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最強ノ忍、異世界無双  作者: ゆう


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第5話 天使の浄化

「※本作はnoteで連載中の『転生忍者、世界最強へ』の無料公開版(1〜5話)となります。最新話や先行公開はnoteのメンバーシップにてお届けしています」

第5話

天使の浄化

光の槍が、夜空から落ちてきた。


美しい光だった。


白く、清らかで、見る者の心を奪うほどまばゆい。

だが、その中にあるのは救いではない。


殺意だ。


村ごと貫くための、冷たい殺意。


「全員、伏せろ!」


レオンの声が響いた。


村人たちは悲鳴を上げて地面に伏せる。

父が母とカイルを抱えて倒れ込む。

ノアが結界を展開しようとする。


だが、間に合わない。


天使の光は速すぎる。


俺は木刀を握った。


体は小さい。

腕も短い。

剣もただの木。


だが、問題はそこではない。


斬るべきものが見えているかどうか。


それだけだ。


心覇で光の流れを読む。


光の槍の中心には、圧縮された神聖魔力の核がある。

周囲の光は飾りだ。

核を断てば、槍は崩れる。


俺は息を吐いた。


時間が遅くなる。


いや、遅く感じているだけだ。

未来の一瞬を読む。


槍が落ちる軌道。

衝撃が広がる範囲。

村人が巻き込まれる位置。


すべてを見て、木刀を振った。


黒い覇気が刃となる。


光の槍と、木刀がぶつかった。


轟音。


夜が白く染まる。


地面が割れ、結界が軋み、村の屋根が吹き飛びそうになる。


だが、槍は落ちなかった。


俺の木刀が、光の核を斬っていた。


砕けた光が雪のように降る。


村人たちは、呆然と空を見上げた。


ミラが声を漏らす。


「嘘でしょ……」


ガルドが額に手を当てる。


「天使の浄化槍を、木刀で斬ったぞ」


ノアは言葉すら出ていない。


レオンだけが、俺ではなく空を見ていた。


「来るぞ」


雲の裂け目から、天使が降りてきた。


白い翼。

白銀の髪。

金色の瞳。

整いすぎた顔。


本に描かれていた天使そのものだった。


だが、俺は美しいとは思わなかった。


その目が、人を見ていない。


地面にいる命を、同じ命として見ていない。


天使は空中に浮かんだまま、村を見下ろした。


「浄化失敗」


声に感情はなかった。


「対象の抵抗能力、想定以上」


レオンが剣を向ける。


「天使族か。なぜ人間領にいる」


天使はレオンを見た。


いや、視線を向けただけだった。


「下等種の問いに答える義務はない」


ミラの眉が跳ねた。


「何ですって?」


「人間。魔族。竜族。いずれも世界の均衡を乱す不完全な種」


天使の周囲に光の輪が広がる。


「特に神域属性を宿す個体は危険。確認次第、浄化する」


その金色の瞳が、俺に向いた。


「対象、幼体。だが危険度は最上位」


俺は木刀を下ろさなかった。


「お前は誰だ」


天使は少しだけ首を傾けた。


「個体名、セラフィア。天界審判局、第六執行官」


天界審判局。


本には載っていない名前だ。


レオンの表情が険しくなった。


「聞いたことがない」


「人間に知らせる必要がない組織だからだ」


セラフィアは淡々と言った。


「この世界は管理されなければならない」


「管理?」


「力ある者が自由意志を持てば、世界は乱れる。よって、危険因子は早期に除去する」


その言葉に、胸の奥が冷えた。


管理。

危険因子。

除去。


前世の組織と同じ匂いがする。


違うのは、白い翼を持っていることだけだ。


「俺を消すために来たのか」


「そうだ」


「村も巻き込む気だったな」


「必要な犠牲だ」


周囲の空気が変わった。


村人たちの恐怖が、怒りに変わる。


父が弓を構えようとする。


母が俺の名を呼ぶ。


俺はセラフィアを見た。


「必要な犠牲、か」


