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最強ノ忍、異世界無双  作者: ゆう


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第2話 村を狙う影

「ここまでお読みいただきありがとうございました!

転生したシオンのその後の大活躍(幼少期覚醒編・学園編)は、noteにて先行連載・独占公開中です。

続きが気になる方は、プロフィールのリンク、または『ゆのの日常 note』で検索してみてください!」

第2話

村を狙う影

黒いローブの男は、膝をついたまま動けずにいた。


額には汗。

指先は震え、呼吸は乱れている。


無理もない。


まだ五歳の子供が放った覇気によって、男の体は本能から敗北を認めていた。


男は魔族だった。


人間よりも魔力に優れ、戦場で生まれ、戦場で育つ種族。

弱者を嗅ぎ分け、強者を見極める感覚は、人間の兵士とは比べものにならない。


だからこそ分かった。


目の前の少年は、異常だ。


「……君は、本当に人間か?」


男はかすれた声で言った。


俺は答えなかった。


木刀を下ろしたまま、ただ男を見ていた。


殺すのは簡単だった。


首を斬る。

心臓を潰す。

空間ごと裂く。

破壊で存在を消す。


方法はいくらでもある。


だが、俺はもう誰も殺さないと決めた。


前世のようには、生きない。


「帰れ」


俺は言った。


「次に村へ近づけば、殺す」


男は喉を鳴らした。


「殺さないのか」


「殺したいわけじゃない」


「甘いな」


男の口元に、わずかな笑みが戻る。


「その甘さが、いずれ君の大切なものを奪う」


その言葉に、胸の奥が小さく揺れた。


前世で何度も聞いた理屈だった。


迷えば死ぬ。

情けをかければ殺される。

守りたいものがあるなら、先に殺せ。


たしかに、それは間違っていない。


だが。


「お前たちは、いつも同じことを言う」


「何?」


「殺す理由ばかり探している」


男の笑みが消えた。


俺は続けた。


「俺はもう、それに飽きた」


沈黙。


風が木々を揺らした。


男はしばらく俺を見ていたが、やがてふらつきながら立ち上がった。


「名を聞いても?」


「必要ない」


「なら、こちらだけ名乗ろう」


男は胸に手を当てた。


「魔族偵察部隊、第三席。ゼルグ」


「覚える気はない」


「そうか。だが私は覚えた」


ゼルグは笑った。


「静かに生きたい少年。だが世界を壊せる少年」


俺の指が、木刀の柄にわずかに沈んだ。


ゼルグはそれ以上何も言わず、闇へ溶けるように消えた。


森に静寂が戻る。


俺はしばらく、その場に立っていた。


殺さなかった。


それでよかったのか。


答えは分からない。


ただ、胸の奥に残った冷たさが少しだけ薄れた気がした。


その夜、俺は家に戻った。


母はすぐに異変に気づいた。


「シオン」


俺は玄関で足を止めた。


「森へ行っていたの?」


「……少し」


「服に血がついているわ」


見下ろす。


袖に、魔物の血が飛んでいた。


見落としていた。


前世ならありえない失態だ。


この体になってから、どうも感覚が鈍い。

いや、違う。


この家では、警戒を緩めてしまう。


それが理由だった。


「魔物がいた」


母の顔色が変わった。


「怪我は?」


「ない」


母はすぐに俺の体を確認した。


腕。

肩。

首。

頬。


どこにも傷がないと分かっても、母は安心した顔をしなかった。


「一人で森に行かないで」


「大丈夫だ」


「大丈夫かどうかじゃないの」


母の声は強かった。


俺は言葉を失った。


叱られている。


任務の失敗で罰を受けたことはある。

命令違反で殴られたこともある。

だが、それとは違う。


母は怒っていた。

