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人狼 Zwei (ツバイ)  作者: 冬忍 金銀花


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第63部 再び、シベリアへ / クリナとアナスタシアの力(ちから)


 1952年8月(昭和27年)日本海・船上


 翌朝になり、各自色々な思いを抱いてロシアとモンゴルに出発する。予定外に三浦教授が混じっていた。


「三浦教授! お元気でしたか?」

「すまないね、杉田くん」

「いいえ、けっしてそのようなことはありません」

「安部くんの様子がおかしいので問い詰めたさ。そうしたら急にモンゴルに行くというので、ついて行く事に決めたよ」



「迷惑です! 命の保証がありません」


 桜子はきっぱりと言い放った。その後の言葉は無い。無言の了承だった。桜子も少しは安心しただろうと、智治は考えた。


以前と同じ航路でロシアに渡る。若い娘ははしゃぎ、大人は酒を飲んでいる。他にする事が無いのだ。路銀が乏しい前の旅とは違い、費用はたんまりと国から支給されている。


 はしゃぎ過ぎて一人の娘が船から落ちた。


「暑いから泳いでいるの? どお、気持ちいいかしら」

「うん、気持ちいいよ。みんなもお出で!」


 落ちたのは綾香だった。冗談を言いながらもテレポートですぐに船に戻る。船員は青い顔をして? 大慌てしていたが、船に戻った綾香をみて救助ロープや浮き輪をその場に落として唖然としていた。


「みなさん、お騒がせいたしました。すみません」


 綾香が謝った。彩香も頭を下げて謝る。桜子と船長も出てきた。


 船長は、


「お客様! 困ります」

「すみません、退屈している娘です。お許しください」

「いや、そうは言われましても、大事なお客様の命を守るのは私たちですよ」

 

 桜子は娘を集めて、


「船だけは沈めるんじゃないよ」

「・・・・・。」

「さ、船長! 奥でお酒を飲みましょう、よ」


 ニキータが娘たちの前に来て、


「好きにやれってさ! デルフィナも、てこ合わせして来な」

「違うよ、ママ。ここだよ!」


 デルフィナは自分の腕(こて)を叩いている。ニキータは涙を流して喜んだ。


 娘たちの5人は、綾香と彩香。クリナとアナスタシア。とデルフィナになる。ホロお婆様は長椅子を持ってきて横たわった。その横には智治が立っている。


 彩香と綾香は、


「お母さんが好きにやれってさ。船を壊さないようにしようね」

「船から落ちない、の間違いじゃないの?」

「ブー!」


「私たちにいい考えがあります」


クリナとアナスタシアの二人が提案することは?


「魔法陣です!」

「今から四方に張り巡らせますから」


「我らは白き万物の巫女なり」

「我が名はクリなり」

「我が名はアナなり」

「今、時の白き門を解放する」

「ボルテ・マジック」

「ボルテ・スクエア」


 二人は背中合わせになり、対になる呪文を唱えた。すると、船の左右にピンクの文様が浮かびあがる。次に船の前後にも魔法陣が浮かぶ。


「最後に!」


 二人は空を見上げた。空には大きい魔法陣が広い甲板の上だけに浮かぶ。四方は小さい魔法陣だが、隙間なく広がっている。


「出来たわ。ホロお婆様! 見ててください」


 ホロはにっこりとほほ笑む。そして、クリナはアナスタシアを船の外に投げ飛ばした。


「あ、投げた。落ちる!」


 すると? 空の魔法陣からアナスタシアが落ちてきた。一同から大きな喝さいが湧き上がった。


「おお、いいじゃないか。しっかり励めよ!」


 桜子が甲板に出てきて叫んだ。桜子の横には船長もいる。その後ろには船員と他の乗客の姿が見えた。


「いいんですか、お母さんは。何が起きてもしりませんよ」


 船長は語気を強めて娘らの母に忠告した。


「あいあい、大丈夫だよ。今からサーカスの曲芸が始まるのさ。船長も楽しんでくれないかい」



 クリナとアナスタシアの力は、魔法陣を張れることと、置換魔法、テレポートはもちろんだが、召喚魔法および、魔法陣を利用して色々な物を自由に飛ばすことができるのだ。


「今から、私たちの魔法をお見せいたします。みんな、いいかしら!」

「OK!よ、始めよう」


「わー、待って!まだ床と宙に張るのを忘れた」


「ボルテ・マジック・スクエア」


 二人が声を合わせて呪文を唱えた。


 二人は背中合わせになり、魔法陣を船の甲板よりも広く、海の上まで張った。


「いいわよ、自由にテレレポートでも、ダイブでも大丈夫だから!」


 男の一人がボトルを海に投げた。すると、客を目がけて空から落ちてきた。


「わー、なんだい、俺様に飛んできたぜ」


「皆様は危険ですので、お金以外は投げないでください」


 一同から大笑いが起きた。


 次の瞬間から、5人が飛びまわった。乱取り戦が行われた。


 飛びかかって船の外に投げられても、空から落ちてくる。甲板を外れて宙に立っても海には落ちない。また、追い詰められたら自ら魔法陣に飛び込み、背後に回って相手を投げ飛ばす。テレポートをしても魔法陣の外には出れなかった。


