第76部 ガラスのハート と 信じるこころ
1952年12月(昭和27年)エストニア・首都タリン
「ミーナさん、母が来ました。母にはこのブローチはどうでしょう」
「・・・・・」
「ミーナさん?」
横を向いているミーナに、澪霧は少し大きい声で呼んだ。
ミーナは、この家族はみんな巫女だわ!と、アレクサンドラが言ったのが気になり他の若い女性を見比べていたのだった。
ふと我に戻ったミーナは、
「あ、ごめんなさい。他の方に見とれてしまっていました。えぇ、このブローチですね、お母さまにぴったりですわ」
「だったら、この白いブローチもいいかな?」
「いいえ、先ほどの青いブローチの方が、お似合いですよ! 白はお母様の白と重なる色になりますよ。だから、青がお似合いです」
「やっぱりそうなんだ!・・・・」
このミーナさんは何か分かるのかな? また、母のダイヤの色が解るのかと澪霧は考えた。
そんな考えは直ぐに捨て去って、
「私にも似合うかな~」
澪霧は、自分が蒼いブローチを着けている姿を想像する。そんな澪霧を見て微笑んでいるミーナ。この二人は似ているのだろうか。
カフェからゴルバチョーフの家族が出てきた。
「桜子さん、お勘定を放置しないでください。私たちには少し高過ぎですよ。次は桜子さんが払ってくださいよ」
「あら? まぁ、ごめんなさい。次回は高級レストランに行きましょうね」
「場末の間違いでは? 言い直すなら今ですよ」
「いいえ、割り勘ですから」
「それは無いでしょう。私たちよりも桜子さんの・・・・」
「さくらこ? さん なの?」
「えぇ?・・・・・そうですが・・・・・」
「もう、いやね~、アンナですよ。と、キャスもいますわ!」
「わぉ! アンナ? キャス? もうホントだ。わ~、お久しぶりですね」
「アレクサンドラ、ミーナさん。こちらにいらっしゃい! 日本の桜子さんです」
「え? あ! あの、桜子さんですか」
アレクサンドラは驚いて、母のアンナに聞き返した。
「そうですよ。とても強い巫女さんです」
「いやだわ、強くはありません。昔の事は言わないでください」
そう言って桜子は全員に集まれ、と言う。巫女のみんなは、アンナとキャスのテントに集まる。同時に家族の紹介が始まる。
「ね、ね。あんたたちは、霧の娘なの? こんなにきれいな女性になって!」
「はい、生前の母がお世話になりました」
「そうね、霧さんは残念だったわ。どうしてでも助けたかったわ」
「ありがとうございます。そう言っていただけましたら、死んだ母も喜びますわ」
アンナは見渡してクライを探し出した。
「貴方はクライさんですよね?」
「はい、昔は助けて頂き、ありがとうございました。まだ、独身ですのよ」
「ハハハー、それはいいや。子供を産むと疲れるわー。今では産まなければ良かったと思うくらいなのよ」
「なによ、アレクサンドラを邪魔者にする気なの? 老後は面倒見ないからね!」
「そんなことはありませんよ。愛しています、チュッ!」
「ゴルさんと、その家族の方ですね。お爺さんには何かとお助け頂きました」
等々、延々と挨拶が続く。続くのである。
「アレクサンドラ、ミーナさん。お店は片づけましょう。帰って桜子さんを歓待いたします。キャス、それでいいかしら」
「そうですよ、早く帰りましょう」
「お母さん、家にはこんなたくさんは入りませんわ。無理を言わないで下さい」
アレクサンドラが母に忠告した。直ぐに桜子は、
「そうですよね、これから私たちが宿泊するホテルへ集まりましょうよ。ね?」
一同は賛成する。
クライは、
「私たちは先にホテルに行って待っています。ご家族の皆さまでお出で下さい」
キャスは、そういたしますと返事をした。アレクサンドラとミーナは急いで閉店の準備をしていた。
綾香と彩香が、
「お手伝いいたします。なにをいたしましょう」
「ううん、大丈夫よ。お手伝いされると、どこに何があるのかが判らなくから大丈夫ですわ」
「はい、分かりました」
「ね、桜子! 私たちは今着いたばかりよ。いったいどこにホテルが在って、どこに泊まるのさ。さ、教えなさい」
「あら、まぁ。どうしましょ。さ、みんな。戦争よ! ホテルを探すわよ!」
「イエス、マン」
「ね、キャス。この近くにホテルは在るのかしら?」
「この先に、ホテル・キャスが在るよ。そこに行くといいわ!」
「へんね~、キャスがホテルを造ったのかしら・・・・?」
「桜子さん、あれじゃないかしら、ホテル・キャッスル、と書いてあるわ」
「そうか、聞き間違えたのね」
「いらっしゃいませ、桜子さま! 今か今かと、お待ちもうしておりました」
「あなたは? たしか・・・・・・?思い出せませんわ」
「私は、ホテルのオーナー兼支配人です。お会いするのは2度目になります」
