第37話 夢幻突破の試練
この作品、投稿する事自体が久々。(待っていた方には申し訳ない)
ほぼ一年ぶりですが、短編の連載版を書きたいので暫くガッツリやりたいと思います。
エレーナとドレムは第4の試練に突入する。
シスノガータからの説明によると、「本物かどうかを見極める試練」とのことで、要するに“本体を見つけてワンパンしろ”という事だった。
2人は内心で楽勝だろ、と思っていたが………実は最も試練の中で面倒なことに気付くのは後になっての話なのである。
さて、試練の間に突入した2人。
現れたのはメタリックに輝いたメタルスライムがなんと10体。
これの何処が試練なのか………と思ったのだが、メタルスライムは2人に果敢に襲いかかって来た。
エレーナはハァッ! と声を発するとともに剣を振るっていき、ドレムも追随するかのようにダガーを振るい反撃を返した。
しかし。
2人がメタルスライムに反撃した瞬間、メタルスライムが霧のように消えてしまったのである。
「ええ!? ど、どういうこと!? 偽物ってこと!?!?」
エレーナは困惑したようにストレートな感想と共にメタルスライムの方を見た。
「そうみてえだな、エレーナ………!! まったく、かったりい試練を用意してきやがったな、シスノガータ様もよぉ………!!」
ドレムも内心苛ついているようだった。
それもそうだ、「幻覚を見せる」ことは彼にとっては「十八番」なのだから、屈辱もいいところである。
「同感ね、ドレム! こんな面倒な試練とは思わなかったけど………!! これで行くわ!!」
エレーナは剣に雷を溜め、「せええい!!」と叫ぶと同時に一気に薙ぎ払った。
だが先程と同じようにメタルスライムたちは霧のように消え、しかも増援が来るかのようにメタルスライムが増殖した。
「………はああああ!?!? 増えた、ってどういうこと!? 本体は別にいるってこと!?!?」
「………いやエレーナ、コイツぁ………そんな単純じゃねえ。相手にするべきはメタルスライムじゃねえみてえだ。」
「???? ど、どういうことよ???」
「そもそもメタルスライムは増殖するモンスターじゃねえ、つまり………相手にすべきはメタルスライムじゃねえ、幻覚を見せている『別の何か』だ。ソイツを叩かねえと永遠に突破出来ねえぞ、コレはよ………」
「ホント、上手く出来てるわね、流石にティタノゾーアの弟なだけあるわ………そうと決まれば探すわよ、ドレム!!」
「お安い御用だ、勇者サマ。」
2人はメタルスライムを無視して「本体」を探すことを開始したのであった。
一方、別の場所から見ていたシスノガータは。
「ほう………流石に本質は見抜いていたようだな、ドレムよ………だが、本体はかなり強化してある、巻き込まれればひとたまりもなかろうな………」
2人に関心はしていたものの、彼はまだ「別の仕掛け」を用意していたようであった。
「………ッッッ〜〜〜〜〜!!!! ホント、キリ無い!!! どんだけ沸いてくんのよ、これ!!!」
本体を探しつつも次々と現れてくるメタルスライムを霧にしていくのだが………エレーナは案の定、苛立ちを隠せずに眉間がまるで怒髪天のようにシワがよっていた。
「ま、焦るこたぁねえだろ、エレーナ。だいぶ分析はできたからな、今の現状について。」
「げ、現状??」
「まずは………この部屋自体が『幻覚を見せる霧』で充満している、しかも自然発生じゃねえ方法でな。俺たちの精神状態は正常、幻覚ってのは正常状態だと見ねえモンだ。つまり………常に霧を発生させ、幻覚を見せる魔法を使うモンスターがいる。俺たちは今、コイツを探してる最中だ。」
「なーるほどね………はーあ、こういう時にフランが居てくれたら、この状況も打開できるのになぁ………」
エレーナは昔を懐かしむように、ため息を吐く。
「そう言うな、終わってからにしとけよ、思い出すの。めんどくせーが………やるっきゃねえな、コイツで!!」
