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追放された戦士は『同化』で覚醒する〜不要とされた俺が伝説の剣豪を身に宿し、やがて多民族国家を創り上げるまで〜  作者: 八咫 日本


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第177話 浄化の輝きと、反逆の剛将

紫に淀んだ空の下、新大陸の未開の森からとめどなく溢れ出す漆黒の軍勢。

黒鋼の武器を掲げ、醜悪な笑い声を上げながら防壁へと殺到する下級魔族の波に対し、ヴァンとローランは城門の前に立ちはだかり、静かに武器を構えていた。

「来るぞ。防壁の結界にこれ以上触れさせるな」

ヴァンの低く冷徹な声が響く。

「承知している。私の剣の射程に入る者は、一匹たりとも通さない!」

ローランが青白い竜のオーラを全身から爆発させ、地を蹴った。

彼の流麗な軽鎧が魔力に共鳴して淡く光り、流星のような速度で黒い波の側面へと切り込む。

「シィィィィッ!」

竜の魔力が込められた長剣が一閃されると、青白い斬撃の弧が広範囲に放たれ、数十体もの下級魔族が黒鋼の武器ごと一瞬にして両断された。緑色の血が吹き荒れる中、ローランは空中で身を翻し、次々と斬撃の雨を降らせていく。

だが、敵の数は異常だった。斬っても斬っても、森の奥から湧き出すように後続が押し寄せてくる。

「セリア、広範囲の浄化で一網打尽にする。光をくれ」

ヴァンが背後の結界の内側に立つセリアへ短く指示を飛ばす。

「ええ! 不浄を焼き尽くす絶対の光を!」

セリアが両手を突き出し、銀色の髪を激しく揺らしながら極限の詠唱を紡ぎ出す。

「一切の影を許さず、触れる闇を浄化の熱で焼き尽くす絶対の輝き。今、この器にて交わりたまえ。同化召喚……陽光の輝精霊!」

詠唱が完了した瞬間、紫色の瘴気を切り裂き、ヴァンの肉体を眩いばかりの黄金の光が包み込んだ。

手にした白銀の長剣が激しく流動し、透き通るような黄金のクリスタルブレードへと変異する。刃からは、太陽そのものを切り取ったかのような、圧倒的な浄化の熱線が放たれていた。

「消えろ」

ヴァンは黄金の大剣を上段に構え、押し寄せる黒い波の正面に向かって真っ向から振り下ろした。

ドバァァァァァァァァァァッ!!!

大剣から放たれた極大の光の奔流が、淀んだ大地を扇状に真っ白に染め上げた。

光属性の浄化の熱に触れた瞬間、下級魔族たちは断末魔の悲鳴を上げる間もなく、ドス黒い皮膚も黒鋼の武器もジュッと音を立てて蒸発し、光の粒子となって消滅していく。

ただの一振りで、防壁の正面に迫っていた数百体の群れが完全に消し飛び、黒い波に巨大な空白地帯が生まれた。

「す、すげえ……! 魔物の群れが、一瞬で溶けちまったぞ!」

防壁の上から身を乗り出して見ていた兵士たちが、歓声に近いどよめきを上げる。

だが、その空白地帯の奥、森の境界線から、突如として尋常ではない重圧が放たれた。

ズシンッ……! ズシンッ……!

周囲の下級魔族たちが、その足音に怯えたように左右へと道をあけていく。

「……親玉の登場か」

ヴァンが黄金の剣を構え直し、鋭い視線を向ける。ローランも着地し、ヴァンの横に並び立った。

土煙を割って姿を現したのは、筋骨隆々という言葉すら生ぬるい、身の丈四メートルを超える巨漢の魔族だった。

赤黒い皮膚には無数の戦傷が刻まれ、その太い両腕には、大の男が数人がかりでようやく持ち上げられるような巨大な断頭矛ハルバードが握られている。全身から立ち昇る魔力は、先ほどの下級魔族たちとは比較にならないほど濃密で、禍々しい。

巨漢の魔族は、足元で震えている自軍の下級魔族を邪魔だと言わんばかりに蹴り飛ばすと、忌々しそうに紫の空を見上げた。

「チッ……。あのキザな魔族野郎め。自分は後から優雅に登場して美味しいところを持っていく気か知らねえが、前払いの面倒な掃除は全部俺に押し付けやがって。大将風を吹かせるのも大概にしろってんだ」

野太く、地面を這うような低い声で、巨漢が吐き捨てる。

その言葉の端々には、自身の上官に対する隠しきれない嫌悪感と苛立ちが滲み出ていた。

「貴様、何者だ。この新大陸をどうするつもりだ」

ローランが長剣の切っ先を向け、鋭く問い詰める。

巨漢の魔族はゆっくりと視線を下げ、ヴァンとローランを値踏みするように見つめた。

「あぁ? 新大陸だか何だか知らねえが、ここはもうすぐ魔界の領土になる。俺の名前はバルザール。覇軍大将の副官を務める、前線の掃除屋だ」

バルザールが首をコキコキと鳴らし、巨大な断頭矛を肩に担ぐ。

「大将の野郎が『余計な城や虫どもが目障りだから、俺が歩く前に平地にでもしておけ』なんて寝言を抜かしやがるから、わざわざ先陣を切ってやってきたんだ。……だが、思いのほか骨のあるネズミが混ざっていたようだな」

バルザールは、ヴァンが持つ黄金の剣を一瞥し、獰猛な笑みを浮かべた。

「副官……。ということは、そのキザな大将とやらは、まだあの魔力の柱の奥にいるということか」

ヴァンが一切の動揺を見せずに問い返す。

「ご名答だ。だが、てめえらが大将の顔を拝む日は永遠に来ねえ。ここで俺の矛の錆にしてやるからな!」

バルザールが地を蹴った。

その巨体からは想像もつかないほどの爆発的な速度。彼が振り下ろした巨大な断頭矛は、空気を圧縮し、凄まじい衝撃波を伴ってヴァンへと迫る。

「セリア! 剛力だ!」

「ええ! 空を穿ち大地を両断する無双の巨斧。同化召喚……両断の巨斧!」

ヴァンの肉体を包んでいた黄金の光が瞬時に赤黒いオーラへと変わり、白銀の長剣が身の丈を遥かに超える巨大な戦斧へと変異する。

ヴァンは一切退くことなく、両断の巨斧の絶大な膂力を込めて、真っ向から戦斧を振り上げた。

ガギィィィィィィィンッ!!!

戦斧と断頭矛が激突し、絶海の岸辺に落雷のような轟音が響き渡った。

両者の純粋な筋力と物理的質量の衝突によって、足元の地面がクレーターのように陥没し、周囲にいた下級魔族たちがその衝撃波だけで次々と吹き飛ばされていく。

「ほう……! 俺の渾身の一撃を、真正面から受け止める人間がいるとはな!」

バルザールが腕の筋肉を異常に膨張させ、さらに矛を押し込んでくる。

「だが、いつまで持つかな! 力比べなら、魔族の猛将たるこの俺に分があるぜ!」

「……力比べなどしていない。ただの通過点だ」

ヴァンは表情の筋肉一つ動かさず、戦斧の柄を押し返しながら冷徹に言い放つ。

「ローラン、奴の側面をもらえ」

「承知した!」

凄まじい鍔迫り合いの横から、青白い竜のオーラを纏ったローランが神速の踏み込みでバルザールの死角へと入り込む。

防壁を背に、希望の国を護るための戦士たちの反撃が、圧倒的な力を持つ魔族の副官を相手に幕を開けたのである。

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