第34部 大雪? 新年明けまして
昭和22年はまだ食糧難にあえいでいる年でもあります。
1947年12月(昭和22年) 東京都・神田
10月の襲撃より1か月と少しが過ぎる。学業も順調であるが東京も外人さんで何かと騒がしい。誤解しないで欲しい、騒がしいのは日本人の若いお姉さんたちです。ハイカラな外人さんを見つけては、キャーキャー言いながらついて行く人もあったりしました。
終戦を過ぎて民主化の教育がされるようになりましたが、地方ではまだまだ戦前の教育をする教師が居りました。それでも正しい近代の歴史を教えてくれるのならばいいのですが、間違った自分の思い込みが10年は続きました。
新しい教育に教師が付いていけないのが悪いのか、優秀な人材ならば教師はしていないのであつて、国が悪いという事かもしれません。特に地方の山間は悪かったようです。都市部の人員は不足しいい人材も採用できた。田舎ではそもそも人材の移動が少なかったです。女教師が多いようでした。男は爺。
昭和22年12月20日。二人はようやく解放されたか? 学業も休みになり、帰省の用意を始めていた。生活安全課には、巫女のバイト料、金一〇〇万円也の請求書を書いて持って行ったが、決済は下りなかった。
「ケチだよね!署長は。私たちがどれだけ働いて100円券を10万円にしてあげても、配当も無いよね!」
「もうお母さまには仕送りはもう要らない! と、言ってしまったし」
「学校の払い込み期限は、1月15日だよね。もう、どうしよう」
「二人でバイトに行こうか?」
「そうだね。二人寂しくお正月を迎えますか」
こんな無駄話しをしていたら、喜怒哀楽も抜け、きっとお母さまに聞こえるだろうと止めたが、他に話す話題も無い。
ソフィアはロシアに帰りたいけど費用が高いので、アパートで蟄居すると言っていた。
「ソフィアを実家に誘おうか」
「そうね、それも有り? かな」
「クマ巫女さんはどうしてるかな? 麻美お母さまと仲良くなっていたよね」
「牧場で働いているかも」
「いいえ、冬眠ですわよ」
「ああそうか!」
「お母さまを無視すると怖いですわ。大人しく帰りましょう」
「そうね、一般参賀には飛んで来て行けばいいわ」
「では、帰りますか」
「はい、お姉さま」
「フュージョン!」
「澪! あんた、少し胸を大きくしてもらったでしょう。半分よこしなさい。今なら半分こが出来るから」
「あ~ら、嫌ですわ! お姉さまの僻みが、こんなに大きいとは思いませんでしたわ、半分こにはいたしません」
「フュージョン、終了! と」
姉妹で右左の大きさが変わっていた。ちょっと! それは可笑しいのでは?
「只今~! お母さん」
「只今です、お母さま」
「はい、おかえり。早かったわね」
「あらあら、あんた達はもう。それは可笑しいわ。澪に返しなさい」
「フュージョン!」
これで元に戻った。澪にとある部分が戻された。
「なによ、あんた達。漫才でもしているの?」
「麻美お母さま、こんにちは」
「もう、麻美お母さまのイジワル!? ですわ」
「はは、そうかい」
「それはそうでしょう。母、爽快! ですわ」
「お父様とホロお婆ちゃんは?」
「うん、あんた達が来るので、実家まで戦争に行ってるよ」
「まだ戦争をしてるんだ。お母さんも行かないと、勝ちませんわ」
「うん、そうなんだけれども、下の双子が同行してるから大丈夫だよ」
「あ、そうか。今日は大漁だね。牧場の牛さんは食べつくしたかな」
「そうよね~。今日からは馬になるかもよ」
「え~、イヤだ! 馬さんが可哀そう」
裏手で、ドスン! コケーコッ、コケコ。大きな地響きと、ニワトリの鳴き声が聞こえた。次に、
「キャー、ワーッ! ギャー!」
「なによ、あんた達、度胸が無いわね~」
「イテテ!」
「キャー、嫌よ。ダメー」
「お父さん! 鳥違え? たの?」
「いや、ターキーだ。クリスマス用だよ。まだ食べないからね」
「丸くて大きい。お姉さまみたいだね」
彩香が何かを姉に例えたらしい。いったい何を姉と?
