第74部 決戦その2 そして消えゆく・・・・・
1952年9月(昭和27年)モンゴル・ウンドゥルハーン
シャワーを浴びて元気になった姉妹らが見つけた母の手紙とは。
「強い娘よ。お前たちは昨日の事は覚えているかい? 忘れるでないよ」
沙霧は、
「気が動転してしまい、すっかり忘れていたわ。ごめんなさい、お母様。もう負けて泣いたりしません」
綾香と彩香は、
「そうだよ、泣くのは止めようよ」
「お姉ちゃん。ごめんね? 役に立たない妹で!」
「自覚があるなら、起死回生! 頑張りな!」
「もうヒド~い。お姉ちゃんでしょう? 優しい言葉が出ないの?」
「そうね、ごめんなさい。カルシウムが不足しているみたい」
沙霧は少し苛立っている様子。
「なによ。たかがCaくらいで。山羊と羊、牛。どれがいいかな、連れて来るよ。お乳搾ってあげるよ」
「気分が悪いみたい。ごめんね? 綾香!」
心なしか、どことなく母は微笑んでいるように見えた。
すっかり落ち着いた四姉妹。母の手紙といえるかは解らないが、残りの巫女にも読ませた。特に年上のクライは、
「そうだよね~、もっとしっかりとしなくては」
重い気持ちが楽になった巫女たち。シビルは座禅を勧めた。
「精神統一するわよ! 戦争よ! 負けないわ」
巫女たちは想い思いに瞑想に耽る。すると自然に武器のイメージが湧いてくる。カムイコロは、「気が重いわ~~~」
沙霧は、ソードが赤くなる炎のイメージが。 火焔が多数飛ぶ。澪霧は、ソードが水に変化するイメージが。小さい水刃が多数飛ぶ。
デルフィナは、連続の瞬間移動が出来るイメージが。クライは緑色の両手剣のイメージが。投擲すると、剣は自ずから戻ってくる。
ソフィアは、白く輝く霧魔法のイメージが。 幻惑魔法のようだ。シビルは、姿が消える緑の魔法のイメージが。
クリナは、青の紋章・転移魔法のイメージが。ゲート魔法のようだ。アナスタシアは、緑に光る二重の結界魔法のイメージが。二人は魔法の色が違うだけの同じ魔法だった。
マラルは、黒いオオカミに変身する魔法のイメージが。素早く走れる俊足魔法。
カムイコロだけは、魔法が使えなかったから判らない。しかし、なにかしらのイメージが浮かぶのだが、はっきりとしなかった。力の打撃と物の投擲しかない。やはり気が重い・・・・。
宝石を持たない綾香と彩香には、魔法のイメージが浮かばなかった。
巫女らの明日からの戦いは・・・・・。
その頃のハバロフスクの親子らは、
「お前たち、よく頑張りました。この調子で明日も頼みましたよ」
「お父様、あの巫女たちは弱いわよ。明日は逃がさずに捕えます。だから、お父様。ご褒美を下さい」
「人狼巫女A。お前の働きには感心しましたよ。明日も娘を守るのですよ」
「人狼巫女B。お前の出番は明日からだね。今日はお休み!」
「はい、お父様」
「はい、お父様」
「人狼兵。お前たちはもう、最高です。知略の結晶です。だから明日も頑張るのですよ」
「ふんがー、フンガー!」
「もっとましな言葉は知らないのかい?」
「敵のあいつらに向かって、なにか言ってごらん」
「ふんがー、フンガー! 巫女のふんがー!」
「おうおう、可愛い息子よ! 今度は言葉を教えよう」
決戦二日目。巫女たちはキャンプを発つ前に、イメージの魔法をテストした。思うようには出来なかったから、やはり練習を積まないと出来ないのかもしれない。
巫女たちは練習が終わり円陣を作る。各自の手を握り締める。今は母になっている昔の巫女だったニキータやルカ。巫女にはなれなかったターニャも加わる。カムイコロも加わる。
すると、全員に電気みたいな衝撃が走った。
「キャー、」「わ!」「イヤッ」「イタッ!」
各自悲鳴を上げる。
「なによ、これ! どうしたのかしら。力が漲ってきたわ」
「そうね、これならば、何でも出来そうだわ」
男どもは、せっせと武器・弾薬をトラックに積み込む。
「終わったよ。さぁ、出発しようか」
「イエッ・サー」
1952年9月(昭和27年)モンゴル・アウラガ遺跡
「なに、なんなの? あの横断幕は! 向こうの大きな木には、垂れ幕? もう、あんまりだわ」
掲げられた横断幕と垂れ幕には、熱烈歓迎!日本の巫女!!
