野良猫再び
ドアを開け、外に出る。
目的の家電量販店までだいたい歩いて10分くらいでたどり着けるので実はモールより家電量販店の方が近いのだ。
(しゅっぱーつ)
(いざ、出発!)
二人とも楽しそうだ。
俺も実は少し楽しみだ。家電量販店というのは店の中を見るだけでちょっとワクワクする。
「まぁただ炊飯器を買って帰るってのも味気ないし、色々見ていこうか」
コントローラーを買うのも有るし色々見てみよう。
(クロト、今日は、クレープ)
シルエッタの言葉でちょっと忘れていた約束を思い出す
「あぁそっかそういえば……シルエッタ、確か店の近くでクレープ屋があった筈だからそこで食べるのはどうだい?」
俺が作るってのも良いけどやっぱプロの人が作った方が美味しいだろう。
(むむっ、それは、聞き逃せない、情報、そこで食べたい)
「よし、決まりだ!買い物が終わったらクレープ屋に行こう」
(やった!)
(我も食べてみたいなぁ)
「じゃあヴァイスは俺と味覚共有で良いかな?何を食べるかヴァイスに任せるから」
シルエッタは見た目は普通なので出てきても大丈夫だが、ヴァイスが外に出て来たらちょっとマズいから味覚共有でなんとかしよう。コスプレですって言い訳も中々大変だし、隠せるなら隠した方が良い。
(おぉ!ありがとうだぞクロト!)
「じゃあさっさと買う物買っちゃいますか」
炊飯器は送ってもらえば良いか。コントローラーは肩から掛けているバッグにでも入れてしまえば良いや。
二人と会話しながらだと10分くらいあっという間に過ぎてしまい、目的の家電量販店にたどり着いた。
(おぉここが……)
(結構、大きい、所)
二人が店の大きさに驚いているが、ヴァイスはもっとデカいモールを見た事あるだろ……
「さて、炊飯器は何処かなぁ」
店の自動ドアをくぐると明るい店内に様々な家電が置いてある。案内の看板を見るに1階はスマホやカメラ、2階はテレビやパソコン関係、3階は白物家電とホビー、4階は時計とかビューティ家電
「3階だな、良いのあれば良いなぁ」
白物家電(冷蔵庫、洗濯機、炊飯器など)とホビーなら欲しい物が両方置いているな。階層移動しなくて良いから楽だわ。
場所は分かったからエスカレーターに乗り、3階まで上がる。
(何かワクワクするな!)
(そう?私は、クレープ、食べたい)
シルエッタは家電よりもクレープが気になって仕方ない様だ。まぁシルエッタはクレープが楽しみだった様だから、あまり寄り道しなくても良いか。
「えーと、炊飯器はあっちか」
エスカレーターで3階まで上がって、どの辺に置いてあるかをマップで見て炊飯器コーナーに向かう。
「んーとりあえず1升炊きの炊飯器だな」
「お客様、炊飯器をお探しですか?」
おっ丁度良い、こういうのは店員さんのオススメを聞くのが良いって奴だ。
「えーっと、1升炊きが出来る炊飯器を探してるんですけど……」
「1升炊きならこちらの商品がオススメですね」
店員さんがオススメしてくる炊飯器が2つ並んでいたので違いを聞いてみる。
「この2つってどう違うんです?」
「左の方はIH炊飯器で右のは圧力IH炊飯器です。価格はIHの方が安いですが、味は圧力IHの方が美味しいですね。」
ふむ、やはり毎日食べる物だし少し高くても圧力の方が良いかな?
値段を見ると左は2万で右は5万と倍近く違うが、うーんどうしようか。買えなくはないけど買い物は調子に乗って高いものをポンポン買うのは良くないと思うので悩む。
「もう少し安かったらなぁ……」
「お客様、ひょっとしてお使いですか?」
いや、炊飯器のお使いってなんだよ。そんなのは普通ありえないけどまぁ俺の子供みたいな見た目が悪いか
「そんな感じです……皆に美味しい物を食べさせたいけど予算オーバーなんでこっちにしようかなと」
んーやっぱ2万の方にしようか。
「なんて健気な……少々お待ちください」
ん?なんか店員さんがどこかに行ってしまった。
(クロトよ、結構悪いな?)
ヴァイスがそんな事を言ってくるが何が悪いんだ?
「お待たせしました!こちらの商品を半額に更に5000円引かせていただきます!」
戻ってきた店員がいきなりそんな事を言ってきた。5万の半額に5000円引き?……2万じゃん!?
「えぇ!?そんな事して大丈夫なんですか?」
見た所型落ちって訳でも無いからそんな割引して良いのか?
「私、家族思いのあなたに感銘を受けました!お客様の中には高いから割引しろ!と申してくる方も御座いますが、あなたは美味しい物を食べさせたい、でも予算が足りないと。そんな世の中の理不尽が私達の努力で何とか出来るなら何とかしてあげたいと思うのが人情という物です」
「え、えぇ……」
なるほど、ヴァイスが言っていた意味が分かった。
これ俺、完全に騙してるよね?