第68部 桜子倒れる!! 緊急招集そしてターニャの救出へ!
1952年8月(昭和27年)モンゴル・ヘンティー山脈
「これは素晴らしい! とても綺麗だ。どれも工芸品の逸品だよ!」
通路は金色の人物像が、金の鏡で奥深く照らしているのでとても明るかった。夕日が差し込む時間でもあったし、なにより鏡の反射が奥まで届くように設計された、秀逸な技術が素晴らしかった。
全員は石像に施された装飾に見とれながら奥へ進む。進むにつれ奥では異臭が漂っている。智治は嫌な顔をして、
「臭いんですけど。なんですかこれは!」
「コウモリのフンですね。コウモリは北極圏を除き、全世界に生息しています」
「ゴルバチョーフさん、コウモリのうんちくよりもさ、捕まえてくれよ。今晩のごちそうにするからさ」
カムイコロは食べたい一心らしい。焼いて食べたらおいしいと言っている。
洞窟は入口から30mほどで石像や木像が無くなっている。この地点から上に階段が作られている。その奥が埋葬の部屋と思われた。
ここでゴルバチョーフの父・ウルガは全員を呼び止める。
「皆さん、ちょっと止まってくれないか。この先には何かの罠が在ったりするものだ。怪我をしたりするのは嫌だから、俺が先に安全確認に行く」
「俺様も行くよ。後ろは任せな」
カムイコロが一緒に行くと言った。照明のライトは全部で5個しかない。人が多いので洞窟の奥はかなり暗くなっている。
2個のライトを持って二人して階段を上っていく。カムイコロは安全を皆に知らせるために、杖で床を叩いて合図を送る。
「コンコーン、コンコーン」
一定のリズムが繰り返される。この音を聞く者は安心できるのだ。
「ばこ~ん! ドタドタドタ・・・・」
「きゃー、カムイコロ! 大丈夫?」
カムイコロが階段から転がり落ちてきた。ルカが心配して一番に駆け寄った。
「んな訳ないだろう。ひで~爺さんだ。この俺を突き落すんだからよ。参ったぜ!」
上のほうからウルガの声が聞こえる。
「ヒグマ! 大丈夫だったか~」
「ああ、大丈夫だよ、俺は死なないから心配すんな!」
「それは良かった」
ウルガはゆっくりと階段を下りてきた。ウルガの顔を見た者は一斉に笑い出す。ウルガは怒るが表情だけだった。みんなは何が起きたのか尋ねる。
「ああ、失敗したよ。踏み板を踏んでしまったよ。だから大きいのが転がったのさ。ついでに槍も5本が突き出たよ。泥も降ってきてこのザマさね」
ゴルバチョーフはとりあえず安心した。頑丈な老人だが今死なれたら困るからだが・・・。
「おう、息子よ、このワシはまだ死なぬぞ!」
「はいはい、お爺さん。空元気もここまででしょう。後は私たちに任せてちょうだい。桜子さん、さあ行きましょうか」
「・・・・・・」
「桜子さん?」
「あ、えぇ、行きましょうか」
「気分でも悪いのかしら? 大丈夫ですよね」
「はい、すみません。平気です」
全員が階上へ移動した。もう仕掛け罠は無かった。
ゴルバチョーフはゆっくりと辺りを見渡す。すこし考えた様子で、
「ここはボルジギン氏一族を祀る墓地のようだ。メルキト部族の「帝王」トクトア・ベキに関する祭祀の傀儡が多く添えられているよねだ」
「それと、この石棺は誰の棺桶だろうか。装飾からでは解らないね。コアイ・マラルなのだろうか」
桜子とクリナとアナスタシアは、石棺の奥の壁を見つめている。
綾香と彩香は、
「ここは何だかとても気持ちが悪いわ。私たちは外に出ていますから」
ウルガはそんな二人を気遣ってか、
「ルカとソフィアさんも一緒に二人に寄り添っていてくれないか。その方が安心だろうて」
4人は洞窟から出て行く。他の者も気遣って声を掛けた。その間に大変な事が起きた。桜子とクリナとアナスタシアは、石棺の前で倒れていた。