「お下品な文章ね。私たちは客寄せパンダではありませんわ」
「ファイヤー・バードスプラッシュ!」
横断幕が弾けて勢いよく燃え盛る。続けて、
「ファイヤー・バードスプラッシュ」「ファイヤー・バードスプラッシュ!」
横断幕が大木と共に灰になった。とても気が短くなった沙霧だった。
「フィアンセさんが、居ませんもの。分かるような気がします」
デルフィナが沙霧を弁護する。
「バカな巫女だこと。ワシの誘導に、モロに罹りやがる。もう病気だね」
ハバロフスクの愚計である。巫女の気をイラつかせる戦法だ!
次なる戦法は? やはり卑劣極まりなかった。
「きゃ~~~~!」
「いたーーーーい!」
「また、ドロンね? 大きな穴を掘りやがって!」
ドロンが道路に大きな落とし穴を造っていた。一台目のトラックが落ちた。
「もう、あの女はさいてー。叩きのめしてやるからね」
ハバロフスクの陣営では、大きな笑い声が響く。
「ホント! バカ巫女だね。簡単に罠にかかってさ!」
怒り心頭の沙霧がテレポートで、敵陣地に単独で乗り込んだ。
「ファイヤー・バードスプラッシュ!」
続けて、
「ファイヤー・スプラッシュ!」「ファイヤー・スプラッシュ!」
沙霧の剣からは小さい炎が、火焔になって飛び出した。
「あちー、なんだいこの威力は・・・」
ハバロフスクの陣営は直ぐに、大きく炎上してしまった。
アランはあらん限りの力を振り絞り、
「アクア・バードスプラッシュ!」「アクア・バードスプラッシュ!」
強く念じて魔法を放った。陣地の宿舎が、ジュ、ジュ、ジュ。と音をたてながら火が消えていく。
「ファイヤー・バードスプラッシュ!」「ファイヤー・スプラッシュ!」
執拗に、沙霧の攻撃魔法が続く。たまらずに、ハバロフスクは巫女の三人から、テレポートで連れられて避難した。
人狼兵は、戦車と機関銃で砲撃を開始する。戦車は大きなピンクの文様に包まれる。一瞬? 緑の文様が戦車を包んだように見えた。その後、二つの文様は消える。
「ふん! ろくに魔法も使えぬと見えるわ・・・」
ピンクと緑の文様に包まれた戦車は停止した。れれれ? 戦車が心なしか大きく見える。だんだんと大きくなった。
「ドッカ~~~~ン!」
大きな爆発とともに戦車が吹き飛んだ。爆発した所には????緑の結界が見える。結界の中には? 人狼兵の二人が閉じ込められていた。
「一丁、あがり~~~」
アナスタシアは、得意げに叫ぶ。
「なによ! 私が結界を大きくさせたからよ」
クリナが、アナスタシアに抗議した。
「ぬぬぬ! やりおるな~巫女どもめ。アラン・ドロン・女。早く反撃をいたせ。人狼、もっと射撃を行え!」
ハバロフスクは巫女や人狼に命令して、ようやく統制がとれた攻撃が始まる。アラン・ドロン・女は、めいめいに攻撃魔法を放つ。
「ファイヤー・スプラッシュ!」「アクア・バードスプラッシュ!」
「ファイヤー・スプラッシュ!」
日本の巫女も応戦する。
「アクア・バードスプラッシュ!」 「ファイヤー・スプラッシュ!」
女の人狼も魔法を放つ。
「ファイヤー・スプラッシュ!」
「アクア・バードスプラッシュ!」 「アクア・バードスプラッシュ!」
混戦の魔法合戦になった。ここで一歩を踏み出したのが、ドロンである。ドロンの奥の手は? ドロン!と消える魔法だ。身体を透明に出来る。そして、敵の背後に回り、短剣で一突きにする。(たった今思い浮かべた)
お父さんのハバロフスクを集中攻撃する機動隊目がけて、ドロンは走る。
