第27話:開かない金庫と、合わない帳簿
自慢の薔薇園が泥水と悪臭に沈み、長年勤め上げていた老庭師長を叩き出してから、さらに二日が経過していた。
ロシュ侯爵邸の空気は、日を追うごとに息苦しく澱んでいくばかりだった。窓を閉め切っていても、庭の腐敗したヘドロと枯れ草の饐えた臭いがすき間風に乗って忍び込み、廊下の絨毯には湿った嫌な冷気がまとわりついている。
ユリウス・ド・ラ・ロシュは、苛立ちに眉間を深く歪めながら、本邸の二階にある執務室の分厚いオーク材の扉を乱暴に押し開けた。
「……くそっ、どいつもこいつも揃って無能ばかりだ。庭師の一人や二人、金を積めばいくらでも代わりがいるはずだろうが……!」
吐き捨てながら足を踏み入れた執務室の中は、彼が想像していたような「高貴なる領主の仕事場」とは程遠い惨状を呈していた。
部屋の中央に鎮座する巨大なマホガニーの執務机。
かつてエリアーナが夜を徹して座り続けていたその場所には、天井に届かんばかりの高さに積み上げられた羊皮紙と書類の山が、まるで崩落寸前の雪山のように四方へ傾ぎ、不気味な影を落としていたのだ。
「な……なんだ、この書類の量は……!?」
ユリウスは思わず絶句し、その場で立ち尽くした。
机の上だけではない。床の隅、書棚の前、暖炉の脇に至るまで、未処理の書類を縛った麻紐の束が雑然と転がり、歩く隙間すら奪い去っている。
エリアーナがこの屋敷にいた頃、執務室がこのような無様な散らかり方をしたことなど一度たりともなかった。
彼女がいる時の机の上は、常に定規を当てたように美しく整頓されていたのだ。緊急度の高い案件は赤のリボン、税収関連は青、領民の陳情は緑と色分けされ、決算の数字は一目で理解できるよう完璧な清書が施されていた。ユリウスが目を通す書類といえば、彼女が徹夜で仕上げた完璧な報告書の末尾に、形式的な当主代理のサインと公印を捺すだけのものでしかなかったのだ。
(あいつ……こんな量の仕事を、一人で片付けていたというのか……?)
一瞬だけ、背筋に冷たいものが走った。
だが、ユリウスは即座にその考えを頭首を振って打ち消した。
「馬鹿馬鹿しい! あんな地味で頭の固い女にできて、この私にこなせないはずがないだろう! 所詮は数字を右から左へ書き写すだけの、誰にでもできる単純な雑用だ! 私が本気を出せば、半日もあれば片付く!」
己に言い聞かせるように叫ぶと、ユリウスはガウンの袖を捲り上げ、革張りの椅子へとどっかりと腰を下ろした。
そして、山の一番上にあった分厚い帳簿の束を乱暴に引き抜き、最初の頁を勢いよくめくった。
「……まずは手始めに、今月の領地決算と各代官所からの収支報告だな。サッサと終わらせて、ティファーヌと街へ繰り出してやる――」
意気揚々と羽ペンをインク壺に浸したユリウスだったが、その手は、帳簿の数字を目にした瞬間、ピタリと空中で凍りついた。
「……ん? な、何だ、これは……?」
並んでいたのは、彼が社交界や士官学校でかじった程度の基礎知識では、到底読み解くことのできない複雑怪奇な数字の羅列だった。
西方鉱山における採掘権の更新料、治水工事に伴う資材の輸入関税、小作農への種籾配給と収穫高の事前相殺、さらには商人ギルドへの通行手形発給手数料の控除……。