「下等種の集落一つと、世界の安定。比較するまでもない」


その瞬間、ミラが飛び出した。


「ふざけるな!」


赤い魔力をまとった槍が、空中のセラフィアへ突き出される。


速い。


だが、セラフィアは片手を上げただけだった。


光の盾が生まれ、ミラの槍を弾く。


「不完全な力」


セラフィアの指先から光弾が放たれる。


ミラは咄嗟に防御するが、吹き飛ばされた。


「ミラ!」


ノアが支援魔法を放つ。


光の鎖がセラフィアを縛ろうとする。


だが、触れる前に消えた。


「人間の魔法体系。低次元」


ガルドが地面を蹴る。


「なら拳はどうだ!」


巨大な籠手が、セラフィアの真下から打ち上げられる。


セラフィアの翼がわずかに動いた。


それだけで、彼女の体は攻撃範囲から外れる。


「単純」


光の槍がガルドの肩を貫いた。


「ぐっ!」


レオンが動いた。


一瞬でセラフィアの背後に回り、剣を振る。


天魔滅殺隊隊長。


さすがに速い。


剣には光と炎の複合魔力が宿っている。

魔族相手なら致命傷になる一撃。


だが、セラフィアは振り返りもしなかった。


翼の一枚が硬質化し、レオンの剣を受け止める。


「人間としては優秀」


セラフィアの目がレオンへ向く。


「だが、届かない」


光の衝撃波。


レオンが地面へ叩きつけられた。


村人たちが悲鳴を上げる。


天魔滅殺隊が、押されている。


人類最強戦力。


それでも天使には届かない。


セラフィアは俺を見下ろした。


「抵抗戦力、排除完了。対象を浄化する」


彼女の頭上に、巨大な光の輪が現れる。


そこから無数の光槍が生まれた。


一つ一つが、先ほどの浄化槍より小さい。

だが数が多い。


村全体を串刺しにする気だ。


レオンが立ち上がろうとする。


「やめろ……!」


ミラも、ガルドも、ノアも動けない。


村人たちは逃げられない。


俺は木刀を握った。


また選ばされる。


破壊を使えば、一瞬で止められる。


だが、使えば心が削れる。


感情が消える。


それでも。


村を見た。


父がいる。

母がいる。

カイルがいる。

名前を覚えた村人たちがいる。


前世の俺なら、任務のために切り捨てた命。


今の俺は、切り捨てたくない。


「シオン!」


母の声が聞こえた。


「あなたは一人じゃない!」


その言葉で、指の震えが止まった。


一人じゃない。


なら、全部を破壊で消す必要はない。


俺はレオンを見た。


「隊長」


レオンが顔を上げる。


「何だ」


「天使の光を一瞬だけ止められるか」


レオンは血を拭った。


「一瞬なら」


「十分」


次にノアを見る。


「村の結界を内側から強めろ」


ノアは震えながら頷く。


「や、やってみる」


「ミラ、ガルド」


二人が俺を見る。


「天使の注意を引け」


ミラが笑った。


「子供に命令されるの、慣れてきたかも」


ガルドも歯を見せる。


「任せろ」


セラフィアが眉をわずかに動かした。


「無意味」


「そうか」


俺は木刀を構えた。


「なら黙って見ていろ」


ミラとガルドが同時に飛び出す。


レオンが剣に魔力を込める。


ノアの結界が村を包む。


セラフィアの光槍が一斉に降り注ぐ。


レオンが叫ぶ。


「今だ!」


彼の剣から放たれた光炎が、光槍の一部を弾く。


ミラが槍を回転させ、何本も叩き落とす。


ガルドが拳で地面を砕き、土壁を作る。


ノアの結界が村人たちを守る。


それでも、全ては止められない。


俺はその隙間を見た。


降り注ぐ光槍の軌道。

村に届くものだけを選ぶ。

結界で止まるものは無視。

レオンたちが弾けるものも無視。


必要なものだけを斬る。


断覇。


空間すら切断する覇気。


木刀に黒い線が走る。


俺は一歩踏み込んだ。


「斬る」


木刀を振る。


一振り。


二振り。


三振り。


村に届くはずだった光槍だけが、空中で真っ二つに割れた。


セラフィアの表情が初めて変わる。