「こんにちは、そして、お休みなさい」
機動隊の隊員が、一人ずつ倒されていく。課長にはドロンの姿が見えないから不思議に思う。気がつた時は、時すでに遅し。課長の背後にドロンが現れた。今にも短剣で一突き!に、
マラルが危機を救った、黒いオオカミに変身して、目には見えない速さでドロンに体当たりする。ドロンは大きく弾かれた。
「課長! 気をつけてくださいまし。殺されるところでしたわ」
「えぇ? 本当かい。それはありがとう。助かったよ」
「シビルが感じてくれたからよ」
機動隊の隊員は3人が負傷して動けない。残りの二人はお★さまになる。木之本署長は、ニキータとともに機関銃で応戦している。相手は人狼兵の機関銃部隊だった。多勢に無勢! 劣勢もいいところだ。
課長は弾切れでトラックに戻る。そこに砲撃が落ちた。
ヒューン、ドカ~ン。砲弾が地面でさく裂する。
「ギャ!」
課長は吹き飛んだ。この様子を見たカムイコロは課長の救出に行く。
「ちょっと、あんた。なんで好き好んで的になるのよ。バカだね」
「いや~、すまん。恩に着る」
「そんなもの要らない。自分で着て頂戴!」
ソフィアは、敵の陣営に、白く輝く霧魔法を掛けた。辺りは濃い霧で全く見えなくなった。
「ファイヤー・スプラッシュ!」「アクア・バードスプラッシュ!」
ここぞとばかりに、沙霧が2発の魔法を放った。見事に魔法がさく裂した。
「ナイス! ソフィア。上出来よ」
「沙霧お姉さまも素敵よ」
シビルは、姿が消える緑の魔法で姿を消す。そして、気配を頼りにドロンを探した。
「ゴツン!」
「わ! 痛て!」
「このう、お前は誰だ。俺の魔法をマネするな」
シビルとドロンとのバカ試合? が始まった。共に姿が見えない。いくら自分も透明になったところで、透明の相手は見えない。気配を感じて先に石を投げる。当れば石は飛ばずに落ちるから、その地点を目がけて、剣を振り回す。当然当らない。それもそうだろう。石が当たれば逃げるからだ。
女は飄々として掴み処の無い女だった。兎に角笑う時には魔法が発動し、爆発がおきたり物が飛んでくる。はたまた、地面に大きな穴を開けて巫女を落としてしまう。テレポートで瞬時に逃げないと穴埋めにされると、一番? とても厄介だった。
この飄々として掴み処の無い女には、カムイコロと彩香と綾香が対峙した。女の魔法は大した威力では無い。カムイコロの投擲と双子の剣で応戦した。
女は、飄々としてちょこまかと逃げて捕まらない。
敵の巫女のアランには、沙霧と澪霧が相手をする。
沙霧は、赤くなる炎のソードで切りかかる。澪霧は、ソードが水に変化して相手の剣をすり抜ける感じだ。相手は、剣で澪霧の水の刃は受けられない。とにかく逃げて躱すしかない。
「ファイヤー・スプラッシュ!」「アクア・バードスプラッシュ!」
沙霧と澪霧は魔法を放ったが、人狼巫女AとBが援護魔法を放ってくる。
「アクア・バードスプラッシュ!」「ファイヤー・スプラッシュ!」
これでは決定打が出ない。
デルフィナは、クライを抱えて、連続の瞬間移動を行った。クライは先々で緑色のツバイソードで次々に人狼兵を刺していく。この二人が一番優秀かもしれなかった。
残る2台の戦車には、同じくクリナとアナスタシアが対処した。
戦車は大きなピンクの文様に包まれて、次に緑の文様が戦車を包見込む。戦車がだんだんと大きく、さらに大きくなると、
「ドッカ~~~~ン!」
