野良猫再び
「うわっ!もう7時じゃん!行かなきゃ!」
熱中して野良猫同盟の二人と会う約束をすっぽかす所だった
「ぬ?あぁ、あの二人に会いに行くのか」
ヴァイスも分かった様で立ち上がる
「ん?どこか、行くの?」
シルエッタは野良猫同盟の二人との約束を知らないので何処に行くのか分かっていない
「あぁ、あの昼頃一緒に戦った二人組が居ただろ?あの二人組にご褒美をやるって約束があってね」
ご褒美って言ってもただ撫でるだけなんだが……
「私も、行く」
シルエッタも付いてくるのはありがたい。影移動の速さもそうだが、家に一人で置いていくのは可哀想だからね。
「よーし、じゃあ皆で行こうか」
「うむ!」「はーい」
二人と一緒に行く為、変身する
「変身」
家の中でクロガネに変身する。そして……
「武装解除」
はい、クロガネちゃんモードです。どうせ戦闘はしないし、撫でる事を考えればこっちの方が良い。
「シルエッタ、頼むよ」
(ほーい)
シルエッタに頼み、影に包まれる
(どっち?)
「あっちの方なんだけど……」
シルエッタに聞かれ、森の方を指を差してみるが……まずこの影の中で指を差しても分かるんだろうか?
(ん、分かった)
流石魔人さんやでぇ……こんなアバウトな指示でも分かった様だ
影状態となったクロガネが家から外へ飛び出し、建物の高低差など構わずに森へと一直線に進む。部屋に鍵を掛けても抜けて来たのはこれか。
二人が待っているであろう場所まで影状態で移動するとそこには長いベンチがあった
(ここで、良い?)
「うん、ここで良いよ。ありがとねー」
影状態から元の状態に戻ると何処からか野良猫同盟の二人が出て来た
「おぉ!クロガネ!やっと来てくれたか!」
「クロガネが来るまでにベンチ作っちゃったよ」
このやけに長いベンチは二人が作ったのか……
「遅れちゃってごめん。夜って時間が曖昧な事言っちゃったから悪かったなぁと思ってるんだけど。で、このベンチなんでこんなに長いの?」
「「それは!」」
二人は離れた位置に居たはずなのにシュバッと同時に跳び、ベンチの両サイドから中の方に頭を向け、寝そべる。
「「こうすると地面に寝そべらなくて良いからだ!」」
ベンチの真ん中に丁度クロガネちゃんの状態で座ると二人の頭が膝の上に来るくらいの長さにベンチが調整されている。そんなにあれが良かったのか
「分かった分かったその真ん中に座って頭を撫でれば良いんだろう?」
「「そうだ!」」
ベンチに横になったまま首を縦に振らないで欲しい。若干怖い
でも、二人との約束なのでベンチの真ん中に座る
「はい、どうぞ」
「ふわふわしている100点」「弾力が素晴らしい100点」
二人とも俺のふとももに頭を乗せて評価してきたけど……喜んで良いんだろうか?
「はい、今日はお疲れさん」
二人の頭を撫でる。本当にこうして撫でていると猫みたいだ。
「「あぁ~」」
気の抜けた声を出す二人。人目も無いし、注意はしなくても良いか。
「じゃあこうワシワシっと……」
ヘッドマッサージの様に頭を揉む。
「あぁ~控えめに言って最高」「エデン?パラダイス?とにかく天国」
語彙力を奪ってしまった様だが、まぁリラックスしている様だし良いか。
しばらく頭をなでなでワシワシしてちょっと会話でもしようと思った俺は二人が何故野良で活動しているのか聞いてみたくなった。
俺は自分の正体が知られたくないから野良で活動すると決めたが、二人は何故野良なのか
「ちょっと聞いても良いかな?」
「ん?なんだ?遂に我々の同盟に入りたいのか!」「なでなでエターナルコース!?」
どうして人の話を聞かないんだろう……
「違うよ、二人はどうして野良で活動してるのかなぁって」
「なるほど、その話か」「まぁクロガネなら良いんじゃないか?」
どうやら話を聞くことが出来そうだ
「私は、人と会話するのが苦手でな?」
明星は会話苦手なのか……って、ん?
「え?今俺とこうして会話出来ているのに?」
「クロガネは何故か話しやすいんだ。クロガネの事になると支部の魔法少女とも話せるんだ!」
うーん、やっぱ明星はコミュ障なのか?でも俺の事だと話せる……良く分からんな
「私は明星とずっと友達で明星が他の人と話すのが苦手だって知ってるからこそ、そんな明星を一人に出来る訳が無く、一緒に野良で活動しているんだ」
マーシャルは明星と友達で明星の為に一緒に野良で活動している……なるほどねぇ
「明星もマーシャルも大変そうだな」
俺も昔は人の話聞かずに死にたがってたからなぁ……
「クロガネは他人と会話出来る様になれとか言わないのか?」
「ん?そういう事言って欲しかった?」
ひょっとして明星の正体の方は親にそういう事を言われているのかな?
「い、いや、出来ればやめて欲しい……」
「会話出来るならその方が色々楽だけど無理するくらいなら一人……いや、マーシャルが居るから二人か。二人で落ち着くのも良い。まぁ今は魔物を倒したご褒美タイムだ。難しい事なんて考えれなくしてやる~」
良くない雰囲気になりそうだったのでこっちから空気を壊す為、二人の頭をワシワシする。
「「あぁ~」」
幸せそうな表情をしている。これで良いんだ