「桜子! クリナ! アナスタシア! どうしたの」
いの一番に気が付いたカムイコロが叫んだ。
「お母さん、クリナとアナスタシアがどかしたの?」
異変に気付いた二人が洞窟に戻ってきた。
「早く三人を外に出してちょうだい! 綾香と彩香はテレポート出来るかしら」
「はい、至急外へ運び出します」
綾香と彩香は母を伴ってテレポートした。カムイコロは力任せに残る二人を抱えて外へと急ぐ。このまま全員は洞窟から出て行った。
太陽はもう沈もうとしていた。だから洞窟は暗くなってしまう。綾香と彩香は元気が無くなった。それよりも倒れた三人が心配だった。
智治は、綾香と彩香に寄り添っていたが、大丈夫と判断し桜子についている。二人の教授はこれからの対処を考えているが、帰路につくのはいいが帰る方法を考えている。
男どもが集まり会議を行うが、全員は帰ろう! と言う。しかし、ここには巫女の力で来たから、巫女が力を無くした今は帰ることすら出来ない。
「今日はベースに移動することも出来ないから、ここでキャンプ・野営をする」
言うのは簡単だ。食事は今晩の分は何とか足りている。毛布や水が不足だ。皆は疲れてしまい寝てしまう。気を失った三人は、そのまま眠ったようで全員は安心した。娘の二人が言うのだから間違いは無かった。
翌日は倒れた三人も双子も元気になった。ただ桜子一人は委縮したままだ。
巫女ら6人の気力で、全員はベースに戻り一泊した。荷物は動物に襲われないように、高い木に吊り下げた。荷物は最小限に留めて帰路に着く。
ホテルに戻れば、また厳しい伝言が届いているのだが、そのような事は誰も気づかない。
「巫女たち! 根性だよ、最後のテレポートだ。頑張ってくれ」
「ぎゃー、もういやだよ~。誰かだずげで~~~~」
巫女は7人だが、
デルフィナとソフィア。 綾香と彩香。クリナとアナスタシア。クライ。クライは力をテレポートに使わずに、方位や地理の統率に傾注している。
1952年8月(昭和27年)モンゴル・ウランバートル
無事にとは言えないが、全員はホテルに到着した。いの一番はシャワーだった。ホテルのロビーではヒンシュクを買っていた。
真っ赤な頬をした女どもははしゃぎ出す。男どもは、早々に飲み始める。 ただ、智治と桜子の二人は皆に遠慮して、部屋で食事を摂り休んだ。
そのような一同に電報が届いた。もちろん、電話も掛けられてはいるが、常に留守だったから電報も送られていたのだ。
「ミスター、キノモト。電報が届いております」
「syuugekino osoreari keigowo katameyo」
「これは大変だ、至急全員を集めなくては!」
「と、先に電話だな」
デルフィナ ソフィア 綾香 彩香 クリナ アナスタシア クライ ゴルバチョーフ ルカ ウルガ カムイコロ 三浦教授 安部教授 桜子 智治 木之本署長 ニキータ の17人が署長の部屋に集まる。
「日本から電報が届いていた。ここは襲撃されるかもしれない! という事だ。したがって順番を決めて見張りを置く」
「あ、今日は俺ら男どもで固める。巫女さんは先に英気を養ってくれ!」
カムイコロは、
「署長、他には何か情報はあるのかい?」
「ああ、そうだ。明日ここを出て、イルクーツクに向かう。ターニャはそこにいるらしい? という事だった」
「そうですの。では、今晩はみんなが寄り添って休んだがいいですね」
「そうですね、桜子さん。老人も居ますから3部屋で対応しましょうか」
「それから、直ぐに荷物の用意をお願いします」
「日本からは、もうイルクーツク向かっているのですか?」
クライが尋ねた。
「もう向かっているのですが、到着にはあと3日はかかります。我々は2日ですので、1日早く着くでしょうか」
