第19部 剣の鍛錬 スキルUP
1947年10月(昭和22年) 東京都・神田
ロシアのとある研究者からの2通目の挑戦状が届いた。内容は、
「昨日の完全勝利をお祝い申します。本日からは兵士らにも刀を持たせますのでご通知いたします」
「名前の無い研究者より……熱い秋波を籠めて!」
三者三様、誰の言葉かは好きに当てはめてください。
「大正ロマンだわ~」
「なんで熱い秋波を送るのか理解できない」
「この秋波(しゅうは)とはもう意味わかんない」
芝浦の戦いの翌日「コスプレ! 娘三姉妹!」の特訓が始まる。
「沙霧と澪霧、今日から決め技の特訓をしましてよ」
「お母さまにもお手伝いをお願いします」
「三人分の食事とお風呂の用意と……それからー」
「まだ要求するのかい?」
「場所は、隅田川の河川敷がいいわ」
「いちいち飛んでバケツで水汲みは大変なのよ、ソードの剣技を磨きましょう」
「セメントの袋は40kで持てないから、もう嫌よ」
「私だって公園の砂をバケツで持って来るのも嫌よ」
「もうショット! は禁止ー」x3
「最初は二対一の戦闘方式でやってみましょう」
「沙霧と澪霧の二人と私ね」
ガチャン、ガキン、バシッ、剣を当てるごとに火花が散る。
「きゃー殺されるー。もうたんま。もう勘弁して!」
「ファイヤー・ソード」
「アクア、ソード」
「ロシアン、ソード」
「この三本の決め技だけでいいわ」
「次は弓にしましょうか」
「隅田川の向こう岸に案山子を立てたから狙ってみて」
三人とも弓に変えて矢を射るも三人とも外した。的が遠すぎだろう。風も吹いているし風速とか見える訳でもない。事実上当てるのは不可能だ。
三人の頭に言葉が走った。
「眼で見て射るのでは無く念じて射るのよ、そうすれば全部命中よ!」
二射目からは全部的中した。
「そうなんだ良く分ったわ」
「次は槍と薙刀ね」
三人とも頭上で振り回すだけで終わった。先に仕掛ける方が分が悪く負けるのだ。仕掛けて跳ねられて撃ち込まれる。これ以上何も無い。
「次は両手剣、日本刀ね。でも怪我したら怖いから藁人形でしましょう」
一刀両断、何も進展が無い。
「ねえ竹刀でしないの?」
「はは竹刀か。そうしよう剣道部まで飛ぶわよ」
学校の講堂に飛ぶ。見つかるといけないので更衣室まで。
「竹刀を3本下さ~い」
「また来たか帰れ! ここには何も無い。帰れ」
「また追い返されたね。澪? 3本をいつ失敬したんだい?」
「昨晩ね。だからまた来たかと言われたのよ」
「澪一本頂戴、乱戦して来る。ストレス解消ね!」
五分で沙霧は戻った。
「河川敷まで戻るよ。ここは練習にならないわ」
部員は総崩れになっている。部員こそいい迷惑だ。沙霧は卒業まで恐れられた。部員の勧誘とか全員で拒否されている。この事件が無ければ卒業生代表に即決だったかもしれない。
隅田川の河川敷で練習に励んだ。竹刀ならば警察を呼ばれる事は無くなる。もう逃げなくていいのだ。公園で練習していた時は何度も通報されていた。
「必殺技……食らえ!」
飛び上がり上段の構えで振り下ろす。
「ファイヤーソード」
横にかわして沙霧の背後から横一線に竹刀を振り回す。
「アクアソード」
沙霧の着地と同時に右上から竹刀を振り下した。
「ロシアンソード」
三人の乱取合戦になる。動きが速くこの前の三人とは思えない素早い動きだ。五分、十分と続いた。堪りかねてソフィアは瞬間移動で後方へ飛んだ。もうそこには澪の竹刀が横一線で振られていたのだった。ソフィアは竹刀の柄で受け止める。両手拳の間で僅か五cmの隙間で受け止めていた。
「ソフィア! もうあり得ない。渾身の一撃を放ったのに」
「へなちょこの打ち込みが当たる訳ないでしょ」
「甘いな! ソフィア。一本貰うよ」
「残念ね無理よ。澪が打ち込みに来たわよ」
「隙あり! 姉ちゃん、負けたり!」
ソフィアは身をかわして右足を出す。沙霧はソフィアの右足に躓きよろける。無慈悲にも澪の竹刀は沙霧のお尻を直撃した。お尻ならばアザにはなるまい。
「ギャー痛い! 何すんの澪!」
沙霧が振り向いた一瞬にさらに澪が襲いかかる。ソフィアは澪の竹刀を受け止めて沙霧を助けた。
「ダメよ澪、お姉ちゃんは負けたんだからね。大きいアザを作ったら鬼になるから怖いよ」
「ソフィアありがとう。澪のこと助けてくれたんだね」
「はは、そうだね。大いに感謝しなさい」
「足のお礼は明日にするね」
「もう帰ろうか。お母さんから角が生えるような気がするの」
「うん帰ろう」「うん」
この後は好きに解釈されてください。
「お母さま。只今戻りました」
「お帰り少し早いね」
「双子がお夕飯のお手伝いをしたいからと言うので帰ったのよ」
「ブーー」x2
「あらありがとう、もう済んでるわ。アジの開きと焼きナスね」
「わー凄い。なんたってナスが半分というのが凄いわ?」
「四人だからちょうど良かったのよ。半分ですまないね」
「ナスのヘタの方が私たちかしら? はるかに小さいですわ」
「そうよ、当然でしょう。イソウロウ! ですもの」
「お姉さま、直ぐに立場を逆転させましてよ」
「ターン、ザ、テーブル」
「ほら、お姉さま、大きいナスになりましてよ」
「小母さま! 私たちからの差し入れです。大きいですわよ」
「そんな大きい鯉は無理だよ。そうだ澪ちゃん、なますにして」
「三分で用意します。小母さまはお酒の買い出しをお願いします」
女四人で乱れた酒盛りになった。鯉が一メートルもあるのだから食べきれない。半分は近所に配られて、味噌、醤油、塩に換わった。




