↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人狼 Zwei (ツバイ)  作者: 冬忍 金銀花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/91

第30部 東京 家族乱戦 Bパート そして集結!


 1947年10月(昭和22年) 東京都・神田


 ニキータは娘の顔も忘れた”と、言っているが、本家本元の杉田家では?


「桜子さん、そろそろ機嫌を直して下さいよ。双子ともう一人が可愛いそうです」


 台所から声がする。


「昨日はあんなに心配して駆けつけてさ! 分かりあって泣いてたのにさ、どうしたんだい? どうしたいのさ? もしかして、自分でも判らない”とでも言うのかい? それじゃぁ、娘が可哀そうというものさ」

「・・・・・・」


「桜子さん、愛想尽かして下の双子は何処かにいっちまったぜ。いいのかい?」


「ミーシャさん、もうソフィアと帰ったらどうだい? 今日あたり、あの署長が何か言うてくるだろうさ」

「ヒグマさんはどうするんですか?」

「上野に仕事があるらしいので、東京に残るよ。人間に戻りたいしね。この件は、桜子に一任さ!」


「檻に入るのですか?」

「それもいいね!」

「変な熊さん!」


「沙霧、澪霧。二人ともおいで。お話ししましょう」


 母の呼ぶ声が聞こえる。久しぶりの母らしい、優しくて穏やかな声だ。二人は警戒するも、元気よく、


「は~い、お母さま」「何でしょうか?」

「今日は辛く当たってしまい、ごめんなさいね」

「ホロお祖母さまは、お仕事も行かせないでごめんなさい」


「ううん! 私たちは大丈夫よ。だってお母さまの娘ですもの」

「そうだよ、桜子さん。孫を信じておやりよ。ね?」


「はい、ホロお母さま。お母さまにもご心配をお掛けしました」

「さ、沙霧、澪霧。あの人狼兵の事は、今後はどうするのかい?」

「私たちも困っています。だって、ロシアの人が、エストニアのお礼だ! といって人狼兵を差し向けるのですもの」

「そうですよ、逃げても追いかけて来るし、大体が、お母さまたちの戦いが尾びれに火を点けて来るのですもの。私たちは被害者ですわ」


「ホロお母さまに文句を言ってちょうだい!」


 桜子は、少し弱気になったのだろう、ホロをお母さま、と呼び出した。娘は娘だけれども、血縁は無い。ホロと霧。霧と智治。智治と桜子、の関係だ。


「ええ、そうします。ホロお祖母さまはこの件に関して何とお考えでしょうか」

「ただただ、巫女の呪われた血筋が、としか言えません。お許しください」


「お祖母さまのせいではありませんのも、そう言わないで下さい」

「うう! ありがとう、二人とも。ありがとう」


「お母さま、私たちは逃げても人狼兵が寄って来ますので、頑として戦いますわ。でないと、囚われてしまいます」

「そうよね、私も訳が分らずに3年は戦い続けました。もうダメか!と思った事も10回以上はあります。母として応援せざるを得ないでしょう」

「ホロお母さまも二人を助けてください。お願いします」


「無事に仲直りができました。良かったよかった」


 台所から声が聞こえた。


「ホントですわ! 桜子小母さまから殺されるかと思いましたわ」


 玄関の外から声が聞こえた。


「私も引退しないといけないね。これも巫女の定めか……」


 生垣の外から声が聞こえた。


「あらら、みんな! どうしちまったですか?」


 何処からともなく、デルフィナの声が響いた。


「あ~ぁ、お腹が空いた。熊の姉ちゃん、なんか食べ物ちょうだい!」

「あいよ、これしかないけれど、全部いいよ、食べな!」


 今朝の味噌汁が鍋ごと差し出された。デルフィナは受け取り一気に飲み干した。


「さ、今日も戦闘開始だ! 双子と双子。何処に行ったかな。誘いに来たのだがな」

「下の二人は多分、秋葉原だろうね。上は隣で親子水入らずだね。声掛けんじゃねぇよ。あんた、今までどこほっつき歩いていたんだい?」

「人狼兵の討伐にさ、ちょっくら行ってたさ」

「そうかい、何処かの母親が探していたぜ。顔を忘れられる前に帰んな」

「そうすっか。あんな婆あはロシアまで蹴飛ばしてやるよ。敵陣視察に刺殺! だ」

「お元気な事で・・・・・。あんたの娘はここに居るよ。早く捕まえて!」


 木之本夫妻が肉まんを沢山持って杉田家を訪ねて来た。デルフィナを見るなりニキータは飛んで逃げた。予知能力があるらしい。デルフィナは腹いっぱいで機嫌が良くなった。


 木之本署長は改めて、巫女の4人に人狼兵の討伐を依頼した。桜子は終始無言で口は出さなかった。


「でありますから、今晩からは人狼兵も総力戦に打って出るようです。我々も機関銃を10丁用意しました。これで手足どころか、なんだ頭も砕いてみせます」

「へ~、そうなんだ。出来るかな?~~~。出来ないだろうね~~~」


 デルフィナがそう言って水を差す。デルフィナは間違った事は言っていないが、誰も信じない。動物園の戦いからは、数段に強くなっていた。学習能力が身についていたからだ。今晩から火ぶたが切られた。安全課の事務所が襲撃された。