緑の結界が人狼兵の二人を結界の中には閉じ込める。3台目の戦車には手を焼いた。次々に砲撃を打つから、魔法の呪文を唱える時間が出来なかった。
次の瞬間に戦車は向きを変える。三番目の女の援護射撃を放った。
「ダーメ~!」
クリナとアナスタシアは戦車に向けていた魔法を、瞬時にカムイコロと彩香と綾香に向けて放った。
渾身の最大魔法に切り替えて、三人の援護に魔法を放つ。だが、間に合う筈はないのだ。
しかし、三人は間一髪でクリナとアナスタシアの結界の中に居た。三人を守る事が出来たのは、マラルが黒いオオカミに変身して、三人を結界の中に押し込んだからだった。マラルは結界の外に残り戦車の砲撃をまとも
に受けて消える。消えた。
「キャーーーーー!」
「マラル~、マラルー!」
クリナとアナスタシアは、大声でマラルの名を叫ぶ。
力を無くしたクリナとアナスタシアは、次の瞬間に戦車の砲撃をまともに受けた。瞬時にクリナとアナスタシアは消えてしまった。カムイコロと彩香と綾香は、唖然とした。
「イヤーーーーーー」
「いやー。クリナとアナスタシア、死なないで~」
「クリナーーーー、アナスタシアーーーー」
彩香と綾香はその場に崩れ落ちる。カムイコロは怒り心頭で、戦車に向かう。いくらカムイコロでも、人間に戻ったから力は弱くなっている。戦車には勝てない。
人狼兵は戦車に向けて機関銃で銃撃を開始した。カムイコロ狙いだった。カムイコロはたまらずに、林に逃げ込んだ。
クリナとアナスタシア、それにマラルまでもが戦死した。
この様子を見たアランが大声で笑った。
「もうーバカだねー、他人を庇って死ぬなんてー。もう最低よね」
この一声で、沙霧は自我を失う。
「このう、お前は何様なのよ、死ね! 死ね! 死ね!・・・・・」
澪霧は、切れた沙霧を見て恐れ慄いた。初めて見た沙霧の形相だった。妹思いの優しい姉だから、思いもよらなかった。沙霧はアランに切りかかった。そんな沙霧をアランは軽くかわす。
次に顔を見たら泣きじゃくる沙霧に戻っていた。杉田家の長女として、とても悔しかったのだろう。
人狼巫女AとBがアランを援護するから、澪霧でも手出しが出来なかった。澪霧が一人に切りかかっても、人狼巫女のどちらかが、澪霧を襲ってくる。澪霧は身を躱して飛び退くしかなかった。
澪霧もだんだんと泣けてきた。自分はなんと非力なんだろうか、と思ってしまう。
「このう、このう、このう。ダァーーーーー!」
人狼巫女は器用に身を躱す。沙霧は巫女の二人を相手にしているので、やはり分が悪い。アランと人狼巫女のAとBは、交互に一人を援護するから、相手の巫女は4人居ると思えるくらいだった。
アランは薄葉の2mと長い剣を使う巫女だ。刃はしなり自由に変幻する。もう躱しようがない。二本の剣を持ってしても躱せないのだ。巫女は悉く傷を負う。最初はクライ。次はデルフィナだった。
残り1台の戦車は、次々に人狼巫女や人狼兵の援護射撃を的確に行う。巫女たちはたまらずに後退していく。
この様子を見てた課長が、戦車の砲塔に爆薬を投げ入れる事を思いついた。課長は怪我をしているデルフィナに頼み込む。
「な、デルちゃん。この手榴弾をあの戦車の砲塔に投げ入れてはくれまいか。あの戦車1台で我々は破れてしまう。次に誰が死ぬかが判らないよ」
「そうだね、連続のテレポートで気づかれないようにして、投げ入れるね」
「ああ、頼んだよ!!!・・ああ、神様、仏さま~~~」
