ヘルドッグフレンズ
「支部長、戻りました」
弁当箱を玄斗に預け、支部に戻る蒼音ちゃん
「お帰り、蒼音ちゃん。あら?それは?」
手に持った袋を見つけた梓さんがそれは何かと尋ねてくる
「遊馬さんの所に弁当箱を預けて来た時に貰ってきました!クッキーです!皆で食べましょう!」
その提案を断る梓では無い
「良いわね!食べましょう。皆も呼んで来るわ」
支部所属の魔法少女4人と支部長で休憩スペースに集まり、クッキーを皿にのせてテーブルを囲む
「うめー!流石だなぁ」「美味しいわぁ」「クロトさん、凄いです」「女子力高すぎじゃない?」「遊馬さんの作ったクッキーがマズい訳が無いのです!」
5人が感想を言い合ってクッキーを食べながら大きな問題について話し合う。
「このクッキーも良いけど、やっぱ問題はこれだよなー?」
テーブルに置かれたクロガネから貰った魔石を指で突っ突きながらクッキーを頬張るデネブこと黄衣ちゃん
「本当に頭痛の種だわ……何よ第二の魔物って」
支部長である梓には礼奈経由で既にクロガネとの事を説明してある
「それにぃクロガネがぁ魔物の力で戦ってるなんてねぇ?」
今、問題となっているのはクロガネが伝えた情報。
「確かにクロガネが魔物をまるで使役していたり、融合?したり信じられない事を目の前でしたのでその魔石もきっと本当に新しい魔物の魔石なんでしょう」
今までありえないとされていた魔物との意思疎通をしていたクロガネがくれた魔石。それは本当にレーダーなどに映らない新しい魔物の魔石なのだろう
「でも、クロガネさんは敵対したい訳じゃないって言ってましたよ!」
礼奈の言う通りクロガネは敵対はしていない。ただ、クロガネの仲間の魔物に手を出した場合は敵対する可能性があるのだ
「いきなり情報が増えすぎなのよ!」
影を操り戦闘する。野良の子達と連携する。野良の子達に報酬?を与えている。これは前回来たクロガネの情報だ。更に今回来た情報は魔物と意思疎通が出来る。使役する、融合する。他の世界が少なくとも3つはありそうで内2つはこの世界の敵だと
「クロガネの情報はまるで爆弾みたいですね……」
礼奈ちゃんの言葉には皆、賛同するしかなかった。
「とりあえずこれは解析するしかないとして、クロガネは今まで通りでも問題ない……のかしら?」
問題は問題なのだがクロガネが敵対しないのであれば今まで通りの接し方で良いのか?と梓は悩む
「それについては問題無いと思います!」
蒼音ちゃんは自信を持って答える。なぜそんなに自信を持って言えるのだろうか?
「なんでそんなに自信があるの?」
「暴走とかする様な人は耳を触らせてはくれませんよ!」
「「「耳?」」」
現場に居なかった3人は何の事だか分からない
「クロガネが魔物と融合した時、頭に犬耳が生えてたんです。それを二人でわしゃわしゃ……」
現場に居た2人は存分に耳で楽しんだのでアレで怒らないクロガネが暴走するとは到底思えなかった
「あなた達……何してるの……」
頭を抱える梓、下手をしたらそこで敵対する可能性もあったのだ。危ない事をするんじゃないと叱りたい所だが……
「犬耳……触りたかったなー」「感触はどうだったのぉ?」
他の二人が行ってたとしても触ってただろうなと諦める梓
「でも、そんな事されてクロガネは怒らなかったの?」
「はい、数十分は触ってましたが怒った様子はありませんでした。別れ際に無茶はするなと言われたくらいですね」
「あなた達、それはクロガネが大人な対応をしてくれただけよ?感謝しなさい?」
普通ならキレてもおかしくない。それを許し、尚且つ二人を心配するクロガネには感謝の言葉しかない。
「でも、そういう話があるのならクロガネは信用しても良いわね」
どう聞いてもクロガネは良い人だと言うしかない。なら信頼して今まで通りで良いという判断を梓は下した
「なら私達は今まで通りで良いんですね!」
「ええ、新しい魔物も出てくるだろうけど皆頑張ってね」
「「「「はい!」」」」
皆の返事も大きく、元気な物だった
「さぁ、残ったクッキーも食べて皆も今日はもう家に帰りなさい?」
皿に残ったクッキーは4枚。魔法少女で分ければ丁度良い数だ
「では、半分どうぞ!」
蒼音ちゃんがクッキーを半分割って皿に置く
「「「私も」」」
残る3人もクッキーを割り、皿に置く
「皆……ありがとう」
「最近支部長、疲れ気味ですからしっかり休む時は休んでくださいね?」
疲れが顔に出ていた様で皆に心配をかけてしまっていた様だ。
「心配かけた様でゴメンね?クッキーありがとう後で食べるから皆も気を付けて帰りなさい」
「「「「では、さようなら」」」」
少女達が帰り、残された梓はスマホを取り出して画面に映された玄斗の画像を見ながらクッキーを食べる
「疲れた時は遊馬さん画像でリフレッシュに限るわね」
クロガネの案件で疲労を溜め、玄斗の画像でリフレッシュする。この二人が同一人物であると梓は知る由もない