イミテーションの過去
「あ、アイス?なにそれ?」
初めて見る物に困惑しながら手渡されたアイスと呼ばれた物を見る。
「蓋を剥がして中身を喰うんだよ。こんな感じでな」
そう言って遊造は大きな手で小さなスプーンを使い、アイスを食べる。
「くぅ~この冷たさが良いんだよ!嬢ちゃんの分もあるから喰え喰え!」
そう魔法少女にアイスを食べるように促す。
「で、では、いただきます」
用意していたアイスはクーラーボックスに入っており、結構な量がある様でその中から一つ取り出し魔法少女が食べ始める。
「美味しい!これ美味しいです!」
魔法少女が頻りに美味しいと言っている。いったいアイスとはどんな味がするのか気になってきた。
「一口、食べてみるか」
手渡されたスプーンを使い、アイスを一掬いして口に運ぶ。
「!?」
口の中に今まで感じたことが無い甘さが広がる。
「はむっはむっはむっ」
初めて美味しいと感じる物を食べた。口に運ぶスプーンが止まらない。
「おいおい、そんなに焦って喰うと……」
「くっ……頭痛い」
頭にキーンとする痛みが走る。
「ガッハッハ、アイスってな急いで喰うと頭が痛くなるんだ。確かソフトクリーム頭痛だったか?」
「アイスクリーム頭痛ですよ、うっ」
頭を押さえている魔法少女
「ガッハッハ嬢ちゃんもか!だから急いで喰うなって言ってるだろ?お~痛えぇ」
そう言いながら頭を抑える遊造。
「ふふっ」
その姿に自然と笑みがこぼれたフェイル。
「おっ?ようやく笑ったな?そうだ、笑え笑え!」
そう言われて少し恥ずかしくなる。
「今度は赤くなったな、なんだ結構表情豊かじゃないか!」
負の感情以外の表情が自然に出るなんて無かったフェイルは自分が何故こんなに表情が出るのか分からなかった。
「別に……アンタが俺を揶揄ってるだけじゃないか」
表情を隠そうと努めるが……
「悪いのか?お前は楽しそうだったが……俺は楽しかったぞ?」
「なっ」
「どうだ?外はもっと楽しいぞ?もっと美味い物もある!」
俺を外に連れ出すのが目的だったのか。なら俺は動かない
「俺には居場所なんて無いからここから動かない!」
「じゃあウチ来るか?」
「は?」
サラっと言われて拍子抜ける。
「ウチは妻に先立たれて、紀子も縁を切るとか言って出ちまって俺一人しか残ってねぇ。お前一人くらい家に来ても別に構わねぇよ?」
唐突な居場所の提供に混乱する。
「俺みたいな奴が居て良い場所なんて無い。あるとすれば実験台のベットの上だ」
「んー、じゃあよ?お前が外の世界に出る実験って事で俺に付いてこい!」
そう言って俺の手を引っ張り外へ向かう。大きな腕で掴まれて抵抗出来ないまま外に繋がる階段を上る。
「ほら、まずは一歩そこから出て外を見てみろよ」
手を離し、先に進んだ遊造は振り返って俺に一歩踏み出せと言ってくる。
研究施設の中にずっと居たフェイルは昼夜の感覚が無かったが、今はどうやら夜の様だ。
「うっ……」
思い返せば外に出たことが無かったフェイルにとって初めての外、怖いと思って一歩が踏み出せない。
「怖いなら私があなたを守ります」
そう言って後ろから魔法少女がやってきて手を掴んできた。
「もし死ぬなら外の風景を見てからでも良いですよね?」
確かにそうだ。どうせ自分じゃ死ねなくても外の景色を見た後で殺してもらえばいい。だったら……
「わかった、行く、行けば良いんだろ!」
ズンズンと遊造の元へ進んでいく。
「よし!よくやった!ほら、見てみろよ」
そう言って遊造は自分の後ろに広がる夜景をフェイルに見せた。
「うわぁ……」
眼下に広がる街灯の光が、連なる車のライトが、たくさんの店のネオンがすべて施設に籠って居たフェイルが初めて見る物ばかりだった。
「お前は産まれてからずっとここで生きて来た、外の世界も知らずに」
先程のガハハと笑っていた遊造は真剣な表情で俺に語り掛けて来た。
「この世界には何十億人も人が居るのにお前の事を知っているのはここに居る2人だけだ」
「そうです!私は遊造さん以外にあなたの事を誰にも言っていません。ここに居る2人以外あなたの事を知っている人はいません!」
俺の事を知っている人間は今、ここの2人しか居ない……
「俺らが言わなきゃお前、この世界に居ても居なくても一緒だぜ?なら別に生きていても良いんじゃねぇか?」
居ても居なくても同じなら居ても良いじゃないかと教えてくれる遊造。
「俺は……この世界に生きていても良いのか?失敗作なのに?」
「はぁ、マイナス思考だなぁ……分かった!お前名前は?」
「え?フェイル……」
「アイツら……名前までひでぇな……よし、フェイル!お前は今日死んだ!」
「は?」
急に殺された事になったフェイルは困惑した。
「今日からお前は俺の孫だ!」
「え?」
「そうだな、お前も苦労してるし、苦労……玄人?人生の玄人とか?玄斗?おっ良いじゃねぇか!よしお前は今日から遊馬玄斗!俺の孫だ!」