「当時、私はタルトゥ大学の学生で、エストニア独立戦線でも、後方支援で
民間防衛組織にも属しておりました」
クライは懐かしい声と共に、民間防衛組織という言葉を聞いて振り向いた。
「?????え?・・・・・・えぇ~~~~!」
「あら? もしや、クライさまでは?」
「ハイハイハ! そうです。クライです。桜子はいいから、向こうで話そう」
「いや、わたしは、・・」「ハイハイハ、いいから、いいから。ね?」
「人違いで~~~~~す!」「アッハー!」「ギャーッ」
ペイドル支配人と、クライは何処かに消えてしまった。
「申し訳ありませんでした。キャスさまから連絡が入っておりました。桜子さま、こちらで宿泊の手続きをお願いします」
「はい、分かりました。その、支配人は?」
「オーナーは、クライさまに捕まっていますので、もう戻りません」
「どうしてでしょうか?」
「はい、明日には理解できるかと思います。それまでお待ちください」
「はぁ~! あぁ~そういう事ですのね!」
「ご想像の通りでございます。これは部屋割りです。これより皆さまのご案内を
いたします」
桜子と四姉妹とカムイコロが二部屋。ゴルの家族は二人のみ。木之本家が二人。また、アンナとキャスも泊まるという。ソフィアはモスクワを通る時に別れたからいない。
その夜も遅くまで談笑が続いた。目先の戦いの心配も必要ない。こころ休まる夜になった。
「8月と9月はね、モンゴルで人狼兵と戦ってきたのよ、それはもう悲惨でね、新しい娘が一度に三人も戦死したの・・・・・・・・・・」
「ホワイ?」
「・・・・・・・・・」
「そうなんだ、あんたは大巫女になったんだ・・・・・・・」
「・・・・・・・」
最後になって、紫とピンクの宝石を、綾香と彩香に譲って欲しい旨を伝える。桜子が大巫女になった時の、神着の事を話した。
「そうね~、娘が人間に戻るのなら、いいね。明日の朝、娘に相談するね」
「はい、お願いします。人狼兵とは、まだ3回は戦わなくてはなりません。娘をこれ以上失いたくはありませんもの」
アンナとキャスは、エストニアの独立戦争の記憶が甦る。思い出しては涙を流していた。
アンナは決心した。
「決めたわ! 二つの宝石は渡すから、娘を人間にして頂戴。娘は人間として育てました。巫女の事はお伽噺にして語ってきましたから、少しは理解が出来ますが、もう教える必要がなければ、それが一番良い方法です」
桜子は人間に戻った時の麻美の事を話してみる。
「えぇ? ソードで刺しちゃったんですか?」
「もうそうなのよ。智治やニキータが止める間もなく自分でね」
「それは凄いわ!」
「それでね、新婚旅行はね! 病室に変更になってしまった~、って、旦那がとても悔やんだそうよ」
「それはそうよね。初夜が相部屋ならばね~~~~ ムッフ!」
アンナは娘の事を考えたら泣けてきた。巫女の呪われた血とも決別できるのなら、とてもうれしいと思った。
しかしながら、子は親を裏切る。この遠い過去から続く永遠は普遍である。親が無くても子は育つだろうが、その子を育てる他人が居なくては、子は育たない。ミーナとアレクサンドラは、親が考えて育てたこと以上に優秀だったのだ。巫女の力はすでに備わっていた。ただ、理解が出来ていないだけなのだ。
ミーナとアレクサンドラは、両親には自分たちが巫女としての力が、大きく芽生えていたのを内緒にしている。
また、アンナとキャスからは、意外な伝説を教えられた。東モンゴルに伝わる蒼き狼の伝承だった。調査は始めたばかりだから、詳細は不明ばかりだと言う。それは、「ポル=バジン」 蒼い血のオオカミを召喚した? という伝承だった。
「そう、それはぜひとも調べたいわね。田舎伝説? でなければいいな!」
詳細が判明するのには、3年もの月日が流れるのだが・・・・。
ミーナとアレクサンドラは、四姉妹とカムイコロの5人と話し込んでいる。今度の人狼は女が、5人もいるとか話したが通じなかった。
ミーナとアレクサンドラは、人狼兵との戦いは一度も無い。これまで両親と平和に暮らしてきた。戦争とか言われても実感が無い。世界大戦も山に籠り、平和に暮らしてきたのだ。だから、巫女の力は覚醒してはいない。
少しばかり第六感が優れている程度と、そう教えられて本人たちは育った。
同時にミーナとアレクサンドラは、巫女らと話していて、少しばかり恐怖を感じる。心の奥深くで感じることが出来たような? 気持だったかもしれない。
ミーナとアレクサンドラの二人は、だんだんと心が壊れそうな、言い知れぬ恐怖心が湧いてきた。どこまででも純粋に育ってきたから、ガラスのような心に育ったに違いない。母の教えが良かったのが一番大きい。
澪霧は、ミーナとアレクサンドラに違和感を感じた。話していると、言葉の節々がおかしいのに気が付いた。顔の表情がこわばっている?