ドレムはそう言って、闇魔法『闇の大穴』を繰り出した。
ズズズズズ…………という鈍い音と共に、霧が吸い込まれていく。
が、しかし緊急事態が発生した。
なんと、闇魔法が吸収されたのである。
だが、ドレムは冷静だった。
「………なるほどな、本体はそこ、か………」
「い、今ので分かったの!?」
「ああ………どうやら属性魔法を吸収するヤツみてえだな。方角は北北西、一気に行くぞ、エレーナ。」
「分かったわ!!」
エレーナは猛ダッシュで目的地まで向かっていった。
ドレムも後に続く。
到着すると、ワインレッドの機体のモンスターが何やらミストを放って待機をしていた。
「ドレム、提案があるわ。」
「なんだよ?」
「私の勇者の力をアンタに貸すわ、だから2人で倒すわ、コイツを!!」
「………いいのか? 俺に扱える代物じゃねえぞ?」
「一瞬だけだから問題ないわ!! じゃ………!! 行くわよ!!」
「オウ!!」とドレムが掛け声を出し、2人が力を合わせて叩き割りに掛かった。
バキィン!! とコアが砕ける音がした、しかし次の瞬間だった。
ビーーーーッッッ!! ビーーーーーーッッッ!!! という警告音が鳴ると同時に、メカがワインレッドから魚を〆て血が引くかのようにオレンジに変色した。
そして金属の物体ではまず有り得ないような、風船のような膨らみ方をした。
「!!! ドレム!! 離れて!!!」
エレーナはドレムを抱えてメカから即座に離れた。
その2秒後、メカはキノコ雲を放出して天変地異が起こったかのような大爆発を引き起こし、エレーナとドレムを巻き込む形で大きく広がっていったのであった。
爆発が収まり、エレーナが顔を上げてドレムを見やる。
「イテテ………ドレム、大丈夫?」
「なんとか、な………ほんっとによぉ………本気で殺しに来やがってよ、あの人は………一瞬でも遅れてお前が突き飛ばしてなきゃ死んでたぜ、俺ぁ………」
「………これで4個目は突破、でいいのかな?」
「だといいが………」
ドレムが疲れたようにため息を吐くと、見計らったかのようにシスノガータが姿を現した。
「おめでとう、これで四つ目は突破したな。」
「………それで、次の試練は何?」
「まあそう急くな、これを見よ。」
シスノガータがバッ、とマントをたなびかせ、身体を半身にしてその方向を指す。
すると扉が何故か2つあった。
「つまり………こういうことか? “1人別々の試練を受けろ”と。」
「左様。その名も『苦心の試練』。己の内なる記憶に目を向けろ、というものだ。」
苦い記憶、つまりはエレーナにとってはトラウマとなっているティタノゾーアにウォレス、リアーラ、フランを眼前で瞬殺された記憶を呼び覚まさせる、ということに他ならない。
エレーナは少し俯いた。
だが我関せずにシスノガータは続ける。
「だが、この試練は2人突破して二つの試練を乗り越えたことになる、心してかかるが良い。」
そう言って、また霧になってシスノガータは姿を消したのであった。
「………エレーナ、大丈夫か?」
「………大丈夫………って言ったら嘘になるかな、正直………怖いよ、でも向き合わなきゃダメなのも分かってる………乗り越えなきゃいけない壁、だから………」
なんとか気丈に振る舞うエレーナだったが、剣を握っている腕がガタガタと心なしか震えていた。
ドレムはそっと、エレーナの手を握った。
「エレーナ、約束する。俺は絶対、お前の元から居なくなったりなんかしねえ。生きて、最後の試練でまた………」
「………そうね、アンタなら不思議と大丈夫な気がするわね………信じるわ、アンタなら絶対生き残ってくれるって!!」
エレーナの表情から強張りが取れ、笑顔が浮かぶ。
ドレムも頷き、グータッチを交わしてそれぞれが向かうべき“記憶”へと足を運んでいくのであった。
次回はエレーナサイド。




