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最強ノ忍、異世界無双  作者: ゆう


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第3話 天魔滅殺隊

「ここまでお読みいただきありがとうございました!

転生したシオンのその後の大活躍(幼少期覚醒編・学園編)は、noteにて先行連載・独占公開中です。

続きが気になる方は、プロフィールのリンク、または『ゆのの日常 note』で検索してみてください!」

第3話

天魔滅殺隊



王都アークレイン。


人類最大の都市であり、王国の中心。

白い城壁に囲まれたその都は、夜でも眠らない。


魔導灯が街路を照らし、騎士たちが城門を守り、空には魔力探知用の結界が幾重にも張られている。


その中央に、白銀の塔があった。


名を、天聖塔。


王国軍、魔導院、教会、そして天魔滅殺隊。

人類の最高戦力が集う場所だ。


その最上階で、観測水晶が砕け散っていた。


研究員たちは青ざめた顔で床に散らばる破片を見つめている。


「ありえない……」


一人が震える声で呟いた。


「魔力計測値が、上限を超えました」


「魔王級か?」


別の男が尋ねる。


「いえ……魔王級なら、まだ数値化できます」


「では何だ」


答えられる者はいなかった。


部屋の奥に、一人の男が立っていた。


銀の鎧。

黒い外套。

肩には、剣と翼を重ねた紋章。


天魔滅殺隊。


その中でも隊長格だけが持つ紋章だ。


男の名は、レオン・グランゼル。


人類最強の一角。

冒険者ランクでいえばSR。

過去に魔王軍の将を三体討伐した英雄。


そのレオンが、割れた水晶を静かに見つめていた。


「反応地点は」


「辺境のレナス村付近です」


「魔族反応は」


「確認されています。小規模ですが、複数」


レオンは目を細めた。


辺境の村。

魔族反応。

そして、魔王級を超える未知の魔力。


偶然とは考えにくい。


「隊を編成する」


研究員が顔を上げた。


「天魔滅殺隊を、ですか?」


「そうだ」


「しかし、相手は子供の可能性が」


レオンの視線が研究員に向いた。


それだけで、研究員は言葉を止めた。


「子供なら安全だと?」


「い、いえ」


「力に年齢は関係ない」


レオンは割れた水晶の破片を拾った。


破片の表面には、黒と白の光が微かに残っている。


「この反応は、ただの才能ではない」


「では、何だと」


レオンは低く答えた。


「災害だ」


同じ頃。


レナス村では、誰も王都の騒ぎを知らなかった。


朝日が昇り、村人たちはいつも通り畑に出る。


昨日の魔物騒ぎで壊れた柵を直す者。

怪我人の手当てをする者。

森の様子を見に行く者。


村は不安に包まれていたが、それでも生活は続く。


俺は家の前で薪を割っていた。


父は隣で弓の手入れをしている。


何度か俺を見たが、何も言わない。


昨夜からずっとそうだった。


聞きたいことがある。

だが聞けば、今まで通りではいられなくなる。


そんな沈黙だった。


「シオン」


ようやく父が口を開いた。


「昨日の魔物だが」


「自然発生じゃない」


俺は斧を下ろした。


「誰かが操っていた」


父の手が止まる。


「誰か、とは」


「魔族」


父の顔が険しくなった。


「なぜそれを知っている」


俺は答えなかった。


嘘をつくことはできる。


前世では、息をするように嘘をついていた。

相手が信じたい言葉を選び、表情を作り、声の温度を変える。


だが父に対して、それをしたくなかった。


「父さん」


俺は言った。


「俺を怖いと思うか」


父は驚いたように俺を見た。


そして、すぐに顔をしかめた。


「馬鹿を言うな」


「俺は普通じゃない」


「知ってる」


父は即答した。


「昨日、森で何かしたのも分かってる。魔物が急に倒れた理由も、お前だろう」


「そうだ」


「なら、ありがとうだ」


俺は言葉を失った。


父は弓を置き、俺の前にしゃがんだ。


「怖いかどうかを聞かれたら、正直に言えば怖い」


胸の奥が少し沈む。


父は続けた。


「でもな、怖いのはお前じゃない」


「……」


「お前が一人で何でも背負おうとすることだ」


風が吹いた。


父の手が俺の頭に置かれる。


「お前は子供だ。どれだけ強くても、俺たちの子だ」


その言葉は、重かった。


