第78部 Wツインズ の 登場!
1952年12月(昭和27年)エストニア・首都タリン
ハバロフスクはゆっくりと、ギロチン台へ行き、ドロンと交代した。綾香もギロチン台が良く見える所へ進む。
そこには、 まさにギロチン台に首を挟まれ、落ちる刃に繋がるロープはハバロフスクにより、斧で切られようとしていた。
「さ、どうするかね。このまま首を落とされたくなければ・・・」
「分かったわ、捕縛して。もう逆らわないわ!」
「ほほう、そうして頂けると、私も助かりますね」
「どうして助かるのよ」
「サイコパスの指数が、300を超えないのですよ。300を超えたら私は、何をするかが、自分でも分からないのです」
「ええ?」
「そうですのよ。かのイカレ所長が一番困るのですもの」
「何よ、あんたがイカレているのは分かるわ! あっ、イカレ所長と今言いましたか」
「そうですよ、かの有名な石井ですよ。もうお分かりですね?」
「・・・・・・」
「そうなんですよ。秘密を教えてしまったから、もうお前とはお別れです」
「彩香! ごめんなさい。一緒に死んで!!!!」
「ファイヤー・バードスプラッシュ!」「ファイヤー・バードスプラッシュ!」
「ファイヤー・・・・・・バード・・・・」
綾香は立て続けにサイコパスのハバロフスクに向けて、2発の魔法を放った。3発目は声にならずに不発に終わる。
ドロンは綾香の魔法を簡単に打ち消してしまう。
綾香はその場に泣き崩れてしまった。彩香はそんな綾香を見たくは無い。
「いいのよ、綾香!気にしないで・・・・。来生で逢おうね」
「それでいいのですよ、それで。」
「それで、このレイピアに触れて下さい。ただ、それだけで良いのです」
「彩香! 綾香! レイピアに触ったら、ダメ~~~~~」
クライは泣きながら叫ぶ。ハバロフスクは叫ぶクライの口に、
「うるさい、この布を咥えていろ!」
布を丸めて押し込んだ。
「う、う。うぐぐぐ・・・」
彩香と綾香は、紫とピンクの力を差し出した。宝石は手元にあるが、お互いはレイピアの意味が判らなかった。
「狼狽共め!慌てふためきおって。オオカミもこれでは形無しだな」
「ほれ!お前は逃げてよろしい。大巫女を呼んできておくれ!」
*)狼=狽=オオカミ。
「彩香~、クライ~。絶対に助けに来るからね~」
綾香は泣きながら走って助けを求めに行った。
人は守りきる希望の後に受ける絶望には、耐えられない。少数の攻撃をさせて攻防に希望を持たせる。途中から最大の攻撃を仕掛けて一気に絶望へと誘う。by ハバロフスク
遠くから綾香が走って来るのを見たドロンは、女に声をかける。
「女、引くよ。ここはもう終わりだ」
「ドロン・女! こら、逃げるのか!」
「いいえ、逃げませんわ。あなたたちに作戦会議の時間を差し上げるのですよ。オホホ・ヒホ~~~~」
笑いながら人狼巫女は消えてしまった。そこに綾香が息を切らせて到着した。
姉の澪霧は、綾香の様子が違うのに気づく。また、彩香がいない。直ぐに綾香の元へテレポートした。
「どうしたの ?彩香がどうかしたの?」
「ぜー、ぜー!」
「そうなの、良く分かったわ。向こうで休んでいてね」
澪霧は無言の綾香から、事情を理解した。
「みんな~、母の元に集まって~~~~」
綾香はもう母の桜子に抱きつき泣いている。
「みんな、大変よ。クライと彩香が捕まっているわ。それに、それに妹たちの力が奪われてしまったの」
桜子は、はっとして綾香の顔を見た。
「そうかい、そうかい、辛かっただろうね。もう大丈夫だよ。母がまた巫女の力を授けるよ。少し待ってておくれ」
そう言って桜子は気合を入れる。
「どっこいしょー。さ! 戦争よ。負けたのよ。次はカーツ!」
「お母さん、あのハバロフスクは母さんの大巫女の力が欲しいのよ。クライはギロチン台に首を挟まれているわ。彩香はミノムシにされたわ」