専門用語と略称がびっしりと書き殴られ、項目のひとつひとつが別の帳簿の注釈へと複雑にリンクしている。
「な、なぜ、鉱山の利益から治水の費用が引かれているんだ……? こっちの穀物取引の数字は、なぜ前月と通貨単位が違う!? この『予備調整費』という名目の大金は、一体どこへ消えたんだ!?」
めくれども、めくれども、意味の通じる記述が出てこない。
数字の足し算と引き算を繰り返すたびに、合計欄の数値は増えるどころか、天文学的なマイナスを叩き出す。
さらに不気味なことに、各地の代官たちが提出してきた収支報告書の端々には、意図的に数字をごまかしたような不可解な二重計上や、使途不明金の痕跡がそこかしこに散見された。
これまでは、エリアーナがその【万物最適化】の鋭敏な知性と直感によって、代官たちの姑息な隠蔽工作を一瞬で見抜き、数字の辻褄を完璧に整えた上で、不正を暴く証拠を突きつけて領地の資産を守っていたのだ。
しかし、帳簿の構造すら理解できないユリウスにとって、それはただの「呪われた暗号の羅列」にしか見えなかった。
「くそっ……! 頭が痛い……! なぜ数字が合わんのだ! 計算が合わないぞ! 誰か……誰かこの計算のやり方を説明しろ!!」
ユリウスは頭を抱え、乱暴に髪をかきむしった。
わずか一刻(約二時間)机に向かっただけで、目の奥が焼けるように痛み、吐き気すら込み上げてくる。ペン先からはインクがボタボタと垂れ落ち、貴重な羊皮紙を黒く汚していた。
――ガチャリ。
その時、執務室の扉が無遠慮に開け放たれた。
「ユリウス様ぁ〜! こんなところに閉じこもって、何をしていらっしゃいますの?」
部屋に入ってきたのは、華やかな真紅と黄金のレースをあしらった最新流行のデイドレスに身を包んだティファーヌだった。
手には、王都の最高級宝飾店から取り寄せたばかりの分厚い宝石カタログを抱え、鼻歌交じりに部屋の中へと歩み寄ってくる。部屋に漂う紙埃とインクの臭いに、これ見よがしに小さな鼻にしわを寄せてみせた。
「まあ、ひどい埃っぽさですわ! 息が詰まりそうですこと。ねえユリウス様、そんな古臭い紙切れなんて放っておいて、わたくしとお茶にいたしましょう? 今朝届いたカタログに、とっても素敵なサファイアのティアラが載っていましたのよ!」
その甘ったるい声を聞いた瞬間、ユリウスの胸の中に、溺れる者が藁を掴むような淡い期待が閃いた。
(そうだ……! ティファーヌは、あのエリアーナの実の妹だ! 同じ伯爵家で育ち、同じ家庭教師に学んでいたはず……! 彼女なら、あの女が使っていた計算のからくりや、帳簿の整理法を知っているに違いない!)
「ティファーヌ! ああ、ちょうどいいところに来てくれた!」
ユリウスは椅子から身を乗り出し、すがるような眼差しでティファーヌの手首を掴んだ。
「頼む、手伝ってくれ! この領地の帳簿なんだが、数字の辻褄がどうしても合わないんだ! エリアーナがやっていた計算のやり方を、君も知っているだろう? 君が少し検算を手伝ってくれれば、すぐに終わるはずなんだ!」
「……は?」
ティファーヌの手首が、ピキリと凍りついた。