前世の俺に、そんなことを言う者はいなかった。


強ければ任務を与えられた。

強ければ危険な場所へ送られた。

強ければさらに強い敵を殺せと命じられた。


子供だから守られる、という考えはなかった。


「俺は」


言葉が出なかった。


父は笑った。


「言えないことがあるなら、今はそれでいい。ただ、いなくなるな」


「……いなくなる?」


「お前、何か考えてる時は遠くを見る」


父は森の方を顎で示した。


「一人で出て行こうとする顔だ」


見抜かれていた。


前世なら、失態だ。


だが今は、少しだけ胸が痛い。


「約束しろ。黙って消えないと」


昨日、母とも約束した。


危ないことは一人で抱えない。


父とも、同じ約束を求められている。


俺は小さく頷いた。


「分かった」


父は満足そうに笑った。


「よし。じゃあ薪割りを続けろ。普通の子供らしくな」


「普通の子供は薪を割るのか」


「村の子供は割る」


「そうか」


俺は斧を持ち直した。


その日の昼。


村に騎士たちが来た。


馬の蹄の音。

鎧の金属音。

村人たちのざわめき。


先頭にいたのは、銀鎧の男だった。


レオン・グランゼル。


名前は知らない。

だが一目で分かった。


強い。


歩き方に無駄がない。

視線の動きも鋭い。

呼吸は静かで、いつでも剣を抜ける状態。


人類最強戦力。


天魔滅殺隊。


本に書かれていた言葉が頭に浮かぶ。


レオンの後ろには、三人の隊員がいた。


一人は槍を背負った女。

赤い髪。

鋭い目。


一人は魔導書を持つ青年。

柔らかい表情だが、指先に魔力が集まっている。


もう一人は大柄な男。

両手に巨大な籠手をつけている。


全員が、普通の騎士ではない。


村長が慌てて出迎えた。


「こ、これはこれは王都の騎士様。こんな辺境に何用で」


レオンは丁寧に頭を下げた。


「突然の訪問、失礼する。昨夜、この村付近で大規模な魔力反応を確認した」


村人たちがざわめく。


「魔物騒ぎの件か?」


「やっぱり王都まで伝わったのか」


レオンは周囲を見渡した。


その視線が、一瞬だけ俺で止まる。


俺は薪の束を持ったまま、気配を落とした。


心覇。


相手の気配を読み、自分の気配を薄める。


前世の隠密術と合わせれば、大抵の相手には気づかれない。


だが。


レオンの目が、わずかに細くなった。


見えている。


完全には隠せていない。


面倒だな。


レオンの後ろにいた赤髪の女が口を開いた。


「隊長、あの子ですか?」


声は小さい。

だが俺の耳には届く。


レオンは答えない。


代わりに、村長へ言った。


「昨夜、魔物を撃退した者はいるか」


村長は困った顔をした。


「それが……村の者はよく分かっておらんのです。魔物が森から出てきたと思ったら、急に倒れて」


「森へ入った者は」


沈黙。


村人たちの視線がちらりと父へ向いた。


父は俺の前に自然に立った。


レオンはそれを見逃さなかった。


「あなたは?」


「この村の猟師です」


父は答えた。


「昨夜は村の防衛にいました」


「森には?」


「入りかけましたが、魔物が倒れたので戻りました」


嘘ではない。


ただ、全てを言っていない。


レオンはしばらく父を見ていた。


その時、魔導書を持つ青年が小さな水晶を取り出した。


「隊長、簡易測定を」


レオンが頷く。


青年は水晶に魔力を流した。


水晶が村全体へ薄い光を放つ。


探知魔法。


俺は即座に自分の魔力を押し殺した。


火、水、土、風、雷、光、闇。

すべてを沈める。

時間と空間は、完全に気配を消す。


創造と破壊は、封じる。


水晶は淡く光っただけだった。


青年が眉をひそめる。


「反応なし……いえ、村全体に魔力の残滓がありますが、対象は特定できません」


赤髪の女が不満そうに鼻を鳴らした。


「隠してますね」


大柄な男が笑う。


「子供がか? 考えすぎだろ」


「あなたは黙ってて、ガルド」


「へいへい」


レオンは俺の方へ歩いてきた。


父の体がわずかに強張る。


俺は薪を下ろした。


レオンは俺の前で膝をついた。


「名前は」


「シオン」


「年は」


「五歳」


「昨夜、何を見た」


「魔物」


「怖かったか」


「少し」


嘘ではない。


怖かったのは魔物ではなく、村が壊れることだったが。


レオンは俺を見つめた。


目が鋭い。


