第17話 「嫉妬」の魔王・エンヴィラス
今回はオトナの話。
エンヴィラスはクセ強いヤツなんですけど、認められるところは認められる、観察眼の優れたヤツです。
ちょっとツッコミ所多いかもしれませんが、あんまり気にしないでくださいww
2人はナチョスを出て、「ディアボロ」へと向かっていた。
「嫉妬」を司る魔王・エンヴィラスの元へと向かうためだ。
エレーナはドレムに、ファスティアのようなことが無いかを聞く。
「……ねえ、ドレム……正直エンヴィラスにいい印象はないんだけど……アンタから見てアイツはどうなのよ。」
「正直そこまで接点があるってわけじゃねえからな、俺もアイツとは。……まあ気難しいやつだからな。エレーナとの仲をアピールするわけにはいかねーし。最悪……無理矢理にでも俺のことを聞いてもらうさ。」
「……まあ、嫉妬って名乗ってるくらいだから……猜疑心は強そうだしね、アイツ……」
「変なヤツだけど繊細だからな、根っこは。ナルシストでいるのはそのためじゃねえか?」
「かもねー……」 (アンタが「変人」って言うな!!)
段々とドレムのことを知ってきたつもりだからこそ、エレーナは声を大にして突っ込むことはしなかった。
数時間後、2人は「ディアボロ」へと到着したのだった。
山道を越えた先が、高層ビルが立ち並ぶ街並みだったからだ。
少なくともアルタルキアでは見られないものだ。
「ここは物作りが盛んで……器用な奴らが多い。まあでも、数年前まではこんなんじゃなかったんだぜ?」
「? どういうこと?」
「3年前、か……『ケンブリッジ』っていう鉱石が発掘されてからな……街が発展していったんだよ。羨ましいぐらいに。ディアボロでしか採れねえ鉱石だからこそ、発展できたんだよ、ここまで。」
ケンブリッジとは、軽量且つ頑丈な金属鉱石で、扱いは非常に難しく武器には向かないのだが、建造物では大きな真価を発揮することになる。
骨組みから家の壁まで、何にでも使えてしまうのだ。
しかもザクザク取れるので、思いの外重宝されるのだ。
「……とはいえさ、ドレム。アイツはどこにいるのよ、エンヴィラスは。」
確かに(この世界にとっては)近未来的な場所だ、根城にしているところが分からない。
エレーナはそういった意味を込めてそう聞いた。
「もうちょっと歩くなぁ、これは……」
ドレムはぶっきらぼうにそう言った。
こうして歩くと、階段があるビルにたどり着いた。
「ここの地下だ。その先のBARが……アイツの本拠地だ。」
「BAR???」
「ホラ、とっとと行くぞ。……ま、お前には刺激が強えかもしれねえけどな。」
「はあ? 何よ、アンタ。」
2人は階段を降りていくのだった。
カラン、カラン。
BARのドアが開いたと同時にベルが鳴った。
「よっ、久しぶりだな。」
ドレムが陽気に挨拶する。
その視線の先には、緑の肌のエビルプリーストの男がいた。
「ドレムか。……相変わらずボクが嫉妬するほどの……良い男だねえ……」
ナルシスト口調のエビルプリースト、それが「嫉妬」の魔王、エンヴィラスだった。
「そういうなよ、ヴィラ。……魔界の命運を賭けた……大事な話があんだからよ?」
「ドレム……それはいいが……何故女勇者も来ている? そもそも何故人間がここにいる?」
「どうでもいーでしょ、それは。とりあえずお酒頂戴。」
エレーナは躊躇いなく注文をした。
ドレムも例に倣い、酒をオーダーしたのだった。
酒も入ったことで、3人は話が弾んでいった。
その中にはティタノゾーアの件も含まれていた。
「なるほど……ファスティアの遣いから話は聞いていたが……そういうことだったのか。」
これを聞いたエンヴィラスは、納得した顔を浮かべていた。
「納得してくれたようで何よりだぜ、ヴィラ。……最悪、力付くで言うことを聞いてもらおうと思ってたからよ?」
「それよりもさ……ここ、エンヴィラスが経営してるの?? 酒場にしては豪華絢爛というか……」
「まあな。ボクがいない間は部下に任せていたりしていたから……」
「ふーん……まあでも……美味しいわね、魔界のお酒も。」
エレーナはそう言って、カクテルのグラスをクルクルと回した。
「喜んでくれて何よりだ。人間なんてほぼ来ないから……口に合ってよかった。」
「……ヴィラ。お前よ……俺に何か言いてえんじゃねえのか?」
「なんだよ今更。ボクは君と随分と喧嘩をしてきたじゃないか。」
「そうじゃねえよ。ティタノゾーア様に対してだ。大魔王に最も忠実でいなければいけねえ眷属の魔王が裏切るって……特に俺が裏切るってことに対して……何もねえのか?」
エンヴィラスは少し考え、酒を一気に飲み干し、部下に酒を注いでもらった。
「確かに君が裏切ると聴いた時は内心驚いたさ。だがみんな……同じことを言っているよ、魔王のみんなは。」
「……なんて言ってるの? エンヴィラス。」
「ドレム、君は頭がキレるし……柔軟な思考を持っている。それでいて……誰よりも優しい。誰かのことを常に考えられる魔王だ、ってね。」
「……あ? 何、照れ臭えこと言ってやがる……嬉しくはねえよ……」
「ドレムに関しては……自分よりも民の目線に立って考えられている。どこまでも真っ直ぐで、それでいて柔軟に物事を考えられる。少なくとも、ボクにはできないことだ。それを客観的に見て分かっているからこそ、ボクは君に嫉妬している。だから今更反対意見なんて、ボクは言わないよ。」
「……じゃあさ、それって……」
エレーナは意外や意外なことに、目を丸くした。
「勿論、ボクは承諾するよ。ボクの魂の半分をドレムに差し出す、だっけ?」
「ああ。その通りだ。シスノガータ様に挑戦するには、テメエらの魂を俺が代表して預けて……『試練』に挑戦すること、これが絶対条件だからな。」
「それはよく分かった。今更馬鹿正直なドレムを疑う理由はない。だから……着いてきてくれ。解決して欲しい問題がある。それが終わったら約束の物を渡す。」
エンヴィラスは席を立ち、階段を上がっていった。
「……オイ、金はいいのか?」
ドレムは酔った顔で店員に代金の券を尋ねる。
「エンヴィラス様の来賓、とのことでしたので……サービスでございます。」
「……ったく、ホント素直じゃねえヤツ。俺が普段来る時は……マジで金貨死ぬほど飛ぶってのに。」
ドレムはエンヴィラスに対して、良い意味で悪態を吐きながらドアを開けて階段を上がっていった。
「待ちなさいよ、ドレム!! あ、お酒ご馳走さま!!」
エレーナも慌てて後を追い、BARを後にしたのだった。
2人が外に出た頃、エンヴィラスは風に当たり、一休みしていた。
「すまないね、急にこんな話をして。ささ、着いてきてくれたまえ。」
3人は一体何処に向かうのか、ここから意外な展開を迎えることとなるのだった。
次回は依頼に挑戦します。
果たしてエンヴィラスの依頼とは一体何なのか、お楽しみくださいませ。