「綾香。分かっているわ。先にもらったレイピアは偽物だったのよ。あのジジイはコケにして、踏んづけてやるわ」
「うん、お願いね」
桜子は、沙霧、澪霧、シビルとカムイコロの五人で作戦会議を始めた。
デルフィナは、綾香の身体の気の流れの調整を行う。
「あんた、ズタボロにされたわね。これでは気が狂いそうになるのも分かるわ」
「うん、ありがとう。随分と楽にはなったけれども、やはり巫女の力は無くなったのかな」
「綾香。悪いとは思うけれども、素直に言ってもいいかしら?」
「後で慰めてくれるなら、何を言ってもいいわ!」
「じゃぁ、この、オタンコナス! 綾香のバカ! どうしていつも一直線にしか動けないのよ。魔女失格だわ。だいたいね、あんたは単細胞なのよ。いい?分かるかしら? どうなの? 考え方が足りないのよね。判ったかしら?」
綾香は今にも泣きそうな顔をしていた。デルフィナが言う事はすべてが当てはまる。だから、綾香は反論も出来ない。
「もう、ヒドイ事を言うのね。確かにノウタリンよ! 悪かったわね」
「はい、それから? もう反論はないのかしら?」
「柔道で悪いかしら? それに単細胞でも良い所はあるものよ」
「もっと、もっと、言いなさい」
「なによ、文句ならまだたくさんあるわ。たくさん、あるわよ・・・・」
綾香の冷え切った身体は、だんだんと熱を帯びてきた。デルフィナは、綾香の身体を休み無く、揉んだりさすったりしているから、綾香の気力の向上が見てとれた。
「桜子さん、準備が出来ました」
「あいよ、直ぐに行く」
綾香は二人の会話の意味が判らなかった。
「母と、なにを言ってるの?」
「直ぐに判るからね。待ってなさい」
桜子は偽物のレイピアを持って来て呪文を唱える。しかも、大声で、
「我は紫水晶の記憶を司る。我は綾香へ記憶の力を授ける。ファティーマ綾香!」
「我はガーネットの記憶を司る。我は彩香へ記憶の力を授ける。ファティーマ彩香!」
「我は綾香と彩香に巫女の御霊の力を授ける。ピンイン、ネクズ・キヤン。アクス・ファティーマ!」
桜子は言い切ると、肩で息をしだした。ひーヒーふー。ヒーひーフー。
「彩香にも聞こえたかしら。聞こえなくても呪文の力は届いているはずよ。ほら、綾香。何か魔法を出してごらん」
「はい、お母様。・・・・ごめん、お姉さま、受け止めてね!」
綾香は姉たちに向かって魔法の呪文を唱える。
「ファイヤー・バード・スプラッシュ!」
何も起こらない。綾香は気を取り直して再度呪文を唱えた。
「ツバイ・ファイヤー・スプラッシュ!」
特大の火の玉状の炎が三人に襲い掛かった。
「キャー、綾香! なにすんの・・・」
「アクア・バード・スプラッシュ!」
「わー、バカ!」
「アクア・バード・スプラッシュ!」
「綾香! 凄いわ。澪はうれしいわよ!・・・キャッハー!」
「アクア・バード・スプラッシュ!」
沙霧、澪霧、シビルの三人は、悲鳴を上げながら逃げ惑い、かろうじて呪文を唱えた。綾香の魔法に対して、三人が呪文を唱えてようやく打ち消す事が出来た。
綾香は、この様子を見て、大きく口を開けている。一瞬、自分でも訳が判らなかったのだ。綾香の魔法を受けた三人も理解は出来なかった。ただただ、恐ろしかったので三人とも魔法を放ったのだ。
「ギャッハッハ~~~」
桜子は思わず大声で笑った。そんな桜子を三人は睨み付ける。そして、
「キャハー、やったね、綾香! おめでとう」
姉たちは、無事に綾香に巫女の力が戻った事を喜んだ。
「うん、ありがとう。お母様! 本当にありがとう。感謝します」
綾香が一番喜んだことだろう。
「お姉さま。もう一つ魔法が思い浮かんだのですよ。手伝ってください」
「綾香、なにかしら。黒焦げはイヤダからね」