 それもこれも、ホロがクリナとアナスタシアの力を見つけ引き出した結果だ。クリナとアナスタシア以外の三人は、本当に驚いていた。


 空にある魔法陣から大きな物体がいきなり降ってきた。船員と客は全員が驚いて逃げていく。


「お待たせ!」

「遅れて来てなによ」

「俺も混ぜてくれないかい。力が余ってしようがないんだよ」


 デルフィナがヒグマに文句を言っている。デルフィナの目の前に落ちてきて一番驚いたからであった。


 ヒグマはカムイコロに変身して、驚いた人たちに謝った。


 船長さんが手を叩きながら甲板にやってきた。


「みなさん、もうすぐ夕食です。お風呂で汗を流されて下さい」


 船長は、先ほどと打って変わって穏やかな表情になっていた。甲板には幾らかのお金が落ちていた。そしてこのお金は船長に渡された。


 この余興ともいえる乱取り戦がもう1回見られた。



 1952年8月(昭和27年)モンゴル・ウランバートル


 船上の客も退屈することなく、ロシアに着いた。全員はシベリア鉄道の駅があるウラジオストクへ休み無く移動した。シベリア鉄道の車内が休憩となる。


 モンゴルのウランバートルが最初の目的地。ウラン・ウデ駅まで行きここで下車する。ウラン・ウデ駅はウランバートルの真北になり、一番近いのだった。


 ここからはトラックと乗用車に分乗して、ひたすら国道を走るのだ。ウランバートルまで500kは無いだろう。が、1日で駆け抜けるのは不可能だ。途中で休まないと、尻や腰が痛んでしまう。中間のスフバートルでホテルに宿泊した。久しぶりのベッドの上で眠ることができた。


 翌朝から休み無しでウランバートルまで走破する。


 到着すると年老いたゴルバチョーフさんとクライが待っていた。


「遠路はるばるよくお出で下さいました」

「まだまだお元気ですね、ゴルバチョーフさん」

「私どもはすっかり、ジジババですよ」


 桜子は教授の左足を強く踏みつける。


「ターニャさんのことは残念です。とても申し訳なく思っております」

「いえいえ、それもこれも仕方がない事です。帰省してからは何も起きませんでしたので安心した私どもが悪いのです」

「お父さん、そういう必要はありません。桜子さんと力を合わせてターニャは救い出しますから」


 桜子は思い出したように、


「ルカさんはお元気ですの? 早く会いたいな、懐かしいですもの」


「いやいや、それよりも、後ろにいらっしゃる綺麗なお嬢様を、さ、早く!」


 桜子ははっとするも、クライはニコニコして父の様子を見ている。


「はい、この双子が綾香と彩香で私の実の娘です。そして、こちらの二人が養子に迎えたクリナとアナスタシアです。次は、ニキータの娘のデルフィナ。それから、霧の娘の友人のソフィアです」


「これはこれは、お会いできまして嬉しく思います」


「で、夫になった智治です。分かりますか? 横はニキータの夫の新之助さん。それから、安部教授と三浦教授。です」


「もう一人お出でですが?」

「はい、ヒグマのカムイコロと言います」

「ヒグマ? ですか?」


「そうですね、ヒグマです。桜子さん、また忘れたわね。今回で2回目よ」

「はは、いつも忘れてごめんなさい」


 予約してあるホテルへ向かう。ホテルではルカが待っていた。


「今回は、妹のターニャためにありがとうございます」


 ホテルの部屋に上がると、白髪の老人(元館長の父=ウルガ)と、鹿の毛皮の帽子(ロシア帽のウシャンカ)を被った老婆が待っていた。


「お父さん、皆さんがお着きになりました」

「おう、よく来なさった。今日は暑かっただろう」


 三浦教授は暑いのが苦手なのか、


「不思議ですよね、こうも北の大地が暑いとは」


「ここのホテルは、どことなく日本の建物に似てますので落ち着きます」


 智治がホテルの感想を述べると、安部教授は、


「智治くんは知らなかったかい。ウランバートルの建物の多くは、日本人が作っているんだよ」


「ええ? 本当ですか! 知りませんでした」


「そうなんだよ、レンコンとニンニクの子供が作らせたのさ」

「レンコンとニンニクの子供? ですか・・・」

「レーニンだろう? そんな冗句は通じないよ!」

「はは、オヤジギャグよりもひどいです」


 三浦教授が茶化して解答した。この三人だけは元気だ。それだけここウランバートルが懐かしいのだろう。現に他の者はとても疲れた顔をしている。


「ゴホン!」


 ゴルバチョーフさんが咳払いをした。


「それは違います。スターリンがですね、シベリアから日本人の強制連行者を移送して、作らせたものです。強制連行された日本人は無賃でしょうから、補償請求の訴訟を起こしてもいいでしょうに」


 安部教授は、


「ええ、そう思います。日本人は優しすぎるとね」


「えぇ? こんな大きい大陸の真ん中に、日本人が建造した建物ですか?そうですか、初めて聞きました」

「このような歴史は教えませんもの。第一に、ロシアは金が無い! 貧乏だ!と、言ってるのと同じですもの」


「そうだね彩香さん、それに綾香さん。その通りです」

  

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宝石の一覧(案)

透明  ダイヤ 全宝石の中心  桜子

赤   ルビー         霧から沙霧

青   サファイヤ       麻美から澪霧 

黒   ブラック・スピネル   ニキータからデルフィナ

緑   エメラルド       クライ

白   ゴシュナイト      ミーシャからソフィア  

濃緑  ブラッド・ストーン   アヴローラからシビル

黄   琥珀   ヒグマ    カムイコロ

ピンク ガーネット       ミーナから彩香     (エストニアの章)

紫   紫水晶         アレクサンドラから綾香 (エストニアの章)

青   ブルートパーズ     彩香からクリナ     (イレギュラー)

緑   ヒスイ         綾香からアナスタシア  (イレギュラー)

黒   黒曜石       オオカミの牙(クリナとアナスタシアと同じ巫女)


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 一章を4000文字程度で書いております。話は進むのですが、最終章には

なかなか辿り着けません。残り、13~17章でしょうか。


 入れたくはなかった魔法を、途中から入れてしまいました。すみません。

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