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最強ノ忍、異世界無双  作者: ゆう


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第1話|「静寂の忍、死す」

「※本作はnoteで連載中の『転生忍者、世界最強へ』の無料公開版(1〜5話)となります。最新話や先行公開はnoteのメンバーシップにてお届けしています」

第1話|「静寂の忍、死す」

前世で組織に裏切られた伝説の忍・シオン。


今世では静かに生きると決めた彼は、異世界でただ一人、

“創造”と“破壊”という神域属性を宿してしまう。


これは、世界最強になりたい少年の物語ではない。


静かに生きたいだけの少年が、

魔族、天使、人類最強部隊、そして世界の秘密に巻き込まれていく物語。




俺は、名前を持たなかった。


いや、正確には名を与えられていた。

だがそれは、人として呼ばれるためのものではない。


任務書に記される記号。

標的を殺すために使われる識別名。

組織が俺を管理するための音。


それが、シオンという名だった。


月のない夜。

燃える城の屋根に、俺は立っていた。


眼下には、数え切れないほどの兵が倒れている。

ある者は喉を裂かれ、ある者は毒に沈み、ある者は自分が死んだことにも気づかぬまま息絶えていた。


血の匂い。

煙の匂い。

焼けた木と、肉の匂い。


普通の人間なら吐き気を催す光景だろう。

だが、俺は何も感じなかった。


怒りもない。

哀れみもない。

達成感すらない。


ただ、任務が終わった。


それだけだった。


「ば、化け物……」


崩れた城壁にもたれかかる兵が、震える声で言った。


俺はその男を見下ろした。

まだ息がある。

だが、助からない。


「違う」


俺は短く答えた。


「道具だ」


男の瞳に恐怖が広がった。

次の瞬間、その瞳から光が消える。


俺は刀についた血を振り払い、闇の中へ身を沈めた。


組織は俺を“影”と呼んだ。


姿を見せず、声を残さず、標的だけを消す。

王も殺した。

将軍も殺した。

罪人も、聖人も、裏切り者も、まだ何も知らない子供すらも。


命じられれば斬った。


俺に、選ぶ権利はなかった。


選ばない方が楽だった。


考えれば、手が止まる。

手が止まれば、任務に失敗する。

任務に失敗すれば、罰を受ける。


だから俺は、感情を殺した。


悲しみを殺し、怒りを殺し、迷いを殺した。

いつしか、人を殺すことよりも、自分の心を殺すことの方が上手くなっていた。


その夜も、任務は成功した。


標的は死亡。

目撃者なし。

証拠なし。


完璧だった。


俺は隠れ里へ戻った。


竹林の奥。

結界に覆われた、地図に存在しない場所。

そこが、俺を育てた組織の本拠だった。


広間には、上官が座っていた。


白髪の老人。

穏やかな顔。

だがその目は、俺が知るどんな刃より冷たい。


「戻ったか、シオン」


「標的は始末した」


「そうか。ご苦労だった」


俺は膝をついたまま、次の言葉を待った。


「次の任務は」


上官は、笑った。


「もうない」


その瞬間、背後に殺気が生まれた。


一つではない。

十。

二十。

いや、それ以上。


天井裏。

柱の影。

床下。

障子の向こう。


俺を囲むように、仲間だった者たちが潜んでいる。


俺はゆっくりと息を吐いた。


「……そういうことか」


上官は扇子を開いた。


「お前は強くなりすぎた」


「命令通りに鍛えられただけだ」


「そうだ。我々が作った。だからこそ、我々が処分する」


爆符が弾けた。


次の瞬間、広間が炎に包まれる。


だが俺はすでに動いていた。


床を蹴り、炎の隙間を抜ける。

飛来する毒矢を指で弾き、背後から迫る忍の喉を柄で潰す。

刀を抜く。

一閃。


三人が倒れた。


悲鳴はない。

忍は死ぬ時も声を出さない。


鎖が足首に絡みついた。

呪符が腕に貼り付く。

体の動きが一瞬だけ鈍る。


その一瞬を、彼らは待っていた。


床に巨大な封印陣が浮かび上がる。

黒い文字が蛇のように這い、俺の影を縫い止めた。


「さすがに、正面からでは殺せぬ」


上官が立ち上がる。


「だから、お前専用の術を用意した」


胸に、冷たい感触があった。


見下ろすと、黒い刃が突き刺さっていた。

ただの刃ではない。

魂を焼く呪いの刀。


体から力が抜ける。


膝が床についた。


「恨むな、シオン」


上官は言った。


「これも任務だ」


恨みはなかった。