驚き。


「空間切断……?」


俺は止まらない。


地面を蹴り、空間を足場にして跳ぶ。


五歳の体では届かない。


なら、空間を踏めばいい。


一歩。

二歩。

三歩。


夜空を駆け上がる。


セラフィアの金色の瞳が俺を追う。


「対象、危険度を再評価」


光の剣が彼女の手に生まれる。


俺の木刀と、天使の光剣がぶつかった。


衝撃で雲が裂ける。


セラフィアが言う。


「なぜ抗う」


「村を壊そうとしたからだ」


「下等種の集落に価値はない」


「俺にはある」


「感情による判断。非合理」


「そうだな」


俺は木刀に覇気を込め直す。


「だが、それが人間だ」


セラフィアの光剣が強まる。


「ならば、人間性ごと浄化する」


光が爆発した。


視界が白に染まる。


その中で、俺は黒い力に手を伸ばしかけた。


破壊。


使えば、この天使を消せる。


完全に。


存在ごと。


簡単だ。


だが。


それをすれば、俺はまた少し戻る。


前世の俺に。


感情を殺し、命を数で見て、必要なら誰でも消す道具に。


使うな。


いや、使え。


村を守るためだ。


心の中で、二つの声がぶつかる。


その時、レオンの声が届いた。


「シオン! 殺すな!」


俺は目を見開いた。


レオンは地上から叫んでいた。


「殺せば、天使は次を送る! ここで必要なのは撃退だ!」


そうか。


殺さなくていい。


勝てばいい。


追い返せばいい。


俺は破壊の力を押し戻した。


代わりに、覇気を一点に集める。


断覇ではなく、覇圧。


斬るのではない。


意志をぶつける。


「俺は」


木刀を握る。


「誰の道具にもならない」


黒い覇気が爆発した。


セラフィアの光が揺らぐ。


金色の瞳がわずかに見開かれる。


「精神干渉ではない……存在圧……?」


俺は木刀を振り抜いた。


刃はセラフィアの体を斬らなかった。


だが、彼女の光の輪を砕いた。


翼の一部が散り、セラフィアの体が空中で大きく後退する。


村を覆っていた浄化の光が消えた。


夜が戻る。


セラフィアは空中で体勢を整えた。


その顔には、もう無表情ではない何かが浮かんでいた。


警戒。


「対象、想定を大幅に超過」


彼女は壊れた光の輪に触れた。


「単独での浄化は困難。上位執行官への報告を優先する」


逃げる気だ。


ミラが槍を構える。


「待て!」


レオンが止めた。


「追うな!」


セラフィアは俺を見た。


「シオン。神域属性を宿す人間」


初めて、彼女は俺の名を呼んだ。


「あなたは世界の誤差だ」


「誤差で結構だ」


「次は、完全浄化部隊が来る」


空の裂け目が開く。


セラフィアの体が光に包まれる。


消える直前、彼女は冷たい声で言った。


「世界は、あなたの静けさを許さない」


光が消えた。


夜の森に、沈黙が落ちる。


誰も動かなかった。


天魔滅殺隊も、村人たちも、父も母も。


全員が、俺を見ていた。


俺は空中から地面へ降りた。


着地した瞬間、膝が崩れた。


「シオン!」


母が駆け寄る。


俺は倒れる前に、母に支えられた。


体が重い。


覇気を使いすぎた。

空間を踏み、断覇を連発し、天使の光を受けた。


五歳の体には負担が大きすぎる。


だが、心は残っている。


母の手が温かいと分かる。

父の声に安心する。

村人たちの涙に、胸が痛む。


まだ大丈夫だ。


俺は母に抱えられながら、レオンを見た。


「追わなくてよかったのか」


レオンは剣を収めた。


「今の我々では、天界の門の先へは行けない」


「そうか」


「それに、追うべきは天使ではない」


レオンの表情が険しくなる。


「この村をどう守るかだ」


その言葉で、全員が現実に戻った。


魔族に見つかった。

天魔滅殺隊に知られた。

天使に危険因子と認定された。


この村は、もう安全ではない。


父が俺の隣に膝をついた。


「シオン」


俺は父を見た。


