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異世界で、平和を願う。  作者: ちょこぼーらー
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147 空襲と迎撃の結果

 元いた世界とは違い、三日月になっても大きな月の光と星明かりの中、華は大樹の下に腰を下ろして膝を抱えて目を閉じていた。


(どうにかして藤棚さんに帰ろう。よく考えたらもう死んじゃってるわたしがあちらに帰れるわけないのよね…。突然いなくなったらきっとみんな心配するだろうな…)


 真っ先に思い浮かんだのはこちらの、ローレンス商会の面々。

 空襲で死んだ華を心配する人はいないけれど、こちらの世界には華がいなくなったら心配する人達がいる。


(帰ろう)


 藤棚さんに。

 ファーナやシア達のいる国へ。


 華の腕に乗って、伏せた顔に潜り込むようにこめかみにすり寄って眠る小鳥のふわふわな毛の感触と体温を感じながら、藤棚さんに戻れても今後山に住めないかもしれない事も考える。


(山に、あの場所に住んじゃ駄目だって言うなら町に住むことも考えよう。写本や畑の世話をしながらのんびり静かに暮らしたかったけど…。藤棚さん…移築出来ないかな?)


 ロイはあの大きな白い鳥が山の主なんじゃないかと言っていた。

 あの大きな鳥がいるから藤棚さんの辺りには魔獣や猛獣がいないのだろうと。


 その山の主に藤棚さんごと攻撃されたのだ。


 出ていけ、ということだろうか。


 そうは思うがいささか釈然としない事もある。

 川で一度あの白い鳥に遭遇した時には威嚇も攻撃も受けていない。

 それが突然藤棚さんまでやって来て前触れも無く攻撃されたのだ。

 まさか今日初めて藤棚さんの存在に気付いたのだろうか。

 それともーーー。


(似てないけど、もしかしてこの子の親だったりするのかな。この子と人間が一緒にいるのが嫌だった?)




 護衛チームが帰るのを見送って振り返ったら、いつの間にか北斗の甲羅の上にこの黄色いふわふわが乗っていた。

 北斗になついているように見えたから、華がお友達かと聞くと、そうだと。

 留守番中に仲良くなったのだと思って、華も「よろしくね」と手を差し出すとその掌に乗ってすりすりと体を押し付ける小鳥。


 そうして北斗と小鳥と戯れていたら空が急に暗くなって。

 見上げた先には一羽の巨鳥。


 華には最初、太陽を遮るそれが逆光で白い鳥だとは分からなかったが、いつか遭遇した巨鳥だと思った瞬間には衝撃波に見舞われていた。


 藤棚さんの屋根が吹き飛ぶ中、華は腕で頭を庇った防御姿勢で身を低くするしかなかったが、薄く開けた目で、北斗の周囲から礫が打ち出されるのが見えた。


 方術。魔法。


 そんな不思議な力で応戦する北斗からは聞いたことがない「シャーッ!シャーッ!!」という声?がして、明らかに怒っていた。華は北斗が怒るところなど初めて見た。


 そして小鳥がその北斗の側まで飛んで行って白い鳥に何事かを訴えると、確かに一度は衝撃波が弱まったのだ。

 だがその瞬間を狙ったように、地面から木の根が鞭のように飛び出て巨鳥に襲いかかった。いくつもの木の根に打たれた巨鳥は堪らず木の根の及ばない上空へと退いた、ように見えた。


 しかし巨鳥はより怒りを募らせて襲って来たのだ。

 木の根の鞭を操る者へ。


「ーーーーー!!」


 それはいつの間にか藤棚さんの側までやって来ていた、華が気弱さんと勝手に呼んでいる鹿のような動物だった。


 木の根を鞭のように操る気弱さんに向けて怒り狂った巨鳥が衝撃波を発した瞬間。

 北斗の周囲からは礫が。

 そして黄色い小鳥から放電したのを華は目撃した。



 直後、轟音と共に稲妻が生まれ、気が付いたら静かな原っぱにいたのだ。




(天狗の神隠しなんかじゃなかったね…)


 空襲からの転移。


 今回は別の世界ではないようだが、華がこの世界に来た時もきっと同じような状況だったのだろうと思った。

 もしかしたらあの白い巨鳥が天狗なのかもしれないが。





 夜が明けて、華は再び歩き出した。


 当てはないが、じっとしている訳にもいかない。

 まずは水と食べる物を手に入れなければ。それと情報。


「多分、山脈を越える街道かトンネルがあると思うんだ。……いや、トンネルは無いかな……」


「ひよひよっ」


 大公国のある方角は分かる。南西か南南西。

 少しでも近付く為に、森の極々浅い場所を西寄りの南に歩きながら、水場と食料になりそうな物と、道を教えてくれる人間を探している。


「ひよっ」


 しばらく歩いていると何かを見付けたのか、華の肩にいた小鳥が森の奥に飛んで行ってしまった。


 そのうちに戻って来るだろうと華はそのまま歩き続け、ある時ふと、遠くに動物の群れを見付けた。

 一瞬魔獣かと思い木々に隠れながら進んで行くと、山羊のような動物の群れの向こうに砂色のテントのようなものが見えてきた。

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