戦車は停止した。上部ハッチが開き、中から人狼兵が急ぎ逃げ出す。デルフィナはここで初めて手榴弾を戦車に投げ入れて、テレポートして避難した。戦車は見事に吹き飛び、課長は大喜びでデルフィナを迎えた。
「な、デルちゃん、最初に何を投げ込んだんだい?」
「マムシを2匹ね。木の上に逃げているのを見つけたんだ!」
「おお、そうか、でかしたぞ!」
戦車が全滅したから、敵の巫女は劣勢になった。特に、カムイコロはカンカンに怒っている。大きめの棒を持ってブンブンと振り回した。これには人狼巫女も、居た堪れずに逃げ出した。
ハバロフスクは娘の巫女に撤退を告げた。残った人狼兵は巫女が丁寧に一突きにして人間に戻した。モンゴルの人々だった。
逃げたのは、ハバロフスクと娘の三人と人狼巫女の二人。それから人狼兵の6人だった。機関銃部隊の10人は全員が人間に戻っている。
対してこちらは、機動隊の二人と、巫女が三人が戦死した。思わぬ痛手だった。残ったトラックも穴に落ちた1台だけだ。何とか穴を埋めたり、掘ったりしてトラックを道に戻した。負傷者らを乗せてウンドゥルハーンに戻る。
「あ~ぁ、あ。負けた。本当に負けたよ! な、課長」
「あぁ、そうだな、木之本くん。今回は困った。あぁ、困った」
「そうだよな。・・・・」
綾香と彩香は、最後までうつむいて一言も話さなかった。いや、それ以前に巫女は全員が無口だった。カムイコロは、トラックを叩いて悔しがった。沙霧も澪霧も妹の二人を見ては、直ぐに視線を逸らした。
キャンプに帰った一同は、怪我人を優先して治療を行い、死者は丁寧に棺の代りの袋に納めた。そしてテントの中に横たえる。
巫女たちは無口のまま、自室に引き上げる。
綾香と彩香は姉の二人と一緒に、寝ている母に、クリナとアナスタシアとマラルの戦死を報告に行った。
桜子は気力が戻り、起きたばかりのようだった。桜子は気落ちした四人の娘を見て考えた。他にはカムイコロが入口に立っているのが見えるだけだ。
「そうなんだ、ここで怒ったらダメ。ここで泣いてもダメ。娘を追い詰めたらもっとダメ。そう、優しく接しよう」
綾香と彩香が母に、クリナとアナスタシア、マラルの戦死した状況を報告した。母の桜子は静かに娘の言葉を聞いている。嗚咽で声が出ないのだから、なおの事聞き耳を立てて聞く。
マラルが、クリナとアナスタシアが、私たち三人を庇って死んだ、と。そして、人狼の兵器は潰したが、機動隊の2人も戦死した事。そして、劣勢な戦況ででも、勇敢に戦った巫女たちの事を細かく報告した。
とうとう、我慢の限界がきた。桜子は泣き崩れた。
「わー、クリナとアナスタシア。どうして力を使ったのよ。あれだけ力の遣い 過ぎはダメと言っていたのに。マラル! あなたもよ。短い間だったけれども、母として逢えたのは嬉しかったのよ」
桜子は一度に三人も娘を失ってしまった。ただ言えるのは、死んだのではなく、どこかの遠くの世界に転生したこと。だが、桜子や双子の四姉妹にとっては、死そのものだ。綾香も彩香も、母と一緒に泣いている。
戦いに勝ったとはいえ、事実上の敗退になる。署長や課長も責任は重い。しかし、この三人のお蔭で沙霧も澪霧も綾香も彩香も、危機的状況から救われて死なずに済んだのだ。この矛盾したような二者択一という、三人に人生で最悪の、死の選択をさせてしまったという事に、桜子はとうてい受け入れる事が
出来なかった。
「お母さん。ごめんなさい。本当にごめんなさい」