俺を心配して。


「あなたが強いのは分かってる」


母は小さく息を吐いた。


「でも、強いからって傷つかないわけじゃないでしょう」


その言葉は、不思議だった。


強ければ傷つかない。


前世では、そう教えられた。

弱い者が傷つく。

だから強くなれ。

傷つきたくなければ、誰よりも先に斬れ。


けれど母は違うことを言った。


強くても、傷つく。


心が。


俺は答えられなかった。


母は俺を抱きしめた。


「お願い。危ないことは一人で抱えないで」


温かかった。


胸の奥に、知らない痛みが生まれた。


「……分かった」


俺がそう言うと、母はようやく少し笑った。


「約束よ」


「約束する」


前世で交わした契約は、いつも血の匂いがした。


だが、この約束は違った。


守りたいと思った。


翌朝。


村はいつも通りだった。


鳥の声。

畑を耕す音。

井戸端で話す女たちの声。

子供たちの笑い声。


魔族が近づいたことなど、誰も知らない。


それでいい。


俺は畑の脇に座り、本を読んでいた。


この世界の歴史書だ。


人間、魔族、天使。


三つの種族は長く争ってきた。


人間は大地を広げ、国を作り、魔族を恐れた。

魔族は魔力に優れ、過酷な土地で生き残るために戦った。

天使は正義を掲げ、空の領域から人間と魔族を見下ろした。


竜族だけは中立。


強者のみを認め、世界の争いに滅多に関わらない。


本にはそう書かれている。


だが、歴史書は勝者が書くものだ。


どこまで正しいかは分からない。


「シオン!」


声がした。


顔を上げると、村の子供たちが走ってきた。


先頭にいるのは、同い年の少年カイル。

明るく、よく喋り、よく転ぶ。


「今日こそ勝負だ!」


「何の」


「木登り!」


カイルは胸を張った。


「昨日、新しい登り方を思いついたんだ。今度こそお前に勝つ」


「俺は参加すると言っていない」


「いいから来いよ!」


腕を引っ張られる。


俺は本を閉じた。


子供の遊びは苦手だ。


勝ち方が分かりすぎる。

力の加減も難しい。

本気を出せば壊れる。

手を抜けば怪しまれる。


だが、断る理由もなかった。


村の外れにある大きな木へ向かう。


子供たちは順番に木へ登った。


カイルは得意げに枝を掴み、途中で足を滑らせた。


「うわっ!」


落ちる。


周囲の子供たちが悲鳴を上げた。


俺は反射的に動いていた。


地面を蹴り、カイルの落下地点へ入る。

腕を伸ばし、衝撃を殺しながら受け止める。


本当なら、そのまま自然に倒れ込むべきだった。


だが俺は、片手で受け止めてしまった。


カイルは目を丸くする。


「シオン……お前、すげえな!」


しまった。


他の子供たちも歓声を上げる。


「今の見たか!?」


「片手だぞ!」


「シオン、やっぱり強いんだ!」


俺はカイルを地面に下ろした。


「たまたまだ」


「たまたまで人は片手キャッチしないぞ!」


正論だった。


どう誤魔化すか考えていると、村の鐘が鳴った。


一度。


二度。


三度。


それは、魔物の接近を知らせる鐘だった。


子供たちの顔から笑みが消える。


遠くで大人たちの叫び声が上がった。


「森から魔物だ!」


「数が多いぞ!」


「女と子供は教会へ!」


俺は森の方を見た。


気配がある。


一匹ではない。


十。

二十。

いや、もっと。


昨日の狼型魔物と同じ瘴気。


自然発生ではない。


誘導されている。


ゼルグか。


いや、あの男が戻るには早すぎる。

別の魔族。

あるいは、昨日の魔物が斥候だったか。


どちらでもいい。


村に来るなら、止めるだけだ。


「カイル」


俺は言った。


「皆を連れて教会へ行け」


「お前は?」


「すぐ行く」


「嘘だろ。シオン、お前」


「早く」


声に少し覇気が混じった。


