のかかった夢と違いここまで鮮明に映像が映るのにはエレーナにとってはまるで過去にタイムスリップをしたような感覚に陥った。
そう、この過去はティタノゾーアと仲間と共に対峙した時である。
「クハハ………よくここまで来たな、勇者一行よ………悪いが、あの世へと還ってもらおうか。誰から殺しても良いが………誰から行こうかのぉ? 剣士の男か? 魔法使いの娘か? メガネの僧侶か? それとも………勇者エレーナ、貴様か?」
余裕綽々のティタノゾーアだが、エレーナ、ウォレス、リアーラ、フランの4人はそれぞれ武器を突き付け、こう同時に言い放った。
「「「「お前が消えろ。」」」」
これを見たティタノゾーアは一瞬目を丸くし、ニッと笑い高らかに笑った。
「クク………ハハハハハ!!! 何をおかしな綺麗事を吐かすかと思えばその口上か!! この余を相手に面白い奴らだ!!」
「………何がおかしい?」
エレーナが怪訝そうな表情でティタノゾーアに問う。
「なに………この余を倒せた者は1人としておらぬ。何故なら………すぐに終わるからだ。だが勇者エレーナ、このような心強き仲間をここまで率いたこと………それを褒めて、絶望を与えてやろう。」
そう言ってティタノゾーアは右腕をゆったりと上げた。
「貴様の前で、仲間を瞬きする間もなく殺してやろうぞ。ここまでの努力が水泡に帰すかのように!!」
「ヤバい!! みんな避け_________」
エレーナが危機を察知した時にはもう、時既に遅し。
一瞬だけ、3人の断末魔が聞こえてきた。
その方向を振り向くとそこには、信じられないような、目を覆いたくなるような現実がそこにあった。
仲間の3人は、地魔法で下から頭を貫かれ、一瞬で絶命していたのだから。
「う、嘘………でしょ………??」
「どうだ、勇者よ………これが『絶望』と言う名の『現実』だ………身に染みて分かっただろう? 余の恐ろしさを………」
ティタノゾーアが悪どい声で告げている時にはエレーナは膝から下の力が抜けていた。
「あ…………あぁ……………あああああああああああああァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!!!」
自然と、涙も溢れていた。
それと同時にエレーナは、発狂したような声を発していたのであった…………
ここで幻覚という名の映像がエレーナの前から消え、霧だけが残っていた。
先ほどの試練と同様の幻覚の霧だけが、エレーナを覆っていた。
そしてエレーナは、というと………両膝を突き、剣を両手で掴んで切先を立て、動悸のような荒い息を立てていた。
(何回見ても怖い………!! ドレムのお陰で見なくなっていたと思ってたのに………!! まさかまた………!! この期に及んでハッキリ見ちゃうなんて思わなかった………!!)
再び呼び起こされたトラウマ、そしてそれを見せた試練官であるシスノガータの声が聴こえた。
「それが貴様の過去だ、勇者よ………確かに仲間を一瞬で、それも目の前で命を落とされては脳裏に焼き付くであろう。」
「そ、それは………そうよ………全く見えなかったもの………」
「またそうやって言い訳をしておるな?」
ハッキリとした叱責、エレーナは顔を上げ、ビクッと身を震わせた。
「貴様の過去の本質はこうだ、『勇者である自分が目の前で仲間を殺されているのに何も守れなかった事を自責の念を抱いている』。それを『見えなかった』と正当化するのは簡単だ、だが見た上で気付いた事を思い返して見よ。あの初撃は防げた事ではなかったか?」
「………防ごうと思えば防げた、確かに………アンタの言う通りよ。でも攻撃した所で間に合ったのかも分からないし………思い付いた事はあるわ、だけど………防げる確証がない、それくらいに速すぎて分からない………」
「なら、過去に同機してみよ。」
「………成る程、物は試し、ってことね………」
気弱になった心にムチを打つように、エレーナは納得したように立ち上がった。
過去に立ち向かう覚悟を決めたようだ。
「そういう事だ、口だけなら幾らでも言える、話が早くて助かるぞ、では早速もう一度見せる。だが今度は貴様がその幻影に入り込んでやる、という事になる。いいな?」
「上等!!」
勝気なエレーナに戻り、再度シスノガータは過去映像を流した。
エレーナは何度も何度も、跳ね返されながらも少しずつ「初撃の段階」に対応していくのであった。
30回を数えた所、エレーナは完全にティタノゾーアの攻撃に対応できるようになり、一斉に“仮想の”仲間と総攻撃を仕掛けた。
死闘を繰り広げ、現実では封印しか出来なかったものの、首を刈り取れるまでにティタノゾーアを弱らせる事が出来た。
(行ける!! ここだァァァァ!!!)
勇者の紋章を輝かせ、剣に乗り移らせた技を繰り出して首を斬り落とした________その直後だった。
(え!? き、消えた………!?!? 一体どこに_______)
エレーナは動揺して背後を見たが、そこには何もなかった。
霧もいつの間にか消えていた。
(お、終わったの………?? と、いう事は………過去を、超えた…………!!)
疲労感からか安堵感からか腰を落としたエレーナ、その目には自然と涙が溢れていたのであった。
「おめでとう、勇者・エレーナよ………貴様は過去を越え、一皮剥けた………貴様に関してはティタノゾーアへの恐怖心を拭い去る必要があった、だからこんな試練を用意した。」
「………そんな事だろうと、思ったわ………でも、それだったらドレムって______」
「試練の内容はお前には明かせぬ。今はまだ、な。」
シスノガータから思いがけぬ事を言われ、エレーナは思わず天の声に向かって激高した声を放った。
「ふざけないで!! ドレムは私の悪夢を抱えてくれたのよ!! なのに私だけ!! ドレムの事、何も知らないのはズルいじゃない!!! 私は………!! ドレムのことを____」
「ごちゃごちゃ言わずにあのバカを待て。試練を完全に突破した後で彼奴から幾らでも聞けばよい。」
シスノガータに諭され、声の気配は消えた。
だがエレーナは、もやもやした気持ちを抱いてしまっていた。
(なんなのよ、ホント………!! そんなに私に言えないようなことなの? あの軽い調子のアイツが………!! ま、いいわ………幾らでも聞くわ、シスノガータを倒してから、ドレムに全部………!!)
過去を超えたという自信、そしてドレムに抱く焦燥感を胸に、エレーナは最後の試練へと臨むために扉を抜け、ドレムを待つ事にしたのであった。
………なんて言うんでしょうね、ドレムに惚れてますね、エレーナはwww
次回はドレム単体でお送りします。




