イミテーションの過去
急に俺を孫にすると言い、名前まで変えるという遊造の行動に驚くしか出来なかった。
「いったい何を言って……」
「死にたがりで失敗作のフェイルはさっき死んだ!今ここに居るのは世間知らずで俺の孫の遊馬玄斗だ!」
そう言われて自分を一人の人間として認めてくれた事が嬉しくてたまらないが……
「でも、俺は普通の人間じゃないんだよ?」
「だからどうした?普通じゃないって事は特別って事だ!俺にとってお前は、玄斗は特別な孫だ!」
そして遊造は玄斗を抱きしめる。
「玄斗には幸せになる権利が、いや義務がある!お前が今まで辛かった分幸せをくれてやる!」
その一言で涙が溢れた。
この世界で生きる意味も理由も無く、施設の中で実験される事しか知らずに生きてきたからこれ以上生きていても辛いだけだと思って死にたかった。でも実際は施設の外も知らず、人の優しさに触れず、アイスクリームすら知らない、世界の事など何も知らないで俺はこの世界に居る事は許されないとか殺してくれと言っていた。
「俺は……何も……知らなかった。人の優しさに触れた事なんて無かった!」
泣きながら溢れる感情を吐き出す。
「優しくされたかった!家族で出かけたりしたかった!でも……でも!」
「もういいんだ!我慢するな!お前は頑張ったんだ!」
遊造の腕の中で疲れるまで泣いた
「ありがとう、俺は生きる。遊造の孫になる!」
もう2人に囚われなくても良い。自由に生きて良いのなら俺は遊造の孫になって生きていく。
「俺を殺してくれって頼んで悪かった、俺を救ってくれてありがとう!」
「こっちこそあなたを救えて良かった」
魔法少女に感謝の言葉を伝え、遊造に向き直る。
「よし!じゃあもう一度聞くぞ。お前の名前はなんだ!」
もう俺は失敗作じゃない。今から俺は遊造の孫。
「俺は玄斗、遊馬玄斗だ!」
過去との決別の為、俺は失敗作の名前を捨てた
「こんな感じかな俺の過去は」
俺の過去をヴァイスとシルエッタに話してある意味すっきりした。
「ヴァイスには今まで隠して悪かったな」
「「……」」
あれ?二人ともどうした?もしかして俺が造られた存在って所で引かれたか?
「うっうぉおおおおおん」「ずびびぃ、ク゛ロ゛ト゛ォ゛」
二人とも大泣きして俺に抱き着いてきた。
「な、なんだ?どうした?」
「どうした?では無いわ!こんな……こんな過去がクロトにあったなんて……うぉおおおおん」
「ク゛ロ゛ト゛ォ゛可哀想だった、けどよ゛か゛っ゛た゛ぁ゛」
ヴァイスは涙脆いのは知ってたけどシルエッタは声がすごい事になってる
「とりあえず落ち着けって」
ヴァイスとシルエッタにティッシュを差し出す。
二人は鼻をかみ、一旦落ち着く。
「それで、孫になったクロトはどうなったのだ!?」
「知りたい」
俺の正体についてはどうでもいいみたいだ。悲しい様な嬉しい様な……まぁ良いか
「俺はじいちゃんの孫になって一緒に家で暮らす事になったんだ」
「ここが遊造の家?」
大きな屋敷に遊造と一緒にやって来た玄斗は驚きを隠せなかった。
「そうだぞ、今日からここで一緒に暮らすんだ」
俺の新しい居場所がここに……
「俺、この世界で生きていける様に頑張るよ」
俺を助けてくれた魔法少女の為にも、俺を連れ出してくれた遊造の為にも。
「おぅ!期待してるぜ?」
「まずは何をしたらいい?」
単刀直入に聞く。
「そうだ、試しに飯でも作ってみるか!」
料理という未知に挑戦してみろと遊造は言う。
「料理とかやった事がないけど良いの?」
産まれてから実験台くらいしかしていなかったので料理が出来るとは到底思えない。
「誰だって最初は初心者だ。上手くなるかはソイツの向上心次第だ」
確かにそうだ。その道のプロにだって初めてはあるんだ。俺だって初めての挑戦で造られたんだから
「よし、料理やる!やってやる!」
美味しい物を食べてみたい、作ってみたい。居場所があって、生きる指標があるだけでこうも自分が変わるとは研究施設に居たあの頃は思いもしなかった。
「先に言っておくが俺は料理が苦手だ。料理したらキッチンが爆発した。俺に教えてもらおうとは考えない方が良いぞ」
いきなり俺の初挑戦のハードルが上がった。