彼女はユリウスに掴まれた自らの腕を見下ろし、次いで机の上に広げられた煤けた帳簿の山を一瞥すると、まるで汚物でも見るかのように露骨に顔を歪めたのだ。
「な……何を仰っているのかしら、ユリウス様? わたくしに、そんな汚らわしい帳簿の計算を手伝えと……そう仰いましたの?」
「え……? あ、ああ、少しだけでいいんだ! 数字の確認だけでも――」
「冗談じゃありませんわ!!」
ピシャリと、ティファーヌはユリウスの手を力任せに振り払った。
先ほどまでの甘えた態度はどこへやら、その瞳には強烈な侮蔑とヒステリックな怒りが宿っていた。
「わたくしが、なぜそんな下賎な事務仕事などをしなければなりませんの!? わたくしはロシュ侯爵家の未来の女主人ですのよ!? 社交界で華やかに微笑み、領地の栄華を象徴するのがわたくしの務めのはずですわ! 帳簿の数字だなんて、そんな泥臭い雑用、執事や下男にやらせておけばよろしいではありませんか!」
「し、しかし、我が家の執事長は先代からの高齢で、この新しいギルド形式の計算はエリアーナしか扱えなかったんだ! 君の実家でも、領地経営の基礎くらいは習っただろう!?」
「習うわけがありませんわ!」
ティファーヌは胸を張り、傲然と言い放った。
「わたくし、昔から数字なんて見ると頭が痛くなっちゃうんですもの! お父様もお母様も、『ティファーヌはその愛らしい笑顔だけで十分だ』と仰って、実家の帳簿もぜーんぶ、あのお姉様に押し付けてくださっていたのよ! わたくしがペンを握って帳簿をめくるなんて、爪が痛んでしまいますわ!」
「な……っ!?」
ユリウスは息を呑んだ。
「だいたい、お姉様が悪いのよ!」
ティファーヌは足を踏み鳴らし、唇を尖らせて喚き散らした。
「あの役立たずの出来損ない! 勝手に出て行ったくせに、こんな面倒な仕事の山を放り出していくなんて、本当に陰険で意地が悪いわ! あんな女、連れ戻して地下室にでも閉じ込めて、死ぬまでこの書類を書かせておけばよろしいのよ! どうしてわたくしが、あの地味女の尻拭いをさせられなければなりませんの!?」
「ティファーヌ、だが今はこの書類を片付けないと、領地の支払いが――」
「知りませんわ、そんなこと!」
ティファーヌはユリウスの言葉を遮ると、抱えていた宝石カタログを机の上にバサリと投げ捨てた。
「そんなみみっちいことより、ユリウス様! このカタログの十二ページに載っているエメラルドの耳飾りと、新作の毛皮のストール! 明後日の夜会までに絶対に必要なの! ロシュ侯爵家のツケで注文書にサインしておきましたから、きちんとお支払いを通しておいてくださいましね! もし間に合わなかったら、わたくし、ユリウス様のこと絶対に許しませんから!」
言いたいことだけを一方的に捲し立てると、ティファーヌはプイと横を向き、豪奢なスカートの裾を翻して足早に執務室を出て行ってしまった。
バタンッ、と乱暴に扉が閉まる音が、静まり返った部屋に重々しく響き渡る。
「…………」
ユリウスは、一人その場に取り残されていた。
机の上に残されたのは、山積みの未処理書類と、ティファーヌが投げ捨てていった宝石の請求書――そこには、小さな町の半年分の税収に匹敵する、途方もない金額の数字が踊っていた。
「くそっ……! くそぉぉぉぉッ!!」
ガシャァンッ!!