 最後に桜子は、


「私の機関銃は……八丁、口八丁さ!」



 1947年10月(昭和22年) 東京都・港区


「署長、木之本署長! 大変です。人狼兵の襲撃が始まります。総員でこちらに向かう、と通告があちました。この兵の背中を見て下さい」


「なにない、今晩は、はい、今晩は。貴殿の事務所を総攻撃いたしますゆえ、多数の巫女を参列させて頂きますよう、ここにお願い申し上げます」


「署長、なにとぼけた事を言ってるんですか。戦闘の準備を早くして下さい。もう地下に全員が揃っております」


「よっしゃ! 酒と杯を持って来てくれ。先勝の祝いを行う」

「赤城の山だね・・・」


「シン! お待ち」

「なんだい、ニキータさん。今からカチコミされるんだからさ」

「うん、これ、お守り。もう一つの黒の宝石よ。持ってて。もしもの時に助けてくれるから。死なないでね」

「おう! ありがとう。死なないよ」


 署長ら三人は地下に下りていった。署員全員はタスキ掛けの銃弾を二重に三重に肩から掛けていた。やる気満々だ。


「母にも1丁お願いします」


 双子も参加していた。母とは桜子さんだが、ミーシャさんも居る。


「銃刀法違反で逮捕しますが、よろしいでしょうか?」

「ええ、逮捕して札幌に護送をお願いします。今回は物凄い恨みを買いますのでどうしても護送でお願いします」

「署長! サイコパス所長も来ていますよ。なにやら、新兵器が完成したらしい、と、大きな鋏と鋸を持って来ています」

「好きにさせとけ! 絶対に死にはしないさ」


「全員、武器は所持したな。ヨシ! 迎え撃つぞ!」

「オウー!!!!!!」


 全員出撃する。東京総決戦の始まりだ。サイコパスの所長の新兵器とは、いったい何だろうか。瞬時に人間に戻せるものならいいのだが。多分、役に立たないだろう。


 警視庁の機動隊は到着していて、バリケードを築いている。付近の住民の避難誘導もなされている。土嚢を前にして待ち構えて待機した。


「来ました。物凄い数です。刀と盾を持っていますよ、署長?」

「ああ、そうだな。でもこちらの機関銃は盾もぶち抜くさ!」


 一斉射撃がなされた。銃弾は、カキン、カキンと盾に当たり跳ね返される。署長は青ざめた。機関銃が利かない。語気が強まる。


「全員! 足と頭を狙え~。撃て~」


 全員は一斉射撃を開始するも、恐怖心で中々当たらなかった。ただ一人だけを除いて。


「おらおらおら! てめ~ら全員死んじまえ!」


 桜子は、捻じり鉢巻きとタスキ掛けで土嚢の上に立ち、乱れ撃ちを行っていた。臆するところは微塵も感じられない。怖気づく署員に激! を飛ばす。銃口を向けるのだから、全員が逃げ出してしまった。


「あらあら! あら。きんOOが小さいのね。困ったわ」

「ちょっと、お母さん。銃を向けるからですよ。脅かしてどうするんです」

「まぁ~、そうですわね。あんた達だけだね。ヒグマと一緒に暴れておいで!」


 そう言って桜子は機関銃を放り投げ、日の丸の扇子に持ち替えた。応援体勢だ。署長にも激を飛ばす。


「あんた、それでもニキータの旦那か! しっかりおし! さ、あんたも打込みに参加しなさい」


 桜子は何処からともなく日本刀を取り出して、署長に手渡した。誰の刀だろうか。桜子の刀なのか。署長も捻じり鉢巻きで飛び出した。ニキータは驚いて、


「シン! バカな事は止めて。代わりに私が行くわ。ちょっと、桜子! シンを焚きつけないで。お願いだからさ」


 ニキータは署長から刀を取り上げて突進した。安全課のビルの屋上からは、妹の双子らが弓を射って援護をしてくれる。


桜子は笑っている。


「ブヒヒヒィィ!」

 いやはやなんとも、不気味な笑いだことか!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。