怒りもなかった。


ただ、少しだけ。


本当に少しだけ。


もし次があるなら、と思った。


血が喉を上がってくる。

視界が滲む。

天井の木目が、夜空のように遠ざかっていく。


俺は最後に、誰に向けるでもなく呟いた。


「静かに……生きたい」


世界が暗転した。


そして。


泣き声が聞こえた。


最初、それが自分の声だと気づかなかった。


眩しい光。

温かい空気。

誰かの腕の中。


「元気な男の子ですよ!」


女の声がした。


続いて、震える男の声。


「ありがとう……本当に、ありがとう」


俺は目を開けた。


視界がぼやけている。

体が動かない。

指先に力が入らない。

声も出せない。


だが、意識だけははっきりしていた。


生きている。


なぜだ。


俺は死んだはずだ。


胸を貫かれ、魂を焼かれ、確かに命を落としたはずだった。


なのに。


「あなたの名前は、シオン」


若い女が、俺を抱きしめながら微笑んだ。


「シオン。私たちの大切な子」


同じ名前か。


皮肉だな。


前世では道具の名だった。

今世では、子供の名として呼ばれている。


男が俺の顔を覗き込む。


「泣き止んだぞ」


「本当。この子、賢そうな目をしてる」


「はは、まだ生まれたばかりだぞ」


二人は笑っていた。


その笑い声に、悪意はなかった。


命令もない。

殺気もない。

利用しようとする気配もない。


ただ、俺が生まれたことを喜んでいる。


それが、不思議だった。


俺は赤子の体で、小さく息を吸った。


今世では、誰も殺さない。


誰の道具にもならない。


名誉もいらない。

力もいらない。

地位もいらない。


静かに生きる。


それだけでいい。


そう、思っていた。


五年後。


俺は小さな村で暮らしていた。


村の名は、レナス。

王都から遠く離れた、地図の端にあるような場所だ。


畑があり、森があり、小川があり、夜になれば星がよく見える。

前世の隠れ里とは違う。


ここには、血の匂いがない。


父は村の猟師だった。

母は薬草に詳しく、村人の怪我や病をよく診ていた。


二人は俺を大切に育ててくれた。


それが嬉しいのかどうか、最初はよく分からなかった。


ただ、母が頭を撫でると胸の奥が少し温かくなる。

父が笑うと、なぜか安心する。


前世では知らなかった感覚だった。


ある日、父が木刀を持って庭に立った。


「シオン、剣を習ってみるか?」


俺は畑の脇で本を読んでいた。


「剣?」


「ああ。男なら少しくらい身を守れた方がいい」


父は笑って木刀を振った。


構えは甘い。

重心も高い。

隙だらけだ。


だが、俺はそれを口にしなかった。


「少しだけなら」


「よし。まずは構えからだ」


父が俺の前に立つ。


「こうやって足を開いて、相手を見る。いいか、剣は力だけじゃない。大事なのは間合いと」


父の木刀が、宙を舞った。


からん、と地面に落ちる。


父は自分の手を見た。


俺も自分の木刀を見た。


しまった。


体が勝手に動いた。


前世の癖だ。

相手が武器を持ち、間合いに入った瞬間、無意識に制圧してしまった。


「シオン」


父の声が震えている。


「今、何をした?」


「……見えた通りに動いただけ」


「見えた通りってな……」


父はしばらく黙ったあと、苦笑した。


「母さんには内緒にしておこう」


その日の夕方には、母にばれていた。


翌日、俺は村の魔法教師の家へ連れて行かれた。


「魔法適性を見るだけだ。怖がらなくていい」


白髭の教師が、机の上に水晶を置いた。


この世界には魔法がある。


火、水、土、風、雷。

それが一般属性。


光と闇は上位属性。

国家に仕える魔導士でも、持つ者は少ない。


時間と空間は禁忌属性。

伝説に近い。


そして、創造と破壊。


神域属性。


本にそう書いてあった。

だが、実在するとは思われていない。


「普通は一属性。才能があれば二属性。三属性なら王都に推薦される」


教師は穏やかに笑った。


「さあ、手を置きなさい」


俺は水晶に手を触れた。


直後、水晶が赤く光った。


「火属性」


次に青。


「水」


茶色。


「土」


緑。


「風」


紫。


「雷」


教師の顔から笑みが消えた。


さらに白。


「光……?」


黒。


「闇……?」


水晶の内側で、時計の針のような光が回った。


教師が息を呑む。


「時間……」


空間が歪む。

水晶の中に亀裂が走る。


「空間まで……」


父が俺の肩に手を置いた。