「少し母の部屋に行ってくる。待っててね!」
「どうかしたの?」
沙霧が澪霧に尋ねる。
「ううん、なんでもないの。直ぐに戻るからね」
澪霧は、部屋のドアを閉めて母の部屋に急ぎ足で駆け込んだ。2階の真下が母の部屋だ。大部屋で間取りは3階と同じ作りになっている。
澪霧はドアをノックもせずに、勢いよく開ける。
「お母さん、直ぐに3階の部屋に来て! 大至急よ。ミーナとアレクサンドラがミーナとアレクサンドラが何だかおかしい」
桜子は澪の表情から危機感を覚えた。しかし、桜子以上に二人の母が驚く。
「娘がどうしたのよ、大丈夫なの? 」
「えぇ? ほんと、どうしたのよ・・・」
「あ、すみません。ミーナとアレクサンドラさんは、もちろん大丈夫です。私が慌てているだけですから、ごめんなさい!」
桜子は直ぐにピンと来た。そして二人の母に言った。
「直ぐに二人を人間に戻します。さ、上に行きましょうか。二人は大丈夫です、安心してくださいな」
桜子は澪霧を見て言った。
「澪! 走ったらダメですよ!」
それは、二人の母への気遣いだった。二人の母・アンナとキャスを落ち着かせる為なのだ。
「それから澪。冷たい水を、そうね~、ポットで3本をもらってきてね」
「はい、お母様。慌ててしまって、ごめんなさい」
「いいのよ、これも運命なのよ。落ち着いてね」
母の三人は三階へ上る。澪霧は1階のダイニングへテレポートした。
「もう、澪ったら。意味が違うのですよ。・・・・」
でも、この前の戦いをまだ引きずっているのかと、ふと考えた。桜子も昔はそうだったかと思い返して、ふっ! と微笑んだ。
この桜子の表情を見たアンナとキャスは、落ち着きを取り戻す。これから、ミーナとアレクサンドラを覚醒させて、巫女の力を消し去る。言うのは簡単だが、難しいことには変わりがない。
桜子は軽くノックして、勢いよくドアを開ける。
「みんな! なにを話しているのかな? 三人組の母が様子を見に来たわよ!」
「あら? お母さん。至って平和よ。妹の二人が、話が止まらないのよね~」
ミーナとアレクサンドラは、母が来たというのに顔を向けなかった。澪霧がいないので、娘の三人を見つめている様子だ。カムイコロはそんな女たちを見ている。
「ミーナ! どうかしたの?」
ようやくミーナは母のアンナを見る。振り向いたミーナの顔を見た桜子は一瞬慄く。ミーナの瞳には輝きが無いのだ。
「アレクサンドラさん、喉が渇きませんか?」
桜子はアレクサンドラを呼んでみる。
「アレクサンドラ。返事して。・・・・・どうしたのかしら」
「・・・・・・」
母のキャスが続けて呼びかけた。反応が無かった。
パシーン! 「キャ!」 パシーン! パシーン! と、部屋に木霊する。
「あんたたち! 何をしていますの! この状況が判らないのですか!!!!」
桜子は三人のほっぺを叩いていた。三人は意味が解らずに未だにキョトンとしている。
カムイコロは驚いて桜子の顔を見た。「桜子の顔が夜叉に変わっている!」と、心で思い、続けて三姉妹を見たが判らない。次にミーナとアレクサンドラを見てはっとした。
「わ! これは・・・・・・・」
カムイコロにも桜子は大声で言った。
「カムイコロ! あんたは、いったいどこを見ていたのさ。この状況が見えていなかったの?」
「どうなの?」
「あッ!・・はい・・・」
澪霧は水を持ってテレポートして部屋に跳んで来た。そして、一瞬で状況を把握して三姉妹に飛びかかり抱きつく。そして、
「ほら! お母様に謝って頂戴。? ほーら! ミーナとアレクサンドラのお母さんにだよ。意味が判ったかしら」