ユリウスは卓上の羽ペン立てを壁に向かって力任せに投げつけた。
陶器の破片が飛び散り、黒いインクが壁紙を無残に汚す。
甘やかされ、実務能力ゼロの妹を選んだのは、他ならぬ自分自身だった。華やかさだけに目を奪われ、「中身」のすべてを切り捨てた代償が、いま、鋭利な刃となって彼の首元に突き刺さっていた。
「……やるしかない。私が……私一人でやるしかないんだ……!」
逃げ場を失ったユリウスは、奥歯をギリギリと噛み締めながら、再び帳簿の山へと向直った。
窓の外の太陽が西の空へと沈み、部屋の中が夜の闇に包まれても、彼はペンを握り続けた。
蝋燭の芯を取り替え、二本、三本と火を灯し、冷え切った紅茶を流し込みながら、徹夜で数字の海と格闘する。
――しかし。
現実は、彼の浅薄な努力などで覆るほど甘くはなかった。
深夜を回り、東の空が白み始めた頃。
朦朧とする意識の中で、ユリウスの手からパタリとペンが滑り落ちた。
「……な、なんだ……これは……?」
徹夜の末に、彼が辛うじてまとめ上げた一枚の試算表。
そこに導き出された最終的な数値を目にした瞬間、ユリウスの全身から、サーッと血の気が引いていった。
合わない。
どうしても、合わないのだ。
支出の合計が、領地の総収入を遥かに上回っている。
それどころではない。
各方面からの未払い金の請求書、交易停止による違約金、そしてティファーヌが王都中で買い漁った豪遊のツケ――それらをすべて合計した負債の総額は、ロシュ侯爵家が一年間に得る純利益の、優に三倍以上に膨れ上がっていたのだ。
「う、嘘だろ……? なぜだ……!? なぜ、こんな巨額の赤字になるんだ!?」
ユリウスはガタガタと震える手で頭を抱えた。
エリアーナがいた頃、領地の財政は常に潤沢な黒字を計上していたはずだった。
なぜなら、エリアーナが【万物最適化】によって資材の劣化を防ぎ、輸送ルートのロスを極限まで削ぎ落とし、農作物の収穫高を強制的に引き上げ、さらに代官たちの横領を徹底的に未然に防いでいたからだ。
彼女というたった一つの「奇跡の歯車」が噛み合っていたからこそ、ロシュ侯爵領は富裕な領地としての体面を保てていたのだ。
その歯車を自らの手で引き抜いておきながら、ユリウスはまだその本質に気づいていなかった。
「い、いや……まだだ。まだ金庫がある……! 我がロシュ侯爵家は、建国以来続く名門だ! 先代たちが遺した莫大な蓄えが、地下の大金庫に眠っているはずだ! 帳簿の数字などどうとでもなる、金庫の現金を吐き出して、支払いを済ませてしまえばいいんだ……!」
狂気じみた笑みを浮かべ、ユリウスは立ち上がった。
彼は引き出しの奥から、代々当主にのみ受け継がれるという重厚な「金庫の鍵」を引っ張り出すと、足をもつれさせながら執務室を飛び出した。
向かう先は、本邸の地下最深部――厳重な防護壁に囲まれた、ロシュ侯爵家の「地下大金庫」。
薄暗い地下階段を駆け下りるユリウスの足音が、不気味に反響する。
冷たい湿気とカビの臭いが立ち込める地下回廊の突き当たりに、天を突くほど巨大な、黒鉄造りの大扉がそびえ立っていた。
古代の魔導金属で作られ、幾重もの魔法陣と物理的な多重シリンダーによって守られた、難攻不落の巨大金庫。
「はぁ、はぁ……! 開け……早く開け……!」
ユリウスは震える手で、鍵穴へと真鍮の鍵を差し込んだ。
そして、解錠の魔力を鍵を通じて扉へと流し込もうとする。
――しかし。
ギギギッ……ガガガッ!
嫌な金属の軋み音が地下室に響き渡り、鍵は途中でガチリと引っかかって、それ以上びくとも回らなくなった。
「なっ……!? な、なぜ回らんのだ!? この鍵は本物だぞ!?」
ユリウスは焦燥に駆られ、両手で鍵を掴んで力任せにねじ回そうとした。
だが、鍵穴の奥から微かな煙がプスプスと立ち上るだけで、重厚な扉はビクとも動かない。
それもそのはずだった。
この大金庫の魔法錠は、極めて繊細な魔力の波長を感知して作動する古代の遺物であった。
これまでは、エリアーナが定期的に点検に訪れ、その【万物最適化】によって金属の歪みを取り除き、魔導回路の目詰まりを完璧に解消していたからこそ、滑らかに解錠できていたのだ。
彼女の恩恵が途絶えて十日。過度の湿気と魔力の澱みによって、内部のシリンダーは完全に錆びつき、魔力回路はショートを起こして固着していたのである。
「開け! 開けぇぇぇッ!! くそっ、開きやがれぇぇッ!!」
ユリウスは狂ったように扉を蹴りつけ、肩をぶつけ、手首の皮が擦り剥けるのも構わずに鍵を強引にこじ開けようと力を込めた。
バキンッ――!!