「先生、これは」


「黙ってください」


教師の声は震えていた。


次の瞬間、水晶が白と黒に分かれた。


白い光が花のように広がる。

黒い光が、それを音もなく消し去る。


創造。


破壊。


水晶が砕けた。


部屋に沈黙が落ちた。


教師は椅子から崩れるように座り込んだ。


「この子は……国に知られてはいけない」


父の顔が険しくなる。


「どういう意味ですか」


「利用されます。兵器にされる。あるいは危険すぎるとして殺される」


俺は割れた水晶を見つめていた。


またか。


力は、いつも俺を縛る。


母が俺を抱き寄せた。


「大丈夫」


その声は、前世で聞いたどんな命令よりも強く、優しかった。


「誰にも言わない。あなたは、私たちの子だから」


俺は何も答えられなかった。


守られるという感覚を、俺はまだ知らなかった。


その夜。


俺は一人で森にいた。


手のひらに、小さな黒い球を作る。


「破壊」


黒い球が地面に落ちた。


草が消えた。


燃えたのではない。

切れたのでもない。

最初から存在しなかったかのように、そこだけが空白になった。


俺は胸に手を当てる。


一瞬、何も感じなかった。


草が消えたことも。

命が消えたことも。

同じだと思いかけた。


「危険だな」


次に白い光を灯す。


「創造」


消えた草が再び生えた。


元通りになったはずなのに、胸の奥に冷たいものが残っている。


破壊を使うたび、感情が削られる。


そんな気がした。


「この力は、使わない」


そう決めた。


その時、森の奥から唸り声が聞こえた。


巨大な狼型の魔物が、木々の間から姿を現す。

赤い目。

裂けた口。

黒い瘴気。


向かう先は、村だった。


俺は木刀を抜いた。


「村に行く気か」


魔物が地面を蹴る。


速い。

だが、遅い。


俺の目には、動きのすべてが見えていた。


筋肉の収縮。

爪の軌道。

噛みつく角度。

次に踏み込む位置。


前世で磨いた技と、この世界の力が重なる。


俺は木刀を振った。


空間が斜めに裂ける。


魔物の体が、音もなく二つに分かれた。


血が地面に落ちる。


俺は目を伏せた。


「……まただ」


その時だった。


背後の木の上から、声がした。


「見つけた」


振り返る。


黒いローブの男がいた。

額には、魔族の紋章。


男は笑っていた。


「神域属性を持つ子供。噂は本当だったか」


俺は木刀を握り直した。


「誰だ」


「君を迎えに来た者だ」


「帰れ」


男は肩をすくめる。


「無理だ。君は世界を変える存在だ。魔族も、人間も、天使も、竜族も、いずれ君を欲しがる」


「俺の意思は」


「関係ない」


その言葉で、胸の奥が冷えた。


前世と同じだ。


力があるから使われる。

強いから奪われる。

危険だから縛られる。


俺は、もう誰の道具にもならない。


足元から黒い覇気が広がった。


森の空気が重くなる。

木々が震える。

鳥が一斉に飛び立つ。


男の笑みが消えた。


「な……何だ、この圧は……」


俺は一歩だけ近づいた。


「俺を測るな」


男の膝が地面につく。


「馬鹿な……子供の覇気では……」


俺は静かに告げた。


「壊れるぞ」


男の背後の空間に、亀裂が走った。


ぴしり。


闇そのものが割れるような音がした。


男の顔から血の気が引く。


俺は木刀を下ろした。


「俺は静かに生きたいだけだ」


それ以上、何も言わなかった。


遠く離れた王都。


白い塔の最上階で、魔力観測用の水晶が砕け散った。


研究員たちが悲鳴を上げる。


「何だ今の反応は!」


「魔王級か!?」


部屋の奥に、一人の男が立っていた。


銀の鎧。

肩には、人類最強部隊――天魔滅殺隊の紋章。


男は割れた水晶を見つめ、低く呟いた。


「違う」


研究員が振り返る。


「では、何だと?」


男の目が鋭く細められる。


「魔王より、上だ」


夜の森。


俺は一人、月の下に立っていた。


静かに生きたい。


ただ、それだけだった。


だが世界は、もう俺を見つけてしまった。


第1話 完

「ここまでお読みいただきありがとうございました!

転生したシオンのその後の大活躍(幼少期覚醒編・学園編)は、noteにて先行連載・独占公開中です。

続きが気になる方は、プロフィールのリンク、または『ゆのの日常 note』で検索してみてください!」

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