間章 2
机に突っ伏す…
「お昼にしよっか。月奈、机くっつけてよ」
「うぅ〜〜〜」
「はいは〜い、夜更かしでもしたの? あのマジメな月奈が居眠りするなんて」
昼の日差しに誘われて、つい眠ってしまった。
「ちょっとねぇ〜、ふわぁ〜〜〜」
ポケットから携帯をとりだしメールをチェックする。
………。
「ふぅ〜…」
一呼吸…
手に握られた携帯から目を離すと、どこからか溢れてくる感情で頭を絞めつけられる。
「どうしようかな…。知ってないからこんなこと言い出すんだろうな、きっと」
真弓先輩からのメールを頭の中から引っぱり出した。
「良かったら部活の皆で食べに来てね。うちのケーキはおいしいからさ」
真弓先輩が『知って』いたらこんな誘いのメールはしないだろう。浩行君と健二先輩は口を
全くきいてないっていうのに。やはり健二先輩は真弓先輩に心配かけたくないんだろうな。気
持ちは分かるけど、健二先輩、それじゃあ前に進めないですよ…。
「でもやっぱり断れない…。けど、浩行君はダメだね…」
独り言を言ってると、手から振動を感じる。真弓先輩からのメールだ。
「………そうだね」
財布から一枚の写真を取り出す。何度も見たせいで、角が丸くなってしまっていた。
それは時が止まっている…。でも私達の時は進んでいる…。
「忘れないよ、絶対…」
ただ一点を見つめる。
恋人がいなくなって、もう2年という歳月が経ってしまった。あれからというもの、人間ら
しく生きた心地がない。友達には笑顔を見せるの日常だけど、一人涙するのも日常だった。
彼は今ごろ何をしているのだろう…。天から私を見守ってくれてるかな…。
「あれから、2年なんだね…」
「そう、もうあれから2年…」
悲しげな瞳を見せて話すオーナー。
「前から話すそうと思ってたんだけど、私には彼がいたの。彼と言っても、もうすぐ籍を入れ
る時だったから旦那も当然かな…。交通事故で死んだの…」
瞳の奥からは絶望に似た影が渦巻いているのがわかる。一つを除いては…。
「彼ね、喫茶店を経営するのが夢だったのよ。結局、店を出す前に彼はこの世から去ってしま
ったけれど、私はその意思を継いでこの『ハナビシソウ』を始めた。彼の…誕生花なの。一人
ではなく二人でやってる証が欲しかった。誕生花の意味は『希望』。彼のでもある、私のでも
ある『希望』…」
日頃、悲しみを見せないのは彼女だからこそだったのか、それとも彼に対する愛情だからこ
そだったのか…。両方というのが正解だろうか。
「ヒロミちゃん、私は、最近になってやっと『楽しむ』ということができるようになったの。
あなたが来て、健二君が来て、マユミちゃんが来て…。歳は近いけど、子供ができたようで嬉
しかった。こんなこと言うと怒られちゃうかな」
さっきとは違う、私の知っているオーナーが表に出てきた。
「オーナーは結婚しないんですか?」
「そうね〜、いい人と出逢ったらね。ヒロミちゃんが紹介してよ。やっぱ年下かな〜」
「ぶはっ…、急に何を言い出すんですか!?」
ギャップの激しさに笑いが止まらない。
「あらやだ〜。昔の彼、年下だったのよ〜」
「年下キラー…」
どうみても天然が少し入ってる人だから、年上でしっかりとした人がタイプだと予想してい
たのに。謎の人物だ…。
「さぁ、お昼の休憩はこれで終わりにしましょう」
「あとは妹のことだけね。はぁ〜、クリスマスまでに決着がつくのかね」
「そうね〜。人のことより自分はどうなの?」
「ありゃりゃ、痛いところを突かれましたな。ということで、この話はお開きと言う事で」
悲しみの経験などない。親もまだ両方ともいるし、祖父や祖母もまだ元気に暮らしている。
あったとしても失恋くらいだし。
そうだ。今度のクリスマスパーティー、オーナーにプレゼントでもあげようかな。とびっき
りの…。
人が他人に見せるものは、本当のものではないのかもしれない………
けれど、それを他人に見せたとき………
人は本当の『人』になれる………
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