「何」


父は苦しそうに言った。


「ここには、もういられないのか」


答えは分かっていた。


だが、言いたくなかった。


この村で静かに暮らす。


それが俺の願いだった。


けれど俺がいる限り、魔族も天使も来る。

人間の国も、俺を放っておかない。


静けさを守るためには、この場所を離れるしかない。


俺は小さく頷いた。


母が俺を抱きしめる腕に力を込める。


「そんな……」


レオンが静かに言った。


「王都へ来い、シオン」


父が睨む。


レオンは続けた。


「監禁するためではない。君と家族を守るためだ」


「王都なら安全なのか」


俺が尋ねる。


レオンは少し黙った。


「完全に安全な場所などない」


正直だ。


「だが、少なくともこの村より守れる。情報も集まる。天使と魔族の動きも追える」


「俺を利用するつもりは」


「ある」


父が息を呑む。


レオンはまっすぐ俺を見た。


「君の力は、人類にとって必要になる。だが、君の意思を無視するつもりはない」


「信じろと?」


「今すぐでなくていい」


レオンは一歩下がった。


「選ぶ時間をやる」


夜明けが近づいていた。


東の空がわずかに白む。


村人たちは黙っていた。


誰も俺を責めなかった。


だが、分かっている。


恐怖はある。


俺がいなければ、魔族も天使も来なかった。

それは事実だ。


俺は母の腕の中で目を閉じた。


静かに生きたい。


けれど、その願いが誰かを危険にさらすなら。


俺は何を選ぶべきなのか。


その時、村の入口から一人の老人が歩いてきた。


村の魔法教師だった。


彼は割れた杖をつきながら、俺の前に立った。


「シオン」


「先生」


教師は震える手で、俺の頭に触れた。


「行きなさい」


母が顔を上げる。


「先生……」


「この子が悪いのではない。力が悪いのでもない」


教師は村人たちを見渡した。


「だが、この村はこの子を守るには小さすぎる」


誰も反論しなかった。


教師は俺を見た。


「いつか、自分の力で静けさを選べるようになりなさい」


俺はその言葉を胸に刻んだ。


自分の力で、静けさを選ぶ。


奪われないために。

縛られないために。

誰かを犠牲にしないために。


俺は立ち上がった。


母の手を握り、父を見る。


「王都へ行く」


母の目に涙が浮かぶ。


父はしばらく目を閉じ、それから頷いた。


「一人では行かせない」


「私も行くわ」


母が即座に言った。


俺は少し驚いた。


「危険だ」


母は涙を拭った。


「あなたを一人にする方が、もっと嫌」


父も笑った。


「家族だからな」


家族。


その言葉は、まだ慣れない。


だが、嫌ではなかった。


レオンが頷く。


「出発は明朝。王都へ向かう」


ミラが槍を肩に担いだ。


「これで本当に大騒ぎになるわね」


ガルドが笑う。


「魔族、天使、神域属性の子供。王都の連中、腰抜かすぞ」


ノアは青い顔で呟いた。


「報告書、何枚書けばいいんだろう……」


俺は東の空を見た。


朝日が昇る。


レナス村で過ごす最後の朝になるかもしれない。


静かに生きたい。


その願いは変わらない。


だが、今は分かった。


静けさは、逃げれば手に入るものではない。


守る力がなければ、奪われる。


ならば俺は、王都へ行く。


人間に利用されるためではない。

魔族と戦うためでもない。

天使に従うためでもない。


自分の意思で、静かな明日を選ぶために。


遠くの空で、白い翼の残光が消えた。


そして王都への道が、静かに開いた。


第5話 完

「ここまでお読みいただきありがとうございました!

転生したシオンのその後の大活躍(幼少期覚醒編・学園編)は、noteにて先行連載・独占公開中です。

続きが気になる方は、プロフィールのリンク、または『ゆのの日常 note』で検索してみてください!」

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