第31部 東京乱戦 終結
1947年10月(昭和22年) 東京都・港区
「ブヒョッヒョー!」
桜子は笑っている。これが桜子の本性だろう。もしくは、思考回路が切れてショートしている。夜叉の仮面を着ければ立派な巫女で通じる。第一に安全課は顔見知りにも係わらず近寄りもしないのはなぜか!
木之本署長の夫妻ともに殴り込みに行った。我が可愛い巫女も飛んだり跳ねたりと、まあ忙しい事。若いっていいわ、感動すら覚える桜子だ。
「綾香! 彩香! あの老夫婦の援護をしっかりなさい。外したら怒るわよ」
「はい、お母さん。任せてください」
弓の矢は何処からともなく湧いてくるのか、少しも切れる事がなかった。地上戦のヒグマと巫女の4人は連携が取れていない。ヒグマの単独はまあ仕方ないしてと、巫女の3人の連携は良いのだが、若干一名が単独行動で戦っていた。人狼兵を馬扱いしている。兵から兵に飛び移ってボコボコにしながら、最後に
ロングソードで一突きにしてトドメを刺していく。
「デルフィナはもう仕方ないわね。でも、ま、あれでいいか!?」
見慣れない人狼が戦っている。およよ! ギコチナイ人狼だね。ああ、ニキータの旦那か。初めて人狼になったんだね。
「こら! シン。しっかりぶち込め! ぶち噛ましたれ! 後は巫女に任せるんだよ」
「ああ、そうしてるよ。でも人数が多くて敵わないよ」
「こら、ニキータ。シンを助けな!」
「なにほざいてるんだい! 桜こそぶっ放して援護してよ」
「見てないではようせい!」
桜子は扇子から機関銃に持ち替えてぶっ放した。撃つ、撃つ、撃つ。
「これは気持ちがいいわ。なんぼでも撃ってあげるわよ。次! 弾持ってこい!」
安全課の古田が恐る恐るしながら持って行った。
ががががっ!ががががっ!一呼吸おいて、ががががっ!がががっ!がががっ!人狼兵は悉く倒れていく。倒れた者は1分程度で再起して戦いだす。
「桜子さ~ん。頭を狙って下さい。眼に当たればもう動けませんよ」
「あいよ、眼ん玉だね! キン**はいいのかい?」
「そこはダメです。再起不能では可哀そう過ぎます」
「そうかい、では遠慮なく下を狙わせてもらうわ」
ががががっ!キンキン!ががががっ!キンキン!ががががっ!キンキン!人狼兵は悶え苦しんでいる。
「あら、本当だわ。再起不能で転がっているわ。これはいい!」
ががががっ!キンキン!ががががっ!キンキン!ががががっ!キンキン! 桜子の執拗なまでの攻撃が続いた。この時人狼兵に異変が起きた。
「タマ切れにするつもりか?」
「なによ! タマ? とは、どっちの意味かしら?」
人狼兵は覿面に怒り出した。我が同胞がタマ抜きにされているので応援・救護に集まってきた。
「わ! 来るな。この野郎!」
ががががっ!キンキン!ががががっ!キンキン!ががががっ!キンキン!
「こらぁ、巫女ども。助けろ! キン**が多くなって敵わん!」
「あらまあ! お母さまったら、はしたないわ!」
「そうですわね。放っておきましょう」
「そうですわね。緊張感が少なすぎですもの。お灸の代わりね!」
「どの口が言ってるんだい。後でしょうちしないよ!」
「綾香! あんたが援護しなさい」
「OKよ、お姉さま。任せて!」
キュン!ががががっ!キンキュン!キン!ががキュン!ががっ!キンキン!キュン!ががキュン!ががっ!キンキュン!キン!
