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ダンジョン見学キュ

小屋で待機生活を続ける聡美


突然外出の準備を始めるが・・・

ある日の朝。

 聡美は小屋の前で、珍しく「外出」の準備をしていた。

 リュックを背負い、腰には(除毛用の)神刀を差し、mPADで地図を確認している。


異世界神から通信が!


ピロリン!

『……おい、聡美。今日は何してるんだ? また新発売の限定まんじゅうでも並びに行くのか?』

「ダンジョンに行くキュ」

『はぁ!?』


 通信越しに、神様が椅子から転げ落ちる派手な音が聞こえた。

『ダメだ!! 絶対ダメ!! お前、戦闘力E--だぞ!? スライムどころか、動くキノコにすら勝てないだろ!?』


「大丈夫キュ。入口を見に行くだけキュ。観光キュ。異世界に来たのに、ずっと小屋に引きこもってるのは非合理的キュ。たまには外の空気を吸うべきキュ」

『お前、"たまには外の空気"って……毎日ドラゴン便の受け取りに表に出てるだろ……』


「あれは物流の検品キュ。散歩じゃないキュ」

『……はぁ……。分かった。"入口を見るだけ"なら許可する。絶対に、一歩も中に入るなよ?』

「了解キュ」


◆ 伝説の(埋まった)ダンジョン ◆

 

聡美が向かったのは、街の外れにある「封印されたダンジョン」。

入口は巨大な岩で塞がれ、周囲には朽ちた看板が立っている。


『警告:かつて砂属性の勇者が、ダンジョンごと封印せり。立ち入るべからず』


「……すごいキュ……。砂属性の勇者が、ダンジョン全体を砂で埋めたキュ……。まさに伝説キュ……」

聡美はmPADで記念写真を撮った。


「これ、インスタ映えするキュ……。あ、Wi-Fi繋がってないから投稿できないキュ。非合理的キュ……」

残念そうに呟きながらも、聡美は満足げに岩の周りを歩いた。

「引きこもりばかりじゃ、心のビタミンが不足するキュ」――そんな殊勝なことを考えていた、その時だった。


ゴソッ……。


岩の向こうから、何かが動く音がした。


「……キュ?」


ゴソゴソゴソ……!!


明らかに、"何か"がいる。しかも、確実にこっちに近づいてきている。


「……っ!」


その瞬間、聡美の脳裏に、大学時代の忌まわしき記憶がフラッシュバックした。


 * * *


【回想:つのみや大学・恐怖の廊下】


廊下をいつものようにほんわかと歩く聡美

「今日も平和キュ~」


その時突然、見知らぬ男子学生が聡美の前に立ちはだかった。


「あの……橘さん! ずっと見てました! 好きです! 付き合ってください!」

聡美「――――」


次の瞬間、聡美は何も言わずに――

「キュッ!!!」


一目散に、全力疾走で逃げた。階段を駆け下り、学食に逃げ込み、親友のなおちゃんの後ろに隠れた。


なおちゃん「……聡美、逃げたの?」

聡美「……逃げたキュ……。怖かったキュ……」

なおちゃん「聡美らしいね」

聡美「知らない人に声かけられたら逃げなさいとママに教わったキュ」


 * * *


◆ 勇者、爆走する ◆


そして――現在。


ゴソゴソゴソゴソ!!


岩の隙間から、何かの「触手のようなもの」がヌッと出てきた。


「キュッ!!!!!!」


反射的に、全力で逃げ出した。

リュックを上下に揺らし、泥を跳ね上げ、文字通りの全速力。


「こ、怖いキュ!! 何かいたキュ!! 触手キュ!! レディコミで見た『魔界社長』に出てくるやつキュ!! 崖ドンされる前に逃げるキュ!!」

『お、おい!? 何があった!? 心拍数が限界突破してるぞ!』


「触手キュ!! ダンジョンが襲ってきたキュ!! 見るだけって言ったのに!! 非合理的キュ!!」

『お前が近づいたからだろ!?』


森を駆け抜け、街を通り抜け、聡美は一気に小屋へと飛び込んだ。


バタン!! ガチャリ!!

鍵をかけ、ドアに背中を預けて床に座り込む。


「……はぁ……はぁ……。……やっぱり……小屋が一番キュ……」


震える手でリストバンドをかざす。


ピッ!

【こしあんまんじゅう×3 購入完了】

『そこで「ピ」するのかよ・・・』


まんじゅうを一口かじる。甘い。


「……こしあんの甘さが私を癒してくれるキュ……。外は怖いキュ……。触手とか、告白とか……私には刺激が強すぎるキュ……」


転生神は呆れたように言った

『……お前、本当に勇者候補か?』


「候補キュ。本採用じゃないキュ。もう二度と遠出はしないキュ。小屋とmamazonがあれば、私は生きていけるキュ」

『……うん、知ってたよ』


◆ 消滅した冒険心 ◆


その後、転生神が遠隔監視で調べたところ――。

ダンジョンから出てきた「触手」の正体は、ただの**「風に揺れたつた」**だった。


『……お前、ただの植物に怯えて、時速30キロ近い猛スピードで逃げたのか……』


「……蔦でも怖いものは怖いキュ……。うねうねしてたキュ……」


『……はぁ……』


こうして、聡美の「唯一のダンジョン探検」は、入口を見ただけで幕を閉じた。

彼女の冒険心は完全に消滅し、引きこもり生活の決意はさらに強固なものとなったのである。

魔王よりも先に「植物」に敗北した勇者候補・橘聡美。

立派な勇者になるときは来るのか?


*砂魔道士聡美シリーズもよろしくキュ!

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