ソフィア デルフィナ ニキータ カムイコロ クライ 智治 桜子 綾香 彩香 アナスタシア クリナ ホロ ゴルバチョーフ ルカ ウルガ 三浦教授 安部教授 木之本
「この部屋割りでいいでしょう」
彩香が叫ぶ。
「あら? ホロお婆様が居ません!」
「あぁ!」
全員はホテルを探し出した。不安はあたり、ホロの姿は何処にも無かった。ホテルのフロントに尋ねても判らなかった。もっとも、この不安を口に出して言う者は誰もいない。
翌朝から一応ホテルの近辺を探してみるが、見つからなかった。このまま探し続けても見つからないと思い、涙を呑んでイルクーツクに向かうことにした。
「ゴルバチョーフさん。もしもの時の為にお父さんのウルガさんを、このホテルに数日泊まって頂けませんでしょうか」
「木之本さん、それは大丈夫です。この私からも父に頼みます。ですから、ここは早めに出立しましょうか」
「はい、イルクーツクで日本の部隊と合流しませんといけません」
「車とトラックは、智治さんらが準備をなさってあります。もう出来る頃です。私たちも荷物の積み込みの準備をしまして、待つ事にします」
「署長 !車のガスは満タン。ドラム缶にも半分ほど入れています。他、簡単な点検は自分で行いました。ばっちりですよ」
「うん、ありがとう。助かるよ。途中で止まったら地獄だよな」
「そうですよね。でも、食料の買い出しにはまだ時間がかかります。朝一から開店する店は無いものですから」
「あ~、そうですよね。あ!!! 朝市があるんじゃないの?」
「そうですね、車を出しましょう。女性を見つけたら乗せましょう」
ゴルバチョーフと木之本署長、それから智治がホテルのロビーで話している。気になる桜子は、いまだに元気がない。どうしたのだろうか?
女性らは朝市で買い物をしていた。車で食べる事が出来るものばかりを優先に購入している。年下? の順からか、デルフィナが一番多く荷物を持っていた。クライは会計係だろうか、品定めにはとても優秀だった。
こうして車とトラック、それから食材の用意が出来たので出発する。
「さ、ぼちぼち行きましょうか。今日は30度超えの暑さになりそうです。水は忘れていませんか?」
「キャッハー、すっかり忘れていました。ホテルから頂いてきます。クリナとアナスタシア、行くわよ!」
綾香が先頭切って水の準備を行った。
「綾香姉さんは、買い物には役に立たなかったし、ちょうどいいかもね?」
デルフィナが笑いながら解説した。桜子が最後にぽつんと、
「本当に困った子だね~。二人を足して2で割れたらいいのに・・・」
イルクーツクまでの中間のスフバートルでホテルに宿泊する。車から降りたら大地が揺れている感覚に? ふらふらとした足つきになった。
巫女らは、
「早くチェックインして頂戴! シャワーを浴びたいの。分かるでしょう?」
「そうだね、俺らも早く浴びたいよ」
浴びるほど飲みたい? のだろう。とにかく不謹慎である。(いったい誰だ?)
このホテルでも見張りは立てたが、役には立たなかった、のである。翌朝は頭痛で目が覚めたような? 男どもだったが、女どももクマを作っている変な顔つきだった。
このスフバートルのホテルでは、何事もなく過ぎる、はず?
「杉田さま、日本からお越しの杉田さま。お電話が入っております。フロントまでお出で下さい」
フロントから呼び出しを受けた智治だった。桜子も一緒にフロントへ。
「はい、杉田です。電話を受けに来ました」
「あ、杉田さま。申し訳ありません。お電話は先方から切られています」
「智治、そこをどいて!」
桜子は不安になり、智治の背中をとても力強く押した。智治は驚いてよろけるも、直ぐに立ち直る。
次の瞬間に・・・・・?