それでも三姉妹は、母の桜子を見て、ミーナとアレクサンドラのお母さんを見る。視線をそらして、次にミーナとアレクサンドラを見た。ミーナは振り向いているから顔が見えない。アレクサンドラの顔を見て、そして驚いて母の桜子を見る。
「わー、お母様。ごめんなさい。少しも気がつきませんでした」
「ほら! あなたたち。ミーナとアレクサンドラの母さんに謝るのよ。私に謝るのは違うわよ、ね? 分かったかしら」
「うん、判る。ごめんなさい!」
四人は、アンナとキャスに謝った。
そんな四人の桜子の娘を見てアンナは、
「いいえ、大丈夫ですよ。気にしなくていいですよ、沙霧さん」
ミーナとアレクサンドラの心は、綾香と彩香の身体の、そう、巫女の力に強く影響を受けてしまっていた。同時に綾香と彩香の身体には、最初のダイヤが融け込んでいるから、ダイヤの影響も強く受けた。もちろん沙霧の力も受けている。
ミーナとアレクサンドラの心は覚醒では無く、このように、二重に三重に強い力を受けた事により壊れかかっているような? 感じがするのだった。
「さ、今から呪文を唱えます。あなたたち、ベッドを空けなさい」
「うん、ほら、急いで!」
澪霧が三人を急がせる。そして、最初にアレクサンドラの腕を掴んでベッドに連れていく。沙霧は、澪霧と同じようにミーナを連れていった。
「ね、綾香、ミーナとアレクサンドラはお腹が一杯かしら」
「はい、二人とも驚くくらい沢山食べましたよ」
「OKね。綾香と彩香、それぞれ二人に添い寝を頼んだよ」
「おっと、いけない。ねぇ、アンナ。ミーナには宝石を持たせた事は、あったかしら。同じくキャスもどうなの?」
アンナとキャスは顔を見合わせて答える。
「多分、二人とも無いはずよ。キャスもそうでしょ?」
「多分もなにも、全く見せた事も無いよ。この宝石は恐ろしいもの」
「分かった。では、宝石の意味を説明しないでいいように、覚醒させますね」
桜子は妹の二人を見て、次の行動を促す。
「はい、お母様。二人とも用意は出来ました」
「一人ずつ覚醒させて、次に宝石の力のすべてを娘に譲渡させます。ほら、あなたたちも経験がありますでしょう? あれを行うのよ」
「ああ、あれよね。うん、今でも忘れたことは無いわ!」
「あの覚醒とは、違うでしょう? 大丈夫なの?」
「そうね。一度に覚醒と力の受け渡しだもの。少しは身体に堪えると思う」
「ですよね。心配だわ!」
「でも、信じていて欲しいわ。あなたの娘でしょう? 二人とも強いこころを持っています。だから信じてあげましょうよ、ね?」
「はい、桜さんにお任せいたします」
「では、キャス。ピンクはガーネットだったかしら。宝石を彩香に渡して下さいな。あ、左手に持たせて下さい」
「さ、彩香さん。これをどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
「アンナは、紫水晶を綾香に渡してください」
「綾香、右手で持っていなさいね」
「はい!」
アンナは黙ったまま綾香に紫水晶を手渡した。綾香は受け取るとお礼を言う。
「それでは始めます。先に、アレクサンドラさんからです」
「我は汝の記憶を司る。我は汝の真名を唱える、ファティーマ アレクサンドラ」
アレクサンドラの身体が反応する。同時に彩香もピクン、と身体が動いた。
「彩香、大丈夫だろう? お前にはまだ何も起きないからね」
「ええ、お母さん。何ともありません。続けてください」」
「彩香、次はガツンと来るから気張るんだよ!」
「う、・・・・・」
彩香は、次なる衝撃に緊張して、つい、弱音を吐く。
「我は汝・アレクサンドラに巫女の力を授ける。ピンイン、ネクズ・キヤン。アクス・ファティーマ! アレクサンドラ」