「チョット、彩香! 何が私と似てるのかしら?」
「あら、お姉さま。お帰りなさい」
「はい、只今。二人とも元気にしてた?」
「チョット! 澪。何甘やかしているの。今、とっちめているんだから」
「澪お姉さま。彩香は何も言ってません。本当です、信じてください」
「ほんじゃ、綾香だな。何が私とそっくりなのかしら? あ、ああん?」
「私の口ではありません。違います」
「じゃあ、誰だい? あ、ああん?」
「俺じゃないからな~」
父は危険を感じて一目散に逃げていった。姉妹の喧嘩は殆どが食糧の奪い合いだったが、それも過去の話しだ。母と父が、母の実家から牛を1頭連れて来るようになってからは、起きてはいない。平和が続いていたはずだ。
綾香がターキーを見て言ったのだが、本人は違うという。おかしいのだ。
「私です」
デルフィナが物陰から出て来た。母の農場と近いからたまたま近くに居たらしい。面白そうだから付いて来たという。沙霧の問いかけに、
「なによ、デルフィナ。びっくりしたじゃない。いつ来たの?」
「うん、牧場からついて来たよ。何やら面白そうだったからね」
「何処が面白いのよ。私たちも生活が苦しいのよ。笑わないで!」
綾香がやや語気を強めて怒りだす。
「第一、私の声色で何を言いたかったのかしら? あ、ん?」
「だって、七面鳥の羽と尾っぽが、お姉さんたちのコスプレみたいに見えたんですもの。つい、笑ってしまいました」
と、デルフィナが返事をすると、
「あ~あ、そうよね~。本当にお姉さまに似てるわね~」
彩香が大きい声で反復するような、感想を言った。沙霧が怒ろうとしたら二人はもう消えていた。逃げたのだ。沙霧は直ぐに矛先をデルフィナに向けたのだった。
「デルフィナさん? 今日はお泊りでお願いしますわ。勿の論ですよね?」
「勿論ですよ、お姉さん。喜んで~」
「お母さん、デルフィナがお手伝いに来たから、ちょっと中島公園まで遊びに行ってくるね」
「いいよ、早く帰っておいでね」
三人は「は~い」続いて二人が「行ってきま~す」5人で飛んで行った。今日は積雪もあり、中島公園は無人のはずだ。
「さ、デルフィナ。覚悟はいいかしら」
「何を仰いますか、お姉さん」
「いざ!」
三人は巫女のソードを出して、打ち合いを始めたのだった。
「デルフィナ! 剣の稽古をしたかったんでしょう?」
「ええそうよ。しっかり相手をしてね、お姉さん」
デルフィナは、二人相手では勝ち目がなかった。終始押されていた。
「泣くなよ、デルフィナ!」
「だって、悔しいじゃないですか」
「それでは、1対1にしますか?」
「うん、お願い」
「澪が先に行ってよ、手抜きだけは絶対にダメだからね」
二人は向き合ったまま動かなかった。互角の力関係なのかは判らない。札幌の路面電車のササラ電車が通おる音が聞こえる。
キタキツネが「コーン!」と鳴いた。二人が彩香の? 合図で二人は立ち合った。
「何よ、彩香。意味不明な声出さないで!」
「いいじゃない、お見合いで始まらなもの」
「あの二人が笑ってるよ。怪我するから止めてちょうだい」
「は~い、そこまでよ。ソードでは警察のお世話になるわ。竹刀を用意したから、取り替えようよ」
彩香が何処からか竹刀を5本用意していた。始めから用意してたの?
「ねえ、お姉さま。お姉さま二人と、デルフィナと私たちの3人で対戦しない?」
「2対3で?」
「そうね、2対2のね。私たちは交代ありで、どうかしら」
「デルフィナはそれでいいかしら?」
沙霧がデルフィナに尋ねた。
「いいよ、2対2なら負けないわ。彩香さん、お願いね」
「OK!じゃ、行こうか」
5人の乱戦が始まった。3分で立ち合いは終わった、終わってしまったのだった。竹刀が澪が持つ1本を残して折れてしまっていた。隅田川の河川敷での練習では折れなかったのだが。
「澪の一人勝ちでいいかな」
「うん。構わないわ。それにしても、妹たちは強くなってるね。どこかで研鑽を積んでいるの?」
「全然だわ、そんな所を母に見られたらイチコロでお説教だもの」
「そうよね。姉さんたちも四苦八苦してたしね」
「あ、そうか、だから東京に出たんだ。そうでしょう!」
「まあね、でも違うわ。勉強もしたかったしね。農場も無いから農学部には用は無かったね」
「デルフィナは農学部行く?」
「両親がお金出してくれるならいいけれども、仲たがいしてるから無理かな」
「そうでもないと思うけれど?」
「・・・・・・」
「あれは、お父さんじゃない?」
「ああ、ホントだ。お迎えに来たのかな」
遠くから一人の男性が歩いて来ていた。巫女には遠くても見えるのだ。
「もう憂さ晴らしは済んだかい?」
「はい、お父様。澪姉さまの一人勝ちで終わりました。これ見て下さい」
下二人が持っている竹刀を見た。全部折れてしまっていた。
「どうしたらこうも折れてしまうんだい。大木をぶっ叩いていたのかい?」
「そうよ、でも大木には傷もつかなかったわ」
沙霧が答えた。
「では帰ろうか。もう直ぐ夕飯になるよ。今日はメンバーが多いからさ、早く飲みたくてね」
「なんだ、お父さんの都合か。デルフィナ、行こうか」
「はい、お姉さま」
今日は、教授の皆様も見えるから大変だ。娘も来ていたから、大いに賑わったのだった。このまま平和に年が越せた。雪だけは大いに降って積もっている。
1948年も幸在らんことを。
ようやく最終章が見えてきました。63章ほどで終わる予定です。
3作目はかなりの長編を予定しております。
この小説を読んで頂きました皆様には、ただただ感謝です。
まだ文章の書き方が定まっておりませんので見苦しいのですみません。




