第16話 忠臣の嘲り
この回は、エレーナの漢気を見せる回です。
エレーナは孤児院へと飛び込んだ。
煙が撒き散らされている中、子供達の捜索及び救助を行わなければならなかった。
薄暗い場所で煙もあって視界がぼやける。
勇者の紋章の光があるとはいえ、火災を舐めたら命取りだ。
時間は長くは取れない。
(くそっ……!! どこ!? 子供達は……!! 早く助けないと命が危ない……!!)
内心で焦っていたエレーナ。
無駄な時間を使うわけにもいかない。
考えながら捜索をしていった。
エレーナは考えて捜索しながらも、子供達の声がなかなか聞こえてこない状況下に追い込まれていた。
熱で溶けているドアノブ、エレーナは苛立ちながらもドアを蹴破って捜索していった。
ようやっと、1人目の子供を発見した。
エレーナは、大丈夫? と小声で囁く。
その男の子はコクン、とひとつ頷いた。
エレーナは子供を連れ、脱出しようとしたが……目の前が火に包まれていた。
だが早くしなければ他の子供達の命が危うくなる。
「おねーちゃんに……しっかり捕まってなよ!? ……行くよ!?」
子供を抱えたエレーナは、思い切り床を蹴り出して、猛ダッシュして火の中を猛然と通り抜けていったのだった。
やっとのことで1人目を助け出せたエレーナは、ファスティアに着いてくるように促す。
「ファスティア!! 早く来て!! アンタの大事な孤児院なんでしょ!?!? 子供達の命を守らないでどうするのよ!!」
「……ッッ……!! そうだな、妾としたことが取り乱してしまったな……! すまない、エレーナ、ここからは共に行こうぞ!!」
ファスティアも火の中に飛び込んだことで、壮絶な救出劇が幕を開けたのだった。
一方、犯人捜索に出かけたドレムは。
(犯人はまだ近くにいるはずだ……!! 絶対に逃がしゃあしねえぞ……!!)
山中を捜索していたところ、ファスティアと同じ紫色の肌をした、フードを被った男が下山していくのを目撃した。
(絶対コイツだろ!! いかにもすぎるわ!! 絶対とっ捕まえてやらあ!!)
ドレムはそのフードの男に向かって襲いかかった。
「テメエか犯人はーーーー!!!!」
そう叫びながら男を絞め落とし、孤児院の方へと戻っていったのだった。
一方、エレーナとファスティアは、子供達を全員救出することに成功したのだが、孤児院は案の定全焼となった。
「ありがとう、ファスティア……助かったよ……」
「いや……私の方こそだ。お前が奮起してくれなければどうなっていたことか……」
2人は精力使い果たしたかのようにグッタリと息を吐いた。
「おう、お前ら……無事だったか。」
「ドレム……ソイツは?」
「ああ、放火魔をとっちめたよ。………って……」
ドレムが男のフードをさりげなく外したのだが、その人物がまさかの人物だった。
「オイ……嘘だろ……?」
その正体は、ファスティアの若き忠臣「ギルティ」だった。
これにザワっとした怒りを携えたのはファスティア。
彼を問い詰めていく。
「……貴様……此度のこと、自分で何をしたのか分かっているのか……?」
ギルティはニィッ……と意地汚らしく笑う。
「私はある日見てしまったのです……!! ファスティア様が……!! 職務の合間に行き場のない子供達と遊んでいる姿を!! ファスティア様はこの地の王!! 外では暴虐でなくてはならぬ存在なのですぞ!? 私は……!! ファスティア様をそうさせたかっただけなのですから!! アーーーーッハッハッハッハ!!!」
高尚に、高らかに笑うギルティ。
とても民の支持が高かった男の面影はどこにも無かった。
「……ドレム……脚を押さえておれ。此奴はこの場で……!! 即刻処刑とする!!」
ファスティアが斧を振り上げた瞬間、エレーナは子供達を庇うように抱きしめた。
見てはいけないものを見せてしまうからだ。
ファスティアは斧を振り下ろし、ギルティを真っ二つに叩き割った。
ドレムが脚を離すと、ギルティの身体は左右に崩れ落ちたのだった。
「……すまないな、お前達……助けられた。」
ファスティアは柄にもなさそうな顔でドレムとエレーナにお礼を言った。
「……ま、お前がアイツのことを信頼していたのは分かるぜ。だから……気に病むな。お前らしくねえぞ、ファスティア。」
ドレムがファスティアに励ましの言葉を掛ける。
エレーナも同様だった。
「孤児院もさ……また新しく作り直せばいいじゃない。前向きになりなさいよ、私みたいに。」
「……世話をかけたな、2人とも。」
「……じゃ、達者でな、ファスティア。魔界に平和を齎して……その時には酒でも飲もうや。」
こうして2人は、次の交渉相手である「嫉妬」の魔王・エンヴィラスの元へと出立していったのだった。
次回はエンヴィラスと出会う回。
登場人物紹介の方も更新します。