カイルは息を呑み、頷いた。


「分かった!」


子供たちが走り去る。


俺は逆方向へ向かった。


森の入り口では、村の男たちが槍や斧を持って集まっていた。


父もいた。


「シオン! なぜここにいる!」


「魔物の数が多い」


「分かってる。だからお前は母さんのところへ」


父の言葉が途切れた。


森の奥から、魔物たちが現れたからだ。


狼型。

猪型。

鳥型。


どれも目が赤く、瘴気をまとっている。


普通の魔物ではない。


誰かが魔力で暴走させている。


村人たちの足が震えた。


無理もない。


この数は、村の猟師が相手にできる規模を超えている。


父が俺の前に立った。


「下がれ、シオン」


俺はその背中を見た。


大きな背中だった。


前世で、誰かが俺の前に立ったことはなかった。


俺はいつも先頭にいた。

刃として。

盾として。

捨て駒として。


だが父は違う。


勝てないと分かっていても、俺の前に立つ。


守るために。


魔物が一斉に動いた。


村人たちが叫ぶ。


俺は父の横を抜けた。


「シオン!」


父の声を背中で聞きながら、俺は木刀を抜いた。


使う力は選べ。


破壊は使わない。


創造も使わない。


時間も空間も、最小限。


剣だけでいい。


最初の狼が飛びかかる。


俺は半歩だけ体をずらした。


木刀の先で顎を打つ。

首の骨が砕け、狼が地面に沈む。


二匹目。


足を払う。

転んだところを首筋に一撃。


三匹目。


爪をかわし、腹を打つ。


殺さないつもりだった。


だが、暴走した魔物は止まらない。


倒しても立ち上がる。

骨が折れても向かってくる。

瘴気が体を無理やり動かしている。


操られている。


「面倒だな」


俺は息を吐いた。


魔物の群れの奥。


木々の間に、黒い魔法陣が見えた。


あれが核か。


俺は地面を蹴った。


村人たちの目には、俺が消えたように見えただろう。


魔物の間をすり抜け、森へ入る。


核の前には、黒い石が浮いていた。


魔力を放ち、魔物たちに瘴気を送り込んでいる。


俺は木刀を振る。


黒い石が割れた。


その瞬間、魔物たちの動きが鈍った。


だが、同時に別の魔力が膨れ上がる。


罠か。


黒い石の破片が空中で集まり、巨大な影を形作った。


人型。


角。

翼。

長い腕。


魔族の召喚獣。


村を一つ潰すには十分な力を持っている。


影の魔物が腕を振り下ろした。


俺は木刀で受けた。


衝撃で地面が沈む。


普通の子供の体なら潰れていた。


俺は眉をひそめた。


「村が壊れる」


これ以上、長引かせるのはまずい。


だが、破壊は使わないと決めた。


なら。


俺は左手を掲げた。


空間が静かに歪む。


影の魔物の腕が、途中で止まる。


切断ではない。


空間を折り畳み、動きを封じた。


さらに右手の木刀を構える。


覇気を流す。


木刀が黒く染まった。


断覇。


前世の剣術に、この世界の覇気を重ねる。


「終わりだ」


一閃。


影の魔物の体が、縦に裂けた。


断末魔はなかった。


黒い霧となって消える。


森に静けさが戻った。


村人たちの声が遠くから聞こえる。


「魔物が倒れたぞ!」


「何が起きた!?」


「誰か森にいるのか!」


俺は木刀を下ろした。


その時、足元に小さな黒い破片が落ちているのを見つけた。


魔族の通信石。


壊れかけている。


そこから声が漏れた。


「……観測完了」


俺は石を拾った。


声は続いた。


「対象、推定五歳。空間属性、覇気使用を確認」


別の声。


「破壊は?」


「未確認」


「なら、もう一度刺激しろ。家族を狙えば使う」


俺の指が止まった。


石の向こうの声は、冷たく言った。


「神域属性の覚醒には、強い喪失が必要だ」


胸の奥で、何かが冷えた。


次の瞬間、通信石が粉々に砕けた。