綾香と彩香は戦いの中で、とても苦しんだことだろう。そのことは桜子にも十二分にも理解は出来る。理解が出来るからこそ桜子は、母としても自分は何も出来なかった、ということが許せなかった。悔しくて、悔しくてたまらない。
桜子は、謝る綾香と彩香を、思いっきりぶちたいと思った。右手に入る力は二人を抱き寄せる力へとなった。
「お母さん。ごめんなさい。本当にごめんなさい」
二人は何度でも、何度でも謝る。そんな娘はとても愛おしいのだ。こんな可愛い娘をぶつとか、思った自分が情けなく感じた。
桜子は、泣きじゃくる二人の顔をあげて見つめた。人間として、母として、自分の気持ちが正しいのかと自問した。
「綾香、彩香、顔を見せておくれ・・・・」
「はい、お母さん」
「うん、母さん」
二人の目には溢れんばかりの涙が、こぼれ落ちそうだった。
「綾香、」
「はい!」
「彩香、」
「はい!」
三人は言葉とは言いえない言葉で、会話をしている。そしてまた泣きじゃくっている。
そのような状況を見つめるしかない、沙霧と澪霧。カムイコロもそうだ。クリナとアナスタシアとマラルを、追い詰めさせてしまった自責の念は大きかった。この三人も泣きたいだろうが、唇を噛みしめて我慢している。
桜子は、泣いてすがる綾香と彩香を、いなして立ち上がる。桜子は、沙霧と澪霧、カムイコロの元へ行き、声を掛ける。
「お前たちの所為ではないんだよ。そりゃ悲しいだろうさ。泣いてもいいさ。でもね、綾香と彩香のためにも泣かないでおくれ。お前たちまで泣いたら、母もまた泣きたくなるからさ」
桜子は三人を、そーっと抱き寄せて小さな声で話した。暫くの間身動きせずにいた桜子は、静かに部屋から出て行った。5人の娘たちは追うことはせずに見送った。
桜子はあてどなく歩いている。どこか独りで泣ける場所を求めて・・・・。
「あぁ、ここはいったい、どこだろう。どうして自分はここに佇んでいるのだろう。私はもう戦いなんてうんざりだ。子供とともに暮らしたいな」
桜子はモンゴルのさわやかな風が吹く大地に、大の字で寝っ転がった。頬にあたる風は、
「お母さん、今まで育ててくれてありがとう」
三人がそよ風と共に、小さな声で頬を通り過ぎたように思えた。
「バシーーーー!」
「パン、パン!」
大巫女の力の入れ方は凄かったよね~。
ほっぺが腫れただろうね。
お父さん。どうしてレイピアを出さなかったのです?
いいや、出したぞ。だから巫女の三人が死んだ。
ホントかな~。
ああ、本当だとも。決して忘れた訳ではないぞ。
ホントかな~。
ああ、大巫女の桜子が居なかったから、レイピアを出せなかったんだ。
ホントかな~。
ああ、そうだよ。レイピアは次に回すことに決めたよ。
で、次はいつになるのよ?
ああ、そうだな。未定だ、と言うのは悪い気がするな。次回は、冬のエストニアの章の次の次位だ。
また、北欧に戻るの?
ああ、そうだとも。次は巫女に花を持たせる予定だよ。
鼻?の間違いでは?
ああ、出鼻をくじいてやるさ。北欧の人は鼻が高いよな。折れる事はないのかな。
お父さん。風邪を引いたんだ。鼻水が垂れてる。出鼻!チ~ン。しなくていいの?
ああ、Wツインズ の 登場!!で、鼻を削ぎ落してもらうよ。
ああ、分かったよ。花を持たせるとは、お父さんの鼻を持たせる!と言う意味だったんだね。
ああ、そうだな、そうなるな。俺は死ぬのか?
もう70歳超えるよ?遺産はたくさんあるから、もう死んでくれないかな。
ああ、そうする。俺は死ぬ。日本で俺の仇を打ってくれ。頼むぞ。