「我はガーネットの記憶を司る。我は彩香へ記憶の力を授ける。ファティーマ彩香!」
アレクサンドラと彩香は同時に痙攣を始めた。アレクサンドラよりも彩香の方が何倍にも強いように見える。
「彩香さんは大丈夫ですか?」
キャスは心配して、桜子に尋ねた。桜子にしたって、二人の覚醒と譲渡とか初めてだ。桜子も娘が心配で、はらはらしながら見守っている。
桜子は少し掠れた声で、
「は、はい、大丈夫です。ご心配のはおよびません。痙攣は直ぐに治まります」
桜子は一息ついて気を取り直した。まだ大きく胸で息をしている。
「アンナ、次はミーナさんです。よろしいかしら」
「・・・・・・、ですね、お願いするわ」
「我は汝の記憶を司る。我は汝の真名を唱える、ファティーマ ミーナ」
ミーナもアレクサンドラと同じように身体が反応する。綾香も同時にピクンとした。
「ほら、綾香。ガツンと来るから気張るんだよ!」
「ええ、お母さん」
桜子は娘らの状態を無視して、一気に呪文を解き放った。
「我は汝・ミーナに巫女の力を授ける。ピンイン、ネクズ・キヤン。アクス・ファティーマ! ミーナ」
「我は紫水晶の記憶を司る。我は綾香へ記憶の力を授ける。ファティーマ綾香!」
「我は綾香と彩香に巫女の御霊の力を授ける。ピンイン、ネクズ・キヤン。アクス・ファティーマ!」
ミーナとアレクサンドラと、綾香と彩香。四人とも昏睡状態に落ちた。
キャスもアンナもとても不安だろう。とうの桜子も大巫女になり、力の加減が判らない。桜子こそとても不安だった。なぜならば、他人の娘の二人をも面倒を見るのだから。結果が直ぐに分かるなら、直ぐに安心も出来よう。しかし、昏睡状態がいつまで続くのかもわからない。
桜子は、キャスとアンナを不安には出来ないから、
「ねぇ? アンナ。キャスも。二人は朝まで熟睡するから、下でお酒を飲もうよ」
「でも、四人も眠らせたままでいいの?」
「大丈夫ですよ。姉の二人もついていますし、カムイコロだっていますよ。だからこの三人に看て貰っていればいいのです」
「だ~って~!」
そう言われても、とても不安がるキャス!
「キャスさん、アンナさん。二人の事は任せてください。明日の朝にはもうけろっとしていますわ」
澪霧はそう言った。
「そうかい? それならばいいけれども、さ!」
「ご不安も分かりますわ。娘を信じて目覚めをお待ちください」
アンナの言葉に応える桜子。
「では、お任せいたしましたよ。澪さんと沙霧さん。よろしくお願いします」
桜子は二人の姉にキャスとアンナを、看ているように頼む。
「なぁ~、さくらさん。娘に敬語を使うのかい?」
「そうよ! 私の立派な娘ですのも。当然です」
さて、この言葉の意味する意図はなんだろう。
「もう少し人数を増やしましょうか。ルカとニキータのも声掛けるわよ!」
「おばさん会にするんだね。あ! あのクライは何処に行ったの?」
「あ~ぁ、クライね。今頃はねー、窓に飾られている寄生木の下で、ペイドル支配人とうまいことしているはずよ!」
「あ~ぁ、寄生木の下? だよね。クライも幸せを掴めるといいね!」
「明日の夜は、盛大なパーティーを開く事になるかしら!」
「ほっほっほー」
「はい、そうですね~」
「ほほほー」
「あ! 明日はあなたたちのお店で、たくさんの買い物をいたします。売値の半額の8掛け! でお譲りくださいまし。ね!」
「桜子さん。それはあんまりですわ。売値の8掛けまでです」
一方、クライとペイドル支配人は、
「あんた、俺の上着を返してくれないか」
「いやよ。これはもう私のものよ!」
「ああ、そうだな。中身つきで返してくれ! その方が俺も嬉しい」
「ええ! 喜んでお返しいたしますわ!」
「・・・・・・・・」