ただの尋問ではない。

呼吸、瞳孔、筋肉の動き、声の揺れ。


すべてを観察している。


「君は、魔法を使えるか」


「知らない」


「測定したことは」


俺は黙った。


父が横から口を挟む。


「田舎の子供です。そんな大したことは」


「私は父親に聞いていない」


空気が冷えた。


父が一歩前へ出ようとする。


俺は小さく手で制した。


「測ったことはある」


レオンの目が動く。


「結果は」


「水晶が壊れた」


周囲が静まり返った。


赤髪の女が槍に手をかける。


魔導書の青年は目を見開いた。


大柄な男でさえ笑みを消した。


レオンだけが、表情を変えなかった。


「いつ」


「少し前」


「誰が見た」


「村の教師」


村長が慌てた。


「せ、先生は今、怪我人の治療で」


「呼んでくれ」


村長はすぐに人を走らせた。


レオンは立ち上がる。


「シオン」


「何」


「君を王都へ連れて行く必要があるかもしれない」


父が声を荒げた。


「待ってください! この子はまだ五歳です!」


赤髪の女が冷たく言う。


「五歳でも、魔王級の魔力を持つなら放置できない」


父が睨む。


「兵器として連れて行く気か」


「危険を管理するためです」


「同じことだ」


赤髪の女の目が細くなる。


場の空気が一気に張り詰めた。


俺は二人の間に入った。


「王都には行かない」


レオンが俺を見る。


「理由は」


「静かに暮らしたい」


大柄な男、ガルドが思わず笑った。


「隊長、この子すごいな。天魔滅殺隊相手に断ったぞ」


赤髪の女は笑わない。


「拒否権があると思っているの?」


その瞬間、父が俺を庇うように立った。


「あります。親として、私は許可しません」


女の槍がわずかに動く。


俺の中で、何かが冷えた。


父に向けられた殺気。


それだけで十分だった。


俺は女を見た。


「槍から手を離せ」


女が眉を上げる。


「命令?」


「警告」


「五歳の子供が、私に?」


女が一歩近づく。


「私は天魔滅殺隊第七席、ミラ・セイン。魔族の将を討ったこともある」


「そうか」


「怖くないの?」


「父に殺気を向ける相手を、怖がる理由がない」


ミラの表情が変わった。


次の瞬間、彼女は槍を抜いた。


速い。


村人たちには見えなかっただろう。


だが俺には見えた。


狙いは俺ではない。

俺の横の地面。


威嚇。


それでも、父の近くで刃を振った。


俺の体は、勝手に動いた。


木刀を抜く。


ミラの槍が地面に届くより早く、俺の木刀が槍の柄を打った。


乾いた音。


ミラの槍が、空へ跳ね上がる。


全員が固まった。


ミラ自身も、自分の手を見ていた。


「……今」


レオンの目が鋭くなる。


俺は木刀を下ろした。


「これ以上はやめろ」


ミラの顔に、怒りではなく興奮が浮かんだ。


「隊長」


「やめろ、ミラ」


レオンの声が低く響いた。


ミラは不満そうだったが、槍を拾って下がった。


レオンは俺を見た。


「今の技、誰に教わった」


「見えた通りに動いただけ」


父が小さく頭を抱えた。


また言ってしまった。


レオンはしばらく黙っていた。


そして、意外なことを言った。


「すまなかった」


俺は目を瞬いた。


「何が」


「部下が君の父親に殺気を向けた」


レオンは真っ直ぐに俺を見た。


「こちらの非だ」


天魔滅殺隊の隊長格が、五歳の子供に謝罪している。


村人たちは呆然としていた。


俺はレオンを観察した。


この男は、少なくとも道具として俺を扱おうとしていない。


今のところは。


「シオン」


レオンは言った。


「君を無理やり連れて行くつもりはない」


ミラが驚く。


「隊長!」


レオンは手で制した。


「ただし、この村が狙われているのは事実だ。魔族はまた来る」


「知っている」


「なら、取引をしよう」


「取引?」


「我々は村を守る。君は、自分の力について可能な範囲で話す」


父が警戒する。


「それも結局、この子を利用するためでは」


レオンは首を横に振った。


「利用しないとは言えない」


正直な答えだった。


「だが、少なくとも無理やり奪うつもりはない。君たち家族を守ることを、天魔滅殺隊隊長レオン・グランゼルの名において約束する」


俺はその目を見た。


嘘はない。


だが、全てを信じるには早い。


「一つ条件がある」


