第15話 不器用な恋心
この回はエレーナがドレムのことを語る回。
ドレムの話題になったエレーナとファスティア。
話を振られたエレーナは、思い出しながら話す。
「ホント、1ヶ月くらい前なんだよね、アイツが私の部屋に急に訪問してきてさ。それも窓からだよ!? 信じられる!?」
「無断訪問か……まあ、妾もそうやられたら烈火の如く怒るであろうな。」
「ね!? わかるでしょ!? ファスティア!! でもさ、アイツに怒鳴る気力もなかったんだよね、その時。」
「ほう……何故じゃ? エレーナの気性なら殴り飛ばしても仕方ないじゃろうに。」
「その時はさ……仲間を失ったばかりで……自殺ばかりしようとしててね……外に出る気力もなかったんだ。」
「むぅ……確かにそうじゃな、人間が単身で……ドレムが居たとはいえ、こんな魔界になんぞ乗り込んでくるわけがないからの。そういうことだったのか……気の毒に、な。」
ファスティアは、ドレム曰くまともとだけあり、こういった部分は割としっかりとした考え方を持っていた。
気遣いや気配りができるのもカリスマ性を秘めている証でもある。
「でさ、ドレムは『俺をエレーナの従者にしてくれ』、なんて言うんだよ!? 身勝手も甚だしいわ!! ……まあ、お陰で色々助かったけどね? 家事全般さ、色々してくれたし。」
「……意外じゃな。彼奴はそんな家事などするような輩には見えんかったからの。確かに器用な奴じゃ、だがまあ、エレーナもよくわかっておろう、彼奴が超が付くほどの自由人であることを。」
「ホント勝手なことしか言わないし、しない奴だからね……そんな奴とよく付き合えるなって思うもん、私でも。……でもアレかな、転機はケンカした時かなー……アイツを受け入れるようになったのは。」
「ケンカしたのか、彼奴と。」
「ケンカした時ねー……ホントくっだらないことだったからね……今思ったらさ。仲間を失ったことを引き摺ってた私と……ドレムの未来を見て生きろっていうのがぶつかってね……殴り合いだよ、本気でケンカしちゃってね。それでアイツがキレて窓から出てったからなー……」
「彼奴を怒らせるなぞ、よっぽどじゃぞ?? 滅多なことで怒らぬからな、ドレムは。」
「でさ、翌朝だよ?? アイツ、イノシシの角煮作って置いてたのよ。好きに食えって言わんばかりに、さ。それ食べた時バカバカしくなっちゃってさ、ウジウジ考えてても仕方ないなー、ってなっちゃって。その後は私から頼み込んで今に至るってわけよ?」
「そうかー……まあ、悪いヤツではないからの。良いのではないか? エレーナ。」
ファスティアは、お盆に乗せた酒をグイッと一つ飲み干した。
「何よ、良いのではないか、って。」
「お主の伴侶に、という意味じゃよ。一緒にいて思うことも色々あるじゃろう?」
「ま……まあ、そりゃあ、あるわよ……」
「彼奴は確かに自由人じゃ。頭もキレるしな。じゃが、ああ見えて一途なヤツじゃ。彼奴はティタノゾーア様にガキの頃に命を救われて、それを恩義に感じておる。ああいうヤツだからこそ……間違いに気づいた時、相当葛藤したのじゃろうな。そんな目をしておったが、エレーナがいれば彼奴がブレる心配はない。だからエレーナがブレたらダメじゃ。お主がブレれば彼奴が迷走する。だからこそエレーナがドレムを支えてやれ。頼られがちな分、彼奴は人に頼りたいタチなんじゃよ。だからその役割をエレーナが担え。」
「そっかー……アイツ、迷ってたんだな……本音は………だからああやって強がって言ってたのか……」
エレーナは一つ呟き、天を見上げて息を吐いた。
「わかった。もうちょっとだけ、考えてみるよ。アイツとずっと居ていいのかどうか。……じゃ、先上がってる。」
エレーナはそう言い残し、風呂場から出て行った。
これを見たファスティアは、酒をお猪口に注ぎ、飲み干した。
「フフ……不器用な奴め……本心ではドレムのこと……好いておるじゃろうに。」