「寒中水泳はもうこりごりよ!」
「ううん、そんな事はしないわよ。いいかしら、手を繋いでくださいな」
「こう? これでいいかしら」
「はい、この魔法は私しか使えないのよ。だから、私に巫女の力を送って頂戴。そして、彩香とクライの顔を思い出してください。では、呪文を唱えます」
綾香は大きく深呼吸を二回繰り返した。三回目では息を止める。そして、
「綾香が命じる。彩香、クライ、我が呼び出しに応えよ。風よ我の僕となりて、かの二人をここに召喚せよ! ツバイ! ウインダム!!」
すると、一陣の竜巻が起こり周りが見えなくなった。そして、綾香ら三人の輪の中には、彩香とクライが現れた。
先ず、沙霧と澪霧が驚き、次に桜子が大きい声で名前を呼んだ。
「彩香! クライ!!!」
「彩香! 戻って来たんだね」
その他の者は、目を丸くして驚いていた。
一番驚いているのは、彩香とクライの両名だが・・・・。
綾香は瞬時に彩香に抱きついた。そして、
「彩香! ごめんなさい。非力でごめんなさい」
「綾香。助けてくれてありがとう」
「綾香さん、ありがとう」
「みなさん、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。ありがとうございます」
クライはみんなにお礼を言った。桜子はクライに、
「無事で良かったわ。綾香は、ギロチンで首が落ちてしまったと言って泣いたのよね。あまりにも泣くから、私もついつい信じてしまったよ!」
「もう、勝手に殺さないでよ! 失礼しちゃう」
綾香は思い通りの魔法が使えた。この思いが本当に思いがけない魔法へと進化した。
それは、彩香の頭にイメージとして浮かんだ、史上最強魔法。ネーミングは? ダサいか、そのままの意味だった。
姉のツインズ。妹のツインズ。フージョンの魔法で二人が一人になる。さらにその二人が一人に進化する魔法。
Zweiツインズ・シスターズ!
能力は未知数。両手両足はソードとなりて、全身が漆黒の鋼へと変化した。4本のソードは刃は光輝く。さらに、右腕には赤き炎が纏わりつき、左腕には白き水龍が纏わりつく。巫女の最終形態だろうか。
シビルは恐れ慄く。シビルだけではなく、カムイコロもクライもデルフィナも、同じく恐怖した。
「イグナ・フレア!」
「? ?? 違ったわ!」
「イングナ・フレイ・ア!」
北欧神話の女神の最強の力!
Wツインズは、あのサイコパスのハバロフスクが居る埠頭へ、炎と水龍の合わせ魔法、フレイ・アの魔法を放った。アラン・ドロン・女はもちろん、人狼の巫女AとB。人狼兵の6人も被弾し消し飛んだ。
一瞬の事だったから、アラン・ドロン・女と人狼の巫女AとBは、回避魔法さえ唱える事が出来なかった。分かっていたとしても、回避魔法はありはしないのだ。ただ焼かれるだけだった。あっけなく勝敗は決した。
「・・・・・・・・・」
みんなは、ポカ~ンとしている。
「お母様。もう終わりました。ホテルへ帰りましょう」
「本当に終わったのかい?」
「はい! 終わりました」
「なぁ、彩香。訊いてもいいか。レイピアはどうなったんだい?」
「あ、それならば、お母様の手元に在るのが本物ですわ」
「いつ本物と入れ替わった? どうしてだい?」
「だって、本物は蒸発しました。だから、レプリカが本物になったんです。ダイヤが付いている方が、本物です!」
確かに桜子のレイピアには、2個のダイヤが付いている。
桜子には理解は出来なかったが、レイピアに力を込めると、確かにレイピアは変化し桜子の力の糧となった。本当の大巫女が誕生した。
ペイドルとその使用人は、途中まで出て来ていたが、怖くて先には進めなくてうずくまっていた。ペイドルはクライの顔を見て、大きく相好を崩す。
「お帰り、クライ!」
「ただいま、ペイドル!」