「何だ」


「村人に手を出すな。父と母を脅すな。俺の意思を無視するな」


レオンは頷いた。


「約束しよう」


「破れば」


俺は静かに言った。


「天魔滅殺隊でも斬る」


空気が凍った。


ガルドが口笛を吹きかけ、ミラに睨まれてやめた。


レオンは、わずかに笑った。


「覚えておく」


その日の夕方。


村の教会が臨時の会議場になった。


レオンたちは村の周囲に結界を張り、夜襲に備えた。


村人たちは不安そうだったが、天魔滅殺隊が守ってくれると知り、少しだけ落ち着きを取り戻した。


俺は教会の裏手にいた。


目の前には、簡易測定用の水晶が置かれている。


レオン、ミラ、魔導書の青年、ガルド。

そして父と母。


魔導書の青年が説明する。


「僕はノア。天魔滅殺隊の魔導解析担当だ。これは先ほどより精度の高い水晶だけど、無理はしなくていい」


「壊れるぞ」


「え?」


「たぶん」


ノアは乾いた笑みを浮かべた。


「なるべく壊れないように調整するよ」


俺は水晶に手を置いた。


魔力を少しだけ流す。


火。


水。


土。


風。


雷。


光。


闇。


水晶が次々と色を変える。


ミラが息を呑む。


ガルドが笑う。


「全属性かよ」


ノアの手が震えている。


「待って、まだ奥に何かある」


時間。


空間。


水晶の内部が歪む。


ノアが叫ぶ。


「隊長、これ以上は危険です!」


レオンが頷く。


「止めろ、シオン」


俺は魔力を引いた。


だが、遅かった。


水晶の奥で、白と黒の光が目を覚ました。


創造。


破壊。


次の瞬間、水晶が音もなく消えた。


割れたのではない。


消えた。


ノアが固まる。


ミラも、ガルドも、言葉を失った。


レオンの表情からも、余裕が消えた。


俺は手を下ろした。


「だから言った」


ノアが震える声で呟いた。


「神域属性……しかも、二つ……」


ミラが一歩下がる。


「嘘でしょ」


ガルドは額を押さえた。


「隊長、これ王都に報告したら大騒ぎどころじゃないぞ」


レオンは黙っていた。


長い沈黙の後、彼は言った。


「この件は、王に直接報告する。だが、情報は封鎖する」


ミラが驚く。


「なぜですか」


「広まれば、各国が動く。魔族も、天使も、竜族もだ」


レオンは俺を見た。


「そして、この村は地図から消える」


母が俺の肩を抱いた。


俺は目を伏せる。


やはり力は、人を巻き込む。


俺がいるだけで、村が危険になる。


その時。


教会の外から悲鳴が聞こえた。


全員が振り返る。


結界が揺れている。


夜空に、黒い炎が上がった。


ノアが顔色を変える。


「魔族です! 結界外に多数!」


レオンは剣を抜いた。


「来たか」


ミラが槍を構える。


ガルドが籠手を打ち鳴らす。


俺も外の気配を読んだ。


昨日より多い。


そして、強い。


その中に、知っている気配があった。


ゼルグ。


彼の声が、結界越しに響いた。


「こんばんは、静かに生きたい少年」


黒い炎の向こうで、魔族たちが笑っている。


「迎えに来たよ」


レオンが俺の前に立つ。


「下がれ、シオン」


俺は首を横に振った。


「狙いは俺だ」


「それでも、君はまだ子供だ」


その言葉に、少しだけ胸が揺れた。


だが、外の魔族たちは待ってくれない。


結界に亀裂が入る。


ゼルグの声が低くなる。


「さあ、選べ。人間の檻に残るか、魔族と来るか」


黒い炎が膨れ上がる。


「それとも、ここで村ごと壊すか」


俺は木刀を握った。


静かに生きたい。


だが、静けさを守るために戦わなければならない時もある。


俺はレオンの横に並んだ。


「村には手を出させない」


ゼルグが笑う。


「その目だ」


黒い炎の中で、魔族の軍勢が動き出す。


「君はやはり、戦場に立つために生まれた」


俺は小さく息を吐いた。


違う。


俺は戦場に戻るために生まれたんじゃない。


守りたいものを、今度こそ失わないために。


木刀に覇気が宿る。


夜の村に、黒い刃が浮かび上がった。


第3話 完

「※本作はnoteで連載中の『転生忍者、世界最強へ』の無料公開版(1〜5話)となります。最新話や先行公開はnoteのメンバーシップにてお届けしています」

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