乾いた破壊音とともに、内部の魔導ロックが無理な負荷に耐えかねて砕け散った。
ズズズ……と重い地鳴りを立てて、分厚い黒鉄の扉が、わずかに内側へと開いた。
「はぁ……はぁ……! 開いた……! 開いたぞ……!」
ユリウスは乱れた息を整える間も惜しみ、こじ開けた隙間から金庫の内部へと滑り込んだ。
壁面の魔導ランプに火を灯す。
青白い光が、広大な金庫の空間を一瞬にして照らし出した。
そして――。
光の下に晒されたその光景を目にした瞬間、ユリウスの喉から、声にならない絶叫が零れ落ちた。
「…………あ」
膝から崩れ落ちた。
床の冷たい石畳に両手をつき、彼は信じられないものを見るように、大きく見開かれた瞳を震わせた。
そこにあるはずだったもの――。
天井まで届かんばかりに積まれているはずだった、眩い黄金の輝きを放つ「金貨の山」。
諸外国の高級宝石が詰め込まれた宝箱、帝室から下賜されたはずの国宝級の美術品。
そのすべてが――影も形もなかった。
広大な石造りの金庫の中央にポツンと置かれていたのは、底の浅い木箱が数個だけ。
中を覗き込めば、入っているのはわずかばかりの濁った銀貨と、数枚の銅貨。
そして、床一面に散乱していたのは、金貨の代わりに詰め込まれていた――膨大な数の「借用証書」と「担保設定書」の束であった。
「な……んだ、これは……? 金貨は……? 金貨の山は、どこへ行ったんだ……!?」
ユリウスは這いつくばりながら、散乱する書類を一枚、また一枚と狂ったようにめくった。
そこに記されていたのは、あまりにも残酷な真実だった。
先代侯爵の時代から続いていた放漫経営のツケ。
ここ数年、領地を維持するために商人ギルドや王都の闇金業者から借り入れていた莫大な借金の記録。
エリアーナが必死に帳簿をやりくりし、自らの手で利益を限界突破させて少しずつ返済を進めていたものの、金庫の現金のほとんどは、最初から借金の担保として差し押さえ寸前の状態にあったのだ。
そこへ――エリアーナが抜け、特産品のワインが全滅し、交易がストップして収入が完全にゼロになり、さらにティファーヌが数千枚の金貨に相当するドレスや宝石をツケで買い漁った。
「ぜ、ゼロ……? 残高が……完全に、底をついている……!?」
ユリウスの歯の根が、ガチガチと音を立てて激しく噛み合わなくなった。
冷たい汗が、滝のように額から顎へと伝い落ちる。
金がない。
明日支払わなければならない騎士団の給料も、商人ギルドへの違約金も、ティファーヌのドレス代の請求書も――支払うための金貨が、この屋敷のどこを探しても、ただの一枚すら残されていないのだ。
もし、期日までに支払いができなければ。
貴族としての信用は失墜し、領地の鉱山や屋敷は差し押さえられ、ロシュ侯爵家は完全に破産する。
「う……そ、だろ……? こんな……こんな馬鹿なことがあってたまるか……!」
暗闇に沈む金庫の中で、ユリウスは自らの顔を両手で覆い、獣のような情けない悲鳴を漏らした。
傲慢に胸を反らし、エリアーナを「無能」と切り捨てたあの男の姿は、もはやどこにもなかった。
そこにいたのは、自らが招いた破滅の深淵を前にして、恐怖と絶望に震えるだけの――哀れな道化の姿だけであった。