ファスティアのその呟きには、二人の恋路を見守る母親のような声色をしていたのだった。
翌日。
ドレムとエレーナは、ファスティアの部屋に居た。
「本当に出立するのじゃな?」
「ああ。世話になった。次はエンヴィラスを説得に行くつもりだ。」
エンヴィラスとは、『嫉妬』を司る魔王で、エレーナの勇者一行が初めて対峙した魔王だ。
ナルシストな男だったという印象がある。
しかも変則的な攻撃を使ってきていたので、経験値不足だった当時からすれば、厄介な敵だった。
気難しいところから行くのだな、ということをエレーナは思った。
「ドレム、気をつけよ。エンヴィラスはお主を誰よりも嫌っていることを忘れるでない。」
「万が一の時にゃ、無理矢理にでも聞かせてやるさ。心配すんなって。」
「……まあ、大義名分はあろうな。エレーナという、な。」
「そういうこったぁ。それじゃ、ファスティアの魂の半分、預かっておくぜ。」
こうして二人は、ファスティアの屋敷を後にしていった。
エンヴィラスのいる「ディアボロ」に向かっていたところ、何故かドレムは山を登り始めた。
「……どこ行くの?」
「ちょっとお前に見せたいものがあってな。……驚くなよ?」
「?? まあ、いいけどさ……」
言われるがまま、エレーナはドレムについていき、登りきって辿り着いた先は。
何やら大きい建物だった。
「絶対バレるなよ??」
「だから何よ……って………」
エレーナが見た光景のそれは。
ファスティアが子供達と遊ぶ姿だ。
「これって……!!」
「そう、孤児院だ。……ナチョスってのは、孤児が多くてな。……特に、ああいう山道は。意外だろ? あんな無骨な女が、ガキが好きだっていうのが。仕事の手が空いた時……ファスティアはああやって子供達と遊んだりしてんだよ。……アイツも元はここの孤児院を出てる。その恩もあるんだろうな。」
「……私の子供の時とは大違いね……」
「まったくだ。羨ましいぜ、あのガキどもが。」
ファスティアが手を振って別れ、孤児達が孤児院へ全員中に入った時だった。
ファスティアがドレム達のいる草むらに歩み寄ってきた。
「……そこにいるのはわかってるぞ、出てこい。」
「チッ……気づいてたのかよ。」
「……お前が分かりやすいだけだ、ドレム。まあ、部下には見せられぬな、この姿は。」
「そうだな……お前の忠臣の『ギルティ』が見たらどう思うか、だな……」
「アイツなら今頃仕事に……」
と、その時だった。
ファスティアの後方から爆発が聞こえてきた。
と、同時に孤児院が燃えていた。
「なっ………!!! 何が起こったというのだ!!」
ファスティアが膝を地面に突いた。
愕然としてしまった。
「マジかよ……消火まで時間かかるぜ、あの火の燃えようは!!」
ドレムも焦っていた。
子供達を早く助け出さなければいけないが、この火では突入も難しい。
なんとかしなければ……焦燥感が魔王2人に宿る中、エレーナが前に出た。
「私が……助けに行く!!」
「オイ!! 危険だぞ!? 下手したらお前も……!!!」
「この危機的状況で飛び込まなくて……何が勇者よ!!」
エレーナはそう言ってドアに向かって走り出し、体当たりでこじ開けた。
(クソッタレ……無事でいろよ、エレーナ!! 誰だ……!! 誰がやった!? 犯人を探しに行かなければ……!! ファスティアに恩を返せねえ!!)
ドレムはまだ近くにいるはずだ、と感じ、東側へと走って行ったのだった。
その頃、エレーナは。
(クッ……思ったより煙が濃い……!! 何処!? 子供達は!! 早く見つけないと命が……!!)
その時、左手の勇者の紋章が光った。
(助かった……!! これで見つけ出せる……!! 待ってて、必ず助け出すから!!)
エレーナの命懸けの救出劇の始まりだった。
そして展開は、思わぬ事態を迎えることとなった。
「孤児院全焼事件」は、某ゲームのアレを参考にさせていただきました。
次回はエレーナが漢気を見せます。
お楽しみくださいませ。