もう表現の方法が無い。矢が飛んで来る音と機関銃の発射音。それに***当たる音、何とも表現が難しいことか。
人狼兵の統率が乱れてきた。前方は立ち止り、後方は怒り狂って大声で叫ぶ。横は巫女らに襲撃されて倒されていくばかりだ。おや!後方はデルフィナとヒグマが戦っているのか。
「ちょっと、ヒグマのお姉さん。こう一度に私に人狼を投げないでよ。自分の分で精一杯なんだからさ」
「なに言ってるの! 十分にトドメを刺しているじゃないの」
「巫女らしく、可愛くトドメを刺したいのよ。私の美学にケチが付くわ」
「えぇ~い、ちょこまかと! 逃げるんじゃないよ。覚悟をし!」
「何を言うか! ブタ巫女!」
「このう、俺さまをブタ呼ばわりか! 俺はクマ巫女だ! 間違えるな」
「図体がでかいから、ブタ? だろうぜ、違うか?」
「でかければ、ブタ? かい」
「いつも食べてるから、ブタ! だ」
「もう面倒だ! ヒグマ! 10人纏めて放ってくれ! 串刺しにすっからさ」
デルフィナは疲れたせいでやや怒りっぽくなってしまう。ヒグマの巫女は喜んで放り投げる。それをデルフィナが串刺しにする。
「粗方済んだわね。もう人間に戻ったのが逃げて行くわ」
「署長、おいシン! もう残りはいいからさ、人間に戻りなよ」
「ニキータ! 二人でここの再指揮を執るんだよ。いいね」
「桜はどうすんのさ。弾は無くなったのかい?」
「いや、身体中が煙臭くなってさ、着替えに風呂に行きたいのさ」
「どさ?」
「ゆさ!」
「ああ、行っといで! 後は任せていいよ」
ここで桜子は退場する。打って変わって、機動隊が前方に出て来て一斉射撃を始めたのだった。どれだけ桜子が恐れられていたかが解る? というものだ。
「全員! 一斉射撃……開始~!」
署長は叫んで指示を出した。
「ニキータさん、巫女の5人と2人を呼んでくれないかい。もう十分に働いてもらったからね、一休みして頂こうじゃありませんか」
「そうだね。呼び戻すね。後は一斉射撃で撃退するのかい?」
「もう逃げ出しているだろう。後の掃除はサイコパス所長に任せるさ」
「そうだね」
「俺は安全課の署員を集めるよ」
「おお~い、巫女のみなさ~ん。戦闘終了にするよ、集まって下さ~い」
安全課の署員と巫女たちは途中途中で戦闘をしながら戻って来た。屋上の二人も降りてきた。開戦から2時間は経過したようだ。
ホロと悠木さんが全員の着替えらしき服を持ってきた。もちろん桜子と旦那も一緒になって運んできた。
「みなさん、お疲れさまでした。これで戦闘は終結しました。我々の完全勝利です。これより慰安会を開きますので、各自着替えて銭湯! に行きましょう。そして慰労会を行います」
着替えを支給された全員は一か所に集まった。署長夫妻は双子の妹らに何やらお願いをしているようだった。
「全員を連れて60年後に飛んでくれないかい。スーパー銭湯で入浴と宴会を行いたいのさ」
「わ~、署長さん、すてきだわー。喜んでみなさんを連れて行きます」
「ねぇ~、お姉さま! 協力をお願いします。デルフィナさんもお願いね~」
「いいですわよ!」
「ああ、いいよ」
「ヒグマのお姉さんは人間の姿に変身してください。熊の姿では行けませんわ」
「おうよ! 直ぐに変身すっから」
「あのう~木之本署長さん、お金のほうは大丈夫ですの? 百円券は使えないと思うんですが?」
「ああ、心配は無用さ! 証紙を貼った100円札を20枚用意していますので」
「2000円ではとても足りるとは思えませんが・・・・・?」
「はい、証紙を貼った100円札を60年後の通貨で1枚を5万円で売ります。一人あたりで3万円にはなります。これだけあれば豪遊できます。ホロさんから聞きましたので間違いありません」
「・・・・・・・・・・・・」
4人はあっけにとられて、空いた口が塞がらない。ホロお祖母さんはクスクス
と笑っていた。
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1946年(昭和21年)2月16日に,インフレーション対策で新紙幣(新円)の発行が行われている。新紙幣の不足で旧円紙幣に証紙を貼り新円として流通させた。
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巫女ら9人と人狼の署長が手を繋ぎ円を作った。この円の中には安全課の署員が集まっている。総員で25名にはなった。綾香と彩香の念で巫女らの力が合わさり瞬時に60年後に飛んだ。理解が出来ない人員・大よそ11人は大騒動になってしまう。事前に説明もなされないのだから無理も無いことだ。
署長とホロはコイン商の店に証紙を貼った100円札の売り込みに行った。
「領収書を下さい! 2000円ですが・・・」
「受取書を下さい! 200万ですが・・・」
署長は、銭湯と宴会場の費用の清算時に、
「領収書を下さい! 日付は、昭和22年10月12日ですが・・・」
「はい?」
銭湯は広いので関係は無かったが、宴会場では騒がし過ぎて、他の客は早期に出て行ってしまった。夜更けまで宴会が続いたのたった。見た事もないご馳走がテーブルに並ぶから当然だろう。貸切状態になり、宴会費用は30%増しの請求書がまわされた。他の逃げた客の損失分には多すぎだろう。総額が65万円となった。この領収書は警視庁での決済は下りただろうか。
閉店間際に10人の男が来たが、閉店前だからと、断られて帰っていった。