俺が握り潰していた。


森の奥で、鳥が飛び立つ。


俺は自分の手を見た。


怒り。


これは怒りだ。


前世では、とっくに殺した感情。


だが今は、はっきりと分かる。


家族を狙う。


村を壊す。


俺を兵器にするために。


「そうか」


俺は静かに呟いた。


「なら、こちらも決めた」


その日の夜。


村は無事だった。


怪我人は出たが、死者はいない。


村人たちは、魔物が突然倒れた理由を分かっていなかった。


父だけは、俺を見て何かを察していた。


食卓で、父は何度も口を開きかけ、結局何も言わなかった。


母も同じだった。


俺は普段通りに食事をした。


味はした。


温かいスープ。

焼いたパン。

母の作った薬草茶。


大丈夫だ。


まだ、感じられる。


食後、母が俺の隣に座った。


「シオン」


「何」


「無理をしてない?」


俺は答えようとして、言葉に詰まった。


無理とは何だろう。


前世では、命令をこなすことが普通だった。

痛みを隠すことが普通だった。

何も感じないふりをすることが普通だった。


だが、母の前ではそれがうまくできない。


「分からない」


正直に言った。


母は少し驚いた顔をして、それから優しく笑った。


「分からないって言えるなら、まだ大丈夫」


「そうなのか」


「そうよ」


母は俺の髪を撫でた。


「本当に壊れてしまう人は、自分が壊れていることにも気づけないから」


その言葉が、胸に残った。


夜更け。


俺は家の外に出た。


村は眠っている。


月明かりの下、遠くの森を見つめる。


魔族はまた来る。


次はもっと直接的に。

もっと残酷に。

俺の心を壊すために。


なら、先に動くべきか。


前世の俺なら、迷わずそうした。

敵の拠点を探り、幹部を殺し、情報源を潰す。


だが今の俺は五歳だ。


父と母の子供だ。


勝手に消えれば、二人は悲しむ。


それが分かるくらいには、俺はまだ人間でいられている。


その時、空が光った。


北の空。


流星ではない。


魔力信号。


王都の方角から、白い光が上がっていた。


同時に、遠く離れた塔の中。


天魔滅殺隊の鎧の男が、部下たちを前に立っていた。


「魔力反応は辺境のレナス村付近」


部下が報告する。


「魔族の反応も確認されています」


鎧の男は頷いた。


「調査隊を出す」


「隊長自らですか?」


男は割れた水晶の破片を見た。


「魔王より上の反応だ。雑兵を向かわせても死ぬだけだ」


部屋の空気が重くなる。


男は静かに告げた。


「対象が敵なら、国が滅ぶ」


部下が息を呑む。


「味方なら?」


男は目を細めた。


「人類は、神を手に入れる」


夜の村。


俺は北の空を見ていた。


遠くから、複数の気配が近づいてくる。


魔族ではない。


人間。


だが、ただの人間ではない。


研ぎ澄まされた刃のような気配。


天魔滅殺隊。


本には、人類最強戦力と書かれていた。


約三百名。

SR級の中でも選ばれた怪物のみが所属する特殊部隊。


その一部が、この村へ向かっている。


俺は小さく息を吐いた。


魔族の次は、人類最強か。


静かに生きたい。


その願いは、どうやら思っていたより難しいらしい。


遠くの空で、白い光がもう一度瞬いた。


そして森の奥では、消えたはずのゼルグが木の影から村を見ていた。


「さあ、選べ。シオン」


魔族の男は笑う。


「人間に利用されるか。魔族に来るか。それとも」


その瞳が細くなる。


「すべてを壊すか」


第2話 完

「※本作はnoteで連載中の『転生忍者、世界最強へ』の無料公開版(1〜5話)となります。最新話や先行公開はnoteのメンバーシップにてお届